ダンジョン

「……なるほど?」


 僕が自分の耳元に響いてくる声に従って玉へと手を触れたところから始まったチュートリアル。

 というより、ただの説明動画を見終えた僕はひとまず頷く。

 内容をたった一言にまとめると、貴方はこれからダンジョンマスターとして、ダンジョンを発展させていってくださいって、言うことになるだろう。

 いや、別に僕はダンジョンマスターになった記憶はないけどね?


「えっとぉ?」


 僕は目の前に浮いている玉から表示されているディスプレイを一度だけ見たチュートリアルを思い出しながら操作していく。

 ディスプレイに表示されている項目は全部で七つ。

 ダンジョンレベル、持ち物、建築、資材、魔物、交配、ガチャと言った感じ。


「マジでゲームみたいだな」


 触れた感じとしては本当にゲームみたいという一言で終わる。

 僕のやることとしては、今いる広場の周りにある木や石などの資材を集め、それを元に様々なものを建築し、ダンジョン内を豪華にしていく感じだ。

 ダンジョン内を豪華にさせていく過程としてはダンジョンレベルを上げるのに必要な施設を指示通り、順番に作っていけば最低限のものにはなるそうだ。

 

 その際、魔物と協力することが可能であり、魔物の獲得方法はガチャで引くか、交配で増やすかの二択なんだそう。

 ボールを使って捕まえていくわけではないらしい。


「なんか、僕はこのままこのダンジョン内を旅させられそう」


 今のところ、色々とパクリの問題で色々と物議を呼んでいるオープンワールドサバイバルクラフトゲームに似ている。

 そんなことを考えながら僕はディスプレイを操作して自分の現状を確認していく。


「とりあえず初期資材は何もなし。保有している魔物もなし、ダンジョンレベルはゼロ。施設も何もなし、あるのは謎の玉……もうちょっとサービスしてくれても良くない?」


 何も、異世界転生したラノベの主人公並みのチート能力までは求めないけど……せめて、せめて斧くらいは欲しい。

 斧くらいないと木材の採取なんてとてもとても……いや、冷静に考えてみれば斧があったところで木なんて切り倒せるわけがないわ。木材の採取なんてどう考えても無理ゲーだろう。

 それにそもそもとして木や石があるくらいで何かを僕が作れるわけがない……こちとら、小学生の頃の図工も、中学生の頃の技術もずっと2だったんだぞ?


「木を殴れば勝手に木材が増えて、建築しようと思ったら勝手に出来上がってくれるか?ゲームの都合みたいな感じに」


 そうでもなきゃ詰んでしまうのだが……。


「って、まだガチャの画面を見ていなかった。僕の希望はここだけだ……」

 

 ゲーマーとしてはガチャこそが至高。

 デザートは最後にとっておくタイプである僕は逸る気持ちを抑えながらガチャをタップする。


「頼む……っ!無料であれっ!」


 ここで有料だったら詰む。

 僕は明日のおにぎり代すらも心もとないのだ……っ!


「きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 僕はディスプレイに表示されている初回ガチャ無料という文言を見て勢いよくガッツポーズを取る。


「しかも、ガチャはグレーターランク以上が確定!これは、これはあまりにも熱い!……いや、グレーターって何よ」


 僕は全然聞きなれない言葉に困惑しながらガチャの画面を操作して、このグレーターが何を示しているのかを探していく。


「ふむふむ」


 どうやら、魔物にもレアリティ、強さランクというものが存在するらしい。

 下から順番にレッサー、ノーマル、ハイ、グレーター、アーク、ロード、エルダー、エンシェントという順番に八種類。

 そして、それとは別枠で特別扱いされているユニークというランクもあり、結局全部で九種類のランクがあるようだ。


「来いっ!エンシェントかユニークっ!」

 

 ガチャの画面に排出確率は書かれていなかった。

 僕は闇鍋の可能性もあるガチャに高レアリティがが出るように祈りを込めながらディスプレイを操作してガチャを引くのだった。

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