生徒会長

 陰キャである僕たち三人が隅で震えている間、神薙さんは多くの生徒たちを前に堂々たる態度で会話を交わしていた。

 先程、僕たちのやっていた下手な弁明は何だったのか。

 神薙さんがどんどんみんなの疑問に答えていく。


「その前に聞きたいことがあるのだが」


 そんな中で、一人の生徒が前に出てくる。

 出てくるのは我が校の生徒会長であり、神薙さんと同様に探索者もやっている凄い人だ。

 僕はあまり知らないが、実家の方もなんかこう凄いらしい。

 まぁ、個人的には生徒会長がめちゃくちゃ美人な女性であるということにしか目が行かない。


「赤城くん、だっけ?」


 そんな人が口を開いて告げるのは僕の名前である。

 

「は、はぃ?」


 変な風に声が裏返ってしまったのは許して欲しい。


「キス、したら怪我を治せると言っていたが……それはどういうことだろうか?なかなか、見過ごせるような話ではないだが……説明をお願いしても?」


 そんな僕に触れることはなく、生徒会長は僕へと疑問の声を上げてくる。


「えっと、ですね?」


「うむ」


「正確に言うと、僕の能力は一日に一回だけ。自分の魔力がなくとも、己の怪我と魔力を治す能力なんです。本来は他人の怪我を治すものじゃないのです。ですが、裏技的な方法として、粘膜による接触を交わすことで自分と相手のパスを繋げ、一つとすることで他人にも回復を施すことができるのです」


「なるほど……粘膜による接触か」


 僕の言葉に生徒会長が頷く。


「で、あれば別のものでも可能だと?」


「まぁ、一応は、……ただその、キス以外で相手にも回復能力を与えようと場合は……何と言いますか。より問題になってしまう可能性もあるので」


 僕は生徒会長の言葉に仔細を濁しながら答えていく。


「なるほど。膣か肛門か。確かにもっとエゲツナイ方法であるな。いくら治療行為と言えどもまだお付き合いもしていない男女がそういう行為を行うのは流石に生徒会長としては中々に看過できない」


 そんな僕に対して。


「……ちょっ、はっ!?」

 

 生徒会長は一切濁すことなくストレートな物言いで仔細まで語っていく。


「ん?そういうことであろう」


「え、まぁ……確かに、そうですけどぉ。鼻や耳、目で深く繋がるのは中々に難しくてぇ」


 そんな僕に対して、生徒会長はどこ吹く風である……なんか釈然としないのだが。なんで僕だけがこんなに動揺しているのか。


「うむ。相手の鼻の穴に耳の中に自分の舌や陰茎を入れるわけのは逆にアブノーマルなプレイになってしまうからな。目は失明しそうであるし」


「だからさっきから何をっ!?」


 僕は見た目が綺麗な生徒会長の口から出てくるとんでも発言の数々に動揺の声を上げる。


「ん?そういうことであろう?」


「……そうなんだけどぉ」


 そうではあるけど、そうではない。


「あ、あの……生徒会長?」


 そんな生徒会長に見かねた神薙さんが会話に入ってきてくれる。


「どうした?」


「……私たちのあれについて、深く聞かれるのはちょっとだけ恥ずかしいのですけど」


「あぁ、それはすまなかった。それでも、今回の話はかなりのものなのだぞ?魔力すらも回復させるなど前代未聞!探索者の歴史が変わる!」


 あまり変わってほしくはない。

 おっさんとキスしろとか言われたらダンジョンに引きこもって二度と出てこなくなってしまうかもしれない。


「おーい!お前ら!」


 そんな会話をしていた中で、うちのクラスの担任が強引に割り込んでくる。


「そろそろ時間だ!気になるのもわかるが……後にしろ」


 そして、そのまま先生としての立場を使って強引にこの場を解散させるのだった。

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