交配

「……交配、これは……これはこれは」


 僕はディスプレイに表示されている交配の画面を凝視しながら何とも言えない声を漏らす。


「ま、まぁ……まだ一体しかいないし、何の意味もないけど……そう、今後のためにね?別に僕が興味あるとかは全然ないんだけどぉ……ないんだけどぉ、ね?」


 誰に告げるでもなく、言い訳じみたこと口にしながら僕は交配の欄をタップする。


「……種子を選ぶ?」


 そして、ディスプレイに表示されたのは種子を選んでくださいという言葉。

 火種の種子、水滴の種子、木葉の種子、この三つがアンロックされた状態で並んでいる。


「……もしかして、今の状態でも、出来るの……か?」


 種子を選ぶ……何か、植物のようで嫌なのだが、これを選べば交配は、可能になるということだろうか?


「きゅーいっ!」


「う、うぉっ!?」


 そんなことを考えていたすぐ背後。

 木を採取してもらっていたはずの魔物がいつの間にか自分の背後に立っていたことへと僕は動揺の声を漏らす。


「……え、選ぶ?種子、どれは良い?交配、することになるかもだけど」


 僕の背後に立っている


「きゅーいっ!!!」


 それを受け、魔物は嬉々とした表情を浮かべるとその手を動かして火種の種子を指し示す。


「わかった。これね」


 僕は魔物の仕草に頷き、火種の種子を選んでそのまま交配を開始させることまで操作していく。


「きゅーいっ!!!」


 そして、僕が交配を開始させたところで魔物が一鳴きすると共にこちらへとその両腕を伸ばしてくる。


「……えっ?」


 僕の背丈はそこまで高い方ではなく、その代わりに、魔物の背丈はかなり高い。

 魔物が僕を持ち上げるなど実に容易なこと……簡単に持ち上げられた僕は自分の方へと向けられる魔物の強い感情が込められた視線を前にえも知れぬ恐怖心を抱く。

 そして、


「あっ、ちょっ……やめっ」


 ここに来て、ようやく気付く……今、己の前にいるのは魔物であるということを。

 あの、学校で幾度も人類の敵であると繰り返し教えられる危険かつ凶暴な魔物であるという───至極当たり前の事実を。


「……はっ?」


 恐怖で思わず固まってしまった僕に対して、魔物が行ったのは僕が履いているズボンをずり降ろして陰茎を露出させるということであった。


「蓮夜」


「……ッ!?」


 僕は魔物から自分の名前を実に滑らかで綺麗な声で名前を呼ばれた声に動揺の声を漏らす。


「は、話せるの……?」


 魔物に持ち上げられてズボンを降ろされ、下半身を露出されている僕はもう訳も分からずこれまで『きゅーいっ!』としか言ってこなかった魔物が喋られたという事実にただ驚くばかりであった。


「蓮夜、蓮夜、蓮夜ぁぁぁ」


 そして、魔物はそんな僕の名前を連呼しながら地面へと寝っ転がり、その大きな体へと僕を乗せる。

 そのまま魔物はそっと僕の下半身の大事なところへとその手を伸ばし始める。


「……え?まさか、交配相手って僕なの?」


 そんな中で、僕は呆然と言葉を漏らすのだった。


 ■■■■■


 空の上で光り輝くお天道様の下。


「……卒業しちゃった」


 僕は魔物と初めての交配を終わらせていた。


「うぅ……というか、これは卒業なのか?僕はもう童貞じゃなくなったのか?」

 

 実際の女性の感触など、童貞には知らないことである。

 だが、魔物の身体にしっかりとあった穴へといれた僕のあそこはしっかりと気持ちよくなって果てることが出来た。

 これを卒業と捉えるか、捉えないか……それが僕の頭を悩ませていた。


「うぅ……」


 賢者タイムに突入している僕は自分の現状を前に謎の自己嫌悪に陥ってしまっていた。


「……きゅーい」


 そんな風に地面へと倒れている僕の下には先ほどまで童貞の相手をしてくれていた魔物の姿がある。


「んっ、ちゅ……んっ、あっ」


 その白い肌を真っ赤に染め、未だ発情した様子の相貌を見せている魔物は僕と視線が合うと共に。

 魔物は僕の口へと、その先ほどまでは毛で隠されていた己の口を重ね合わせてそのまま舌までねじ込んでくる。


「……んぱっ」


「……はぁ、はぁ、はぁ」


 どれだけ交わしていただろうか?

 長く、情熱的なキスを交わした後に魔物は満足したのか口を話してくれる。


 だが、それでも火照った魔物の表情は沈静化していない。

 魔物は僕の口から伸びる唾液の糸を切るかのように長い舌で自分の口元をペロリと一蹴する。

 このまま二回戦にまで突入するのか。


「きゅーいっ!」


 そう思った僕を他所に魔物は恭しく自分の上から退けると共に、自分のお腹をさすりながらしゃがみ込む。


「……えっ?」


 僕と魔物が先ほどまでしていたのは交配である……決して、性の快楽を貪ることではない。

 もしかして……この、ままぁ……。


「きゅーいっ」


「ははっ!?」


 思わず呆然と魔物のことをまじまじと眺めていた僕のことを魔物は半ば乱暴にその腕を使って目隠しさせてくる。


「……きゅーいっ!」


 そして、そんな僕の視界を遮っていた魔物の腕から解放されたときには。

 魔物の腕の中にはかなりの大きさの卵が抱え込まれていた。


「……う、産まれた。ぼ、僕の子供……ということで、良いの……か?」


 僕はそんな魔物が産んだ卵を前になんと反応すればわからず、ただただ呆然と言葉を漏らすことしか出来なかった。





 ■■■■■


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