レベルアップ
思わぬ形で迎えた初めてに自分の子供と言えるであろう卵。
それに対して僕はひとまず自分の困惑を鎮めてやるべきことをやっていくことにした。
「これで……いいのか?」
まずやらなくてはならないのは魔物が産んだ卵をどうするのかという問題。
だが、その問題の解決は簡単であり、建築の欄に何の素材もなしに作れる卵孵化装置があるので、まずはそれを作っていけばいい。
ディスプレイを操作する僕は卵孵化装置の建築を開始させる。
「お、おぉ……?」
それを受け、建築予定地点へと向かった魔物が何処からか取り出したハンマーで何もない虚無を叩き始める。
すると、何もないところから急に物質が出現して徐々に卵孵化装置が完成し始める。
「どうなっているの?」
何もないところから急にモノ作りが始まって完成する。
そんな珍行為を前にする僕は困惑しながらも魔物から手渡された卵をもって出来上がった卵孵化装置の中へと入れていく。
「……なるほど」
僕が卵を装置の中に入れてその蓋を閉じれば、それが上手く機能していることがわかる。
そこに描かれているのは孵化までの時間である。
わざわざ装置の上空に孵化までの時間を書いてくれるのか、これは便利だ。
「実際のゲームが現実になったらこんなにも違和感なんだなぁ」
僕は自分がゲームの世界の住人になってしまったかのような錯覚を覚えながらディスプレイの方へと視線を戻す。
「これで卵は良し……建築も問題なくわかったことだし、このダンジョンレベルに従って進めていこうかな」
僕はディスプレイを操作し、まずはダンジョンレベルを1に上げるところからである。
「結構集まっているな」
魔物が木を殴って集めてきてくれた木材を使い、レベルを上げるのに必要だという拠点の建築を開始する。
「おぉ!」
そして、これまたさっきの卵孵化装置と同じ要領で魔物が拠点を作ってくれる。
魔物が作り上げてくれた拠点は簡素ながらもしっかりとした作りの小さめなログハウスである。
これがレベル1だと考えると、かなりしっかりとした拠点なのではないだろうか。
「おぉ……内装までちゃんとある」
木だけでどうやって作ったのか。
中には木を基調としながらも、その他の材料を使っているであろう内装が広がっている。
机に椅子にキッチン、暖炉。
かなり豪華な内装だ。
「……ベッドとか凄いな」
しかも、このログハウスにはリビング以外にもトイレと寝室がしっかりある。
寝室にはしっかりとした大きなベッドがでかでかと置かれている。
「この羽毛は何処から来たのかな?」
僕はくだらないことに触れながらベッドについてスルーする。
ちなみにトイレは現代基準の最新鋭のものであったが、そこの詳しいことは考えないことにした。
「よっと」
ということで一旦、ログハウスから出てきた僕はディスプレイの方に意識を戻す。
そして、ディスプレイを操作してダンジョンレベルを上昇させる。
「おぉ……」
すると、ディスプレイ上が輝くと共に褒美として魔晶石というものがもらえた。
だが、それが何なのかわからないよくわからない僕は何とも言えない声を上げることしか出来なかった。
「まぁ、でも進め方はわかったね」
魔晶石のことを一旦忘れた僕は次にレベルを上げるのに必要なものを確認する。
「レベルを2に上げるのには作業台と木の箱が必要になるのね……ふむふむ。って、あっ、これ石が必要なのか。それじゃあ、魔物には石を採取してくるように頼んでぇっと……」
魔物へと石の採取をお願いする僕はそのあとも、ゲーム感覚でダンジョンのレベル上げを進めていくのだった。
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