成長

 神薙さんを駅にまで送った後、僕は一人で自分の高校から徒歩圏内にある神社にまで帰ってきていた。


「んっー」


 いつものように神社の掃除と神様へと捧げる舞を踊り終えてからが僕の自由時間である。


「ふんふんふーん」


 自由時間にやることと言えば未だ慣れないスマホを弄るか、自分のダンジョンに滞在するのかの二択である。

 ちなみに僕がスマホで出来るのは電源をつけたり消したり、待ち受けに設定されている神薙さんとの巫女ツーショットを眺めることだけなので、実質的に選択肢は一つに絞られてくる。


「やっほー、みんな。今日も来たよー」


 僕は今日も、いつものようにダンジョンへとやってきていた。


「~~~!!!」


「待つ、待つ、待つ!」


「すきぃ」


「きゅーいっ!」


 僕が入ると共に大量の魔物が出迎えてくれる。


「はいはーい、そこを退いてね。ひとまず僕は整理するから」


 自分の元に寄ってくる魔物たちを退けながら僕はディスプレイを表示させる。

 ほぼ毎日僕がダンジョンに通い詰めていることもあり、ダンジョンの発展は実に順調である。

 ダンジョンのレベルは既に20を突破。現在21レべルである。

 何もなかったこの場には拠点としてかなり大きめな屋敷が立ち、他にも噴水や花壇などと言った外観を彩るもの。

 粉砕機や織り機、水車に畑など。実用的なものもかなり増えている。

 

 そして、ダンジョンがレベルアップするにしたがってもらえるご褒美も様々だ。

 新しい種子や建築のレシピが追加されたり、未だに使い道のわからない魔晶石がもらえたりなど実に様々なである。

 

 その中でも特に目玉と言えるのが三つある。

 まず、一つ目が武器庫のように僕に付随した能力。

 これで得たスキルは『熾天之盾アイギス』である。僕がこの能力を発動すると、空中にどんな攻撃をも防ぐ盾を召喚できるのだ。

 イキシアの魔法で検証したところ、確実に初撃は耐えてくれるし、その後も結構耐えてくれる。だが、それでもずっと魔法を浴びせさせていたら壊れてしまった。

 再使用にもインターバルがあり、基本的にそのインターバルは一日だ。

 無敵ではないが、かなり強力なスキルと言えるだろう。


 二つ目は魔物の進化だ。

 実は僕のダンジョンの中にいる魔物にはレベルという項目があるのだ。

 そして、そのレベルは建築などでわずかに得ることのできる経験値を溜めることで上げることができ、最大にすると魔物を進化させられるようになるのだ。

 ちなみに進化までに必要になる経験値の量は完全に設定ミスであり、レベルを最大にさせられる気はまるでしない。

 ぶっちゃけ、可能性は一番あるけど遠すぎて死んでいる項目だ。


 そして最後に三つめは寝室の機能追加である。

 得られた幾つものご褒美の中で、最もこれが大きいだろう。

 魔物の数がどんどん増えていくにつれて、問題になるのが種馬となれるのが僕だけという事実。未だに女の魔物しか生まれてこないので、常に交尾の相手は僕になる。

 そのせいでお預けをくらって悶々とする魔物の数がとんでもないことになったのだが、その方法は寝室内部における時間経過の加速と僕の性豪化である。

 つまり、拠点の中にある寝室へと交尾のために魔物と共に侵入すると、その時点で寝室における時間経過が変化。寝室で一日中交尾してようやく現実世界での一秒になるのだ。

 そして、そんな世界でいくらでも出来るように種は無限、決してしなしなになることもない最強の男の象徴を僕は手に入れた。


 まぁ、三つ目をまとめるとダンジョンはこう言っているわけだ。

 時間を気にすることも、己の陰部の体力も気にすることなく、大量の魔物たちを満足させ続けろと。

 僕はいつも下の方では満ち足りた生活を送っている。


「そろそろもう一度ガチャが引けてもいいころ」


 ちなみここまで来ても、未だにガチャは出来ていない。

 イキシアを引いた一番最初の無料ガチャ以外で僕は未だにガチャを引けていない。もうそろそろガチャを引かせてくれてもいいと思う。


「さて、と……振り返りはここら辺にして今日もダンジョンを発展させようか」


 ダンジョンの醍醐味は魔物との交尾ではなく、この場の発展、建築にある。


「うーむぅ、何を作ろうかなぁ?」


 既に建築レシピもかなりの数になっている。

 何かを作るにしてもかなり悩みどころである……せっかく作るなら見た目もカッコいいのを作りたいよね。


「きゅーいっ!」


「うん。建築はちょっと待ってね?どう作るか悩んでいるところだから」


 当たり前のように自分の横を陣取っているイキシアと共に、僕はダンジョンでの建築を進めていくのだった。

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