第5話 信じられない速さで天使な息子は侯爵に叙せられました
私の悲鳴を聞いて、待機していたアリス他の従業員たちに私は顛末を話したのだ。
怒った従業員たちによって直ちに義弟は客室に軟禁された。
その翌朝、義弟の妻が泣いて許しを請うてきたので仕方無しに釈放してやったのだ。
しかし、義弟の目は怒りに震えていた。
「宜しかったのですか。解き放って」
「良いのよ。泳がせておけば。いざとなったら一網打尽にしてやるから」
私は平然と言い切ったのだ。
まあ、最悪はエドたちに指示すれば良いだろう。
私はお昼を食べて息子におっぱいをやっている時だ。
「奥様。た、大変でございます」
マイヤーが飛んできたのだ。
「どうしたの?」
私が聞くと
「王宮からの御使者でございます」
息せき切ってきたからかマイヤーが話してくれるまで少し時間がかかった。
「まあ、えらく早いのね」
「奥様にあんな手紙をもらったら王太子殿下等も慌てられたのではないですか」
アリスがそう言ってくれたんだけど。
応接に行くと何故か叔父と義弟夫妻も揃っていた。
二人とも家に帰っていたはずなのに、こういう時にはすぐ来るんだ。私はその情報収集力に驚いた。というか、我が家の情報がダダ漏れなんだけど……
まあ、わざわざ知らせる必要が無くなったから良いけれど。
使者は私の幼馴染のカーティスだった。王太子のエドはさすがに来なかったらしい。まあ、王太子が普通は使者なんかやらないけれど、私の以来なのに……私は少しムッとした。
「これはこれは王宮の御使者様。今日はどのようなご要件ですかな」
「貴殿は?」
「これは失礼いたしました。シャルルの叔父でございます」
「さようか、シャルル殿はどちらに」
「はい?」
「だから、シャルル殿だ」
「シャルルは先日亡くなりましたが」
叔父はカーティスの問いに困惑したみたいだ。
「何を言っている。その亡くなった侯爵殿のお子様のシャルル殿だ」
「えっ? ご使者殿はあんな乳飲み子に御用がおありで」
驚いて叔父が聞いた。
「こちらにいらっしゃいますよ」
私はシャルルを抱いて現れた。
私を見た瞬間カーティスは嫌そうな顔をしたが、自分の用を思い出したみたいだった。
「では、皆様宜しいですか」
カーティスは一同を見渡した。
「一同お控えなされ」
カーティスの合図で、全員跪いた。
「うっうっ」
何故かシャルルはカーティスに手を伸ばそうとするんだけど、
「あんなばっちいもの触ってはいけませんよ」
私はシャルルに注意した。
カーティスが舌打ちしたのが聞こえたが私が睨みつけると慌てて巻物を広げた。
「シャルル・オルレアン、貴公をオルレアン侯爵に叙す。また、シャルルは幼少の砌、成人するまではその母ジャンヌをその代行とする」
「そんな」
「信じられん」
叔父夫婦と義弟夫婦が唖然としていた。
「ご使者殿、これは何かの間違いではござらんか?」
「さようでございます。このような乳飲み子に爵位を与えるなど」
四人が使者に詰め寄るが
「控えおろう! この紋所が目に入らぬか!」
カーティスが玉璽が押された所を指差したのだ。
「ははあ!」
四人は頭を下げるしかなかった。
「シャルル殿にこれを」
そう言うとカーティスは書類を私の方に差し出した。
「バブ」
私の腕の中の天使なシャルルはあっさりとカーティスからその書類を取り上げたのだ。
なんかとてもご満悦な様子だった。さすが未来の侯爵様は違う。
私は親ばか全開で皆に自慢したい気分だった。
「なお、ジャンヌは子育てが忙しいと思う故、子供が成人するまでは王宮に参上するに及ばずと陛下が思し召しでした」
カーティスが言ってくれたんだけど、王太子が画策したに違いない。絶対に私に会いたくないからそんな事を言ってくれたのだ。
「そういうわけにも参りません。早速にお礼に参上しなければ」
私が冗談で言ってあげたら、
「いや、絶対に来るなとのことだ」
必死にカーティスが言ってくれるんだけど、これは絶対に近いうちに行かねばなるまいと私は心に決めたのだ。
そんなご満悦の私の横で叔父たちは怒りに震えていたのだった。
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今日中に完結します。
よろしくお願いします。
また、『聖女として召喚されたのに王宮を追放されて我儘貴公子の奴隷にされました。でも、いつの間にか溺愛されるシンデレラ物語』
https://kakuyomu.jp/works/16817330669105446128
鋭意更新中です。こちらも宜しくお願いします。
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