第4話王太子視点
俺はこの国の王太子だ。
父王に次いで偉いのだ。
そして、俺の朝は一杯の優雅なコーヒーで始まるはずだった……
「殿下、大変です!」
「何だ、朝から騒々しいな」
私は優雅に側近のカーティスが持ってきた手紙を見て、いれなかった。
「な、何だこれは!」
俺は悲鳴をあげた。
そこには『可及的速やかに我が天使な息子を跡継ぎに任命するように ジャンヌ』
と見慣れた文字で書かれていたのだ。
「先程、ブライアンが持参してきました」
「ブライアン、どういう事だ!」
「どういうことと言われましても私は殿下に渡してほしいと姉に頼まれただけで」
すっとぼけた対応をブライアンがしてくれたが、
「はああああ! オルレアン侯爵家を0歳の乳児に継がすことなんて出来るわけ無いだろう」
「その旨を姉に申しても宜しいので」
「……」
ブライアンにそう言われると俺は黙るしか無かった。
ジャンヌとは幼馴染だ。連れてこなくてもいいのに、父のウェリントン将軍が連れてきて、俺達はよく一緒に遊ばされたのだ。
チャンバラごっこや、王宮探検は可愛いもので、盗賊退治は序の口で、ダンジョン探検や、竜の巣の探検、ゴブリン討伐など散々な目に付き合わされたのだ。
ジャンヌはどこでも無敵だから言うことはなかったが、付き合わされた俺達はたまったものではなかった。最後はジャンヌが助けてくれるのだが、死にかけたことなど片手では到底足りなかった。
そんなジャンヌが何をトチ狂ったのか学園に入った途端に生徒会長で侯爵令息のシャルルに恋したのだ。俺には信じられなかった。あのジャンヌが恋したことも、あのジャンヌに惚れた奴がいることも!
「皆行くわよ。遅れたら罰ゲームだからね」
と裸踊りを罰ゲームにしてダンジョンに突撃させていたあのジャンヌが、真っ赤に顔を染めていたのだ。
からかった俺達は半殺しの目にあったが……
しかし、シャルルの前ではしおらしい乙女を演じていた。
いつかボロが出ると俺達は踏んでいたのだが、シャルルがいる間はしおらしかった。
シャルルが卒業すると元にも戻つたが、なんと卒業と同時にシャルルと結婚したのだ。
そして、俺達の前から消えてくれた。
俺達が祝杯を上げたのは言うまでもない。
ジャンヌを娶ってくれたシャルルは俺達には愛情深い神父様に見えた。
そう、ジャンヌがいない間は本当に平和だったのだ。
「いかが致しますか?」
カーティスが聞いてきたが、
「そんなの認めるしか無いだろう」
俺は判りきったことを聞くなと言いたかった。
「しかし、後見人がジャンヌになっていますが」
「嫌だが仕方ないだろう。もし、これを握りつぶしてみろ。あいつはシャルルジュニアを背負って王宮に乗り込んでくるぞ」
「げっ」
カーティスは青くなっていた。
「可及的速やかに大臣たちを脅して書類を作り上げろ」
「大臣たちが認めますか」
「認めないと言う奴は使者として侯爵邸に派遣すると伝えろ。嫌でも死にもの狂いで書類を作るだろう」
俺の言葉にカーティスは頷いた。
それにしても誰だ。シャルルを殺したやつは!
見つけ次第絞首刑は確実だ。最もそれまで生きていられる可能性は少なかったが……
俺は俺の安らかな日を返せと言いたかった。
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