ダンジョン探索
「別に僕だってダンジョンにくらい潜れるし!」
山田に鼻で笑われたことに対して、内心でムカムカとしていた僕は血気盛んにダンジョンの方へと潜りに来ていた。
ダンジョンに潜るにはその許可証となる探索者カードが必要なのだが、それは過去に従姉のお姉ちゃんと共に取っているので障害にはならない。
「……行くか」
許可証を取って、初めてダンジョンに潜って……勝手に従姉のお姉ちゃんがビビッて何もせずに一緒に帰ってきた己の過去。
その過去を考えると、実質的に今回が初めて足を踏み入れると言っても良いダンジョンへと僕は意を決して潜っていく。
「大丈夫、僕には強い武器もあるし、そもそもの身体能力もダンジョンレベルアップに伴って上がっているらしいし……普通の初心者よりは遥かに強い。いざとなったらイキシアたちを出せばいい。人海戦術だ。大量の魔物をぶつければ勝てるはず」
僕は自分自身を言い聞かせながらダンジョンの中を進んでいく。
ダンジョンの中は少し薄暗く、どことなくこちらに不安感を植え付けてくる。狭い石の床に、壁に天井。迷路状になっているこれがダンジョンとはいえいけない。
「ぎぎっ」
そんな中で。
「うっわ、ちゃんと化け物やんけ」
とうとう僕の前へと現れた最初の魔物。
それは見た目可愛いイキシアたちではなく本当にしっかりと醜い化け物と言える魔物、初心者御用達のゴブリンであった。
「……思ったよりも弱そうだな」
僕は自分の前に現れたゴブリンに対して率直な感想を漏らしながら、伸ばした影から刀を引き抜いて構える。
これでも、僕は色々な諸事情でそこそこ武器の扱いには長けている。
自分の前に立っているひ弱そうなゴブリンに負けるつもりはあまりしなかった。
「ぎゃぎゃっ!」
内心で舐めくさっていたゴブリンが僕の方へと棍棒を手に飛び掛かってきて。
「よっと」
そして、僕の慢心でもなんでもなく。
明確な力量差でもってゴブリンを一刀両断。
ゴブリンによって振り下ろされた棍棒を僕が回避してからのカウンター。棍棒を振り切って隙だらけなゴブリンの身体を僕の振るった刀は容易に斬り裂いて見せた。
「ぎゃぎゃっ」
バッサリと胴体を斬られてしまったゴブリンはそのまま地面へと倒れ、膨大な血を流しながらその命を終わらせる。
「おぉ、これが魔力が流れてくるという奴か」
僕はゴブリンの死体からこちらへと流れ込んでくるキラキラとした光を見ながら感嘆の声を上げる。
ダンジョン内で魔物を倒すと、倒した魔物から謎のパワー、魔力が流れ込んでいる仕組みになっている。
探索者は魔物を倒していくことで自分の魔力量を増やしていき、それで強くなっていくのである。
魔力は便利で身体強化から治癒、形状化して飛ばしてみたり、様々な使い方が便利な力である。
ちなみに魔力やスキルなどと言ったものは基本的にこの世界にはない。
なので、ほとんどの探索者は魔力を流しやすい己の拳か原始的な武器を使っての戦闘になる。
「……うん、魔物を殺すことにも特に忌避感はなし。これは何の問題もなく戦えそう」
そんなことを考えている間に僕の方へと魔力を流し終えたゴブリンがその身を光に変えて消えてしまう。
そんなゴブリンの様子を見ても、血を流して倒れるゴブリンを見ても、手に残るゴブリンを斬った感触も。
一切の不快感がないかと言えば嘘になるが、それでも問題ないレベルの忌避感だ。
「良し!このまま行けるところまで潜って山田を見返すぞーっ!」
ダンジョンが潜る上での障害は今のところなし。
僕は自分が行けるところまでダンジョンを進み、どんどんと下の階層へと進んでいくのだった。
■■■■■
そして、調子に乗ること数時間。
「ヤバい、来過ぎた」
僕は調子に乗って、かなり深い場所にまでやってきてしまっていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます