ロベルト
チャーリーの次に出会ったロベルトは、
そういう姿態とか見た目だけでは相手のことを判断しないのが、
ことさら相手の立場や思考を尊重するのも、われら自由犬の
「歩きずらそうだね」
ついつい吾輩は声をかけてしまったあとで、余計なことを言ってしまったと悔やんだ。
けれどロベルトは、
「うん、ありがと」
と、笑いながら近づいてきた。
「いつも無視されてばかりだから、そうやって気にかけてくれる
「そ、そう。不快におもわれずに、こちらこそ、ちょっと、ホッとしたよ。……でも、さっきから、ぐるりぐるりと同じところを歩き回っていたようだけど、捜し物だったら手伝ってあげるよ」
「ありがと。ほら、脚の代わりになる枝木が落ちていないか……ってね」
「落ち枝を? そんなのが脚の代わりになるのかい?」
「うん、ぼく、人間のゴミ置き場で産まれ育ったから、まだ使えるユニークグッズがそれこそ山のようにいっぱいあってね、特殊な接着剤で枝木をそれぞれの脚に固定すれば動きやすいんだ」
「ひゃ、そうなんだ」
「でも、定期的に付け替えなくっちゃいけないんだけどね」
どうやらロベルトは、人間たちが捨てたものを有効活用し、仲間たちに餌やきれいな飲水と交換したりしていのちをつないできたらしかった。そういう自分に足りないところをせっせと補って、アイデアを活かすタイプもいることを知って、吾輩は驚かされた。
同時に勇気づけられもした。
「なにか欲しいものがあれば言ってよ」
親切にもロベルトはそう言ってくれたものの、吾輩には交換できるものはなにもなかった。
「君の右の耳がないのは……?」
ロベルトは不思議そうに吾輩の耳元に視線を注ぐと、
「あ、そうだ、ウサギのぬいぐるみがあったはずだ。からだはボロボロだけど、まだ耳はキレかったはずだから」
と、やや
しばらくすると、ガサガサと現れて、
「ひゃ! ありがと……でも、お返しするものがなくて」
「そうだね。できれば、君の脚、一つくれないかなあ。あ、しばらく貸してくれるだけでもいいんだ。たまには本物の脚で歩いてみたいし」
「短い間だけなら、いいけど」
ついそんなことを口にしてしまった吾輩は、
(あ、やばい)
と言い直そうと思った次の瞬間には、ロベルトは口にくわえたナイフで器用に吾輩の脚を切り取ってしまったのだ。
そして、自分の脚に取り付けると、
「ひゃあ、やっぱり本物は凄いや、嬉しいなあ」
と、はしゃぎながらそのまま草叢の中へ消えていった。
戻ってくるのをいまかいまかと待っていた吾輩は、結局、脚を取り戻すことはできなかった……。
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