第34話 万事解決ですわね
フレースヴェルグは
エイルの肩に乗った烏は、
「収まるところに収まりましたわね」
ネーヴェをはじめ女性陣は喜んでいたが、成り行きを見守っていたシエロや皇子ガリアをはじめとする男性陣は、何故か恐れおののいた顔になっている。
「ところで、シエロ様も、動物に変身できるんですの?」
天使様が動物に変身できる能力があることは、エイルとフレースヴェルグの会話の中で知ったことだ。
ネーヴェが聞くと、シエロはぎょっとしたように後ずさりした。
「……やらないからな」
冗談なのに、シエロは自分も動物に変身させられるのではないかと怯えているようだ。
「ヴェルナの街に凱旋しよう」
仕切り直すよう帝国の皇子ガリアが宣言し、ネーヴェたちは奪還したヴェルナの街に行って後始末をすることになった。
取り戻した街は荒れ果てていた。
重傷者の救護に、休める場所の確保、街の人々がどれだけ生き残っているかの調査……やらなければならないことは、山のようにある。
皇子のもとに報告に集まった兵士たちを見回し、ネーヴェは生死不明になっていたフォレスタの元王子エミリオの姿を見つけた。
「ご無事で何よりですわ」
「は?! お前、じょ、」
女王が何故ここにいる?! とエミリオが叫ぶ前に、周囲が彼の口をふさいだ。
フォレスタ関係者だけ、別室に移動する。
「フォレスタ公、遠征お疲れ様でした。あなたは、ヴェルナ奪還作戦の功労者として勲章を与えられるでしょう」
ネーヴェはにこやかに言う。
「私が帝国にいることは秘密ですから、すべてフォレスタ公の手柄になりますわ」
女王も天使もフォレスタを離れていたことは、公にできない。
だからこそ、すべてエミリオの手柄ということにする。そうすれば、エミリオをはじめとする王族の名誉は取り戻され、ネーヴェの後釜の話も出てくるはずだ。
目指すは、田舎でゆうゆう
「……前から、考えていることが分からない、変な女だと思っていたが、やっぱり分からないな」
エミリオは眉間にしわを寄せて呟く。
「まあいい。私は帰国する。女王と天使も、さっさと外遊を切り上げて帰国してくれ」
用は済んだと、エミリオは部下を引き連れて去っていった。
まだ
ネーヴェたちの介入は、ここで終わりだ。
帝国に来た目的のうち、石鹸作りの材料探しは終わっている。残るは、シエロの目指している太陽神の遺産探しだった。
太陽神の遺産は、天翼教会の本部がある神海から昇った天空にあるという。
「エイル様は、神海から来られたのですよね? 間に合うとは思いませんでした」
戦場は内陸で、神海は遠い。
どうやって来たのかとエイルに問う。
「私は、飛んでまいりました。フレースヴェルグ様に、翼をいただいておりましたので」
エイルは穏やかに答える。
彼女は、魔物に堕ちたフレースヴェルグと魂を共有し、人でないものになっているらしい。
しかし、ネーヴェたち人間は、神海まで飛んでいく訳にはいかない。
「とりあえず、港まで行って、船を探しましょう」
神海に帰るというエイルも伴い、ネーヴェたちは神海を目指し、旅をすることになった。
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