政府要人

 逃げるように飛び出してきた学校からの帰り道。


「はぁ……」


 僕は一人、ため息を吐きながら神社の方に向かっていた……きっつい。ある程度は覚悟していたが、あれほどまでに質問攻めにされるとは思っていなかった。

 各授業の休み時間に、昼休憩。

 常に多くの人が僕の元へと集まり、放課後も取り囲まれてしまいそうだったので慌てて逃げながら帰路についているわけである。

 一応、すべての人は撒けたし、僕の家を知っている人はうちの学校に誰もいない。

 とりあえずは安心していいだろう。


「よっと」


 そんなことを考えながら、僕は長い長い山の中腹にあるうちの神社兼を自宅に至るまでの階段を登り終える。


「えっ?」


 そんな僕の視界に飛び込んできたのはスーツをバッチリと着こなしている男性二人、女性一人の三人組。

 その三人は神社の社の前に立って手を合わせている。

 

「さ、参拝客───っ!」


 間違いない、参拝客だ。


「あっ!皆さん、よくぞお越しくださいました!すみません、今。社務所の方を開けますので、御守りの方も是非、見に行ってください!」


 商機!常に貧乏で明日の飯も怪しい僕の飯の種を、手放すわけにはいかない!たかが五円、参拝の金だけで終わらせてなるものか!

 こちとら、金がないのだ!


「いえ、それはまたの機会にお願いします」


「……へ?」


 だが、そんな僕の言葉をあっさりと三人組の一人が否定してくる。


「い、いえ……せっかく、登ってきていただいたのですし、見るくらいであれば」


 それでも僕はここで引くわけにはいかない。


「本日における私どもは立派な神社の方ではなく、赤城蓮夜様にございます。本格的な参拝は後日にお願いしたく」


「……へ?自分ですか?」


 そんな覚悟を持って食ってかかった僕に対して、三人組の一人が告げた言葉は少々自分の予想外の者であった。

 僕を、訪ねてくる人なんているのかね?


「私はダンジョン探索庁長官を務めております高畑近衛と申します。本日は赤城蓮夜様にお話を伺いたく、部下共々本日はお邪魔させてもらいました。少し、お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

 

 そんなことを考えている僕に対して、目の前に立つ男は名刺を差し出してきながら自己紹介の言葉を口にする。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!?」


 そして、僕はその口から出てきた凄そうな言葉の羅列を前に驚愕の声を上げるのだった。


 ■■■■■


 神社から少し離れたところに建っているかなり年季の入った自宅。

 普段であれば僕しかいないこの場には、とある三人の客人が招かれていた。


「……っ」


 まず一人目は自分の前に座っている初老の男性。

 ダンジョン探索庁長官という大層な役職を持っている高畑近衛さん。


「あ、あの……お二人も座っていいんですよぉ?」


 そして、後はその後ろで立っている若い男女二人である。

 どちらもイケメンと美女であり、……何かムカつく感じである。特にイケメン。イケメンは焼却処分だ。


「いえ、自分はこのままで」


 そんなことを考えながら告げた僕の言葉はサクッとイケメンに却下される。


「そ、そうですか」


「それで赤城蓮夜様」


 そんな僕から注目を奪うかのように高畑近衛さんが口を開く。


「申し訳ありませんが、今回こちらの方へと来る際に赤城蓮夜様の個人情報を確認させてもらいました。それで、こちらの方が必要になっているのかと思いまして」


 両親が死去、祖父母も死去。

 実質的にただ一人で生きている僕の事情を知ってもらえたのだろう……そんな僕に同情してくれたのか、高畑近衛さんは高そうな食料品を差し出してくれる。


「これはこれはありがとうございます」


 僕は差し出された食糧をすぐさま回収し、二度と返せと言われないようにダンジョンの中へともう仕舞ってしまう。


「……っ」


 ちなみにダンジョンの中にいる魔物はこちらの世界の食べ物は食べられないので、みんなに食べられる心配はない。

 逆に、ダンジョン内で生成される食べ物は僕も食べられないのだけど。


「赤城蓮夜様はもう私どもがやってきた用件を察しておいででしょう」


「……は、はい」


 え?わかってないけど?

 僕は内心で困惑を隠しながらもつい、頷いてしまう。

 そんな僕のことは無視して高畑近衛さんは話を進めていく。


「昨日に行われた配信についての話です。配信内で行っていた陰からの武器の出し入れ並びに魔物の召喚。神薙玲香殿の魔力回復について、仔細をお聞かせ願いたくやってまいりました」


「……」


 え?僕の話ってば、政府の高官が出てくるレベルの話なの……?


「此度の話は世界を揺るがす大事であり、時と場合によっては世界の敵。人類の裏切り者として扱わなければならない事柄にございます。あまり、こちらとしても手荒な真似はしたくありません。私は共に日本で生きる同胞を信じております故……どうか、正確な情報提供をお願いします」


「あっ、はい」


 何か、僕の知らぬ間に凄まじく大きなことになっていそうな話題を前に。

 ダンジョン探索庁長官である高畑近衛さんの言葉に僕はこくこくと慌てて首を縦に振ることしか出来ないのだった。

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