第27話 急襲
大聖堂の入り口では、何やら工事をやっていた。
職人と思われる男たちが、曲がりくねった木材を手に、正門の周囲で働いている。
「何をしているのですか?」
ネーヴェは気になって足を止め、聞いてみた。
すると、職人の一人が回答する。
「空を支える樹木を、天使様の翼のように表現し、大聖堂の門を天への入り口にするんです!」
何やら芸術をやっているらしい。
作業に夢中な職人たちは、ネーヴェが女王だと認識できていないようだ。ネーヴェは「頑張って下さい」と彼らに声援を送り、護衛を連れて大聖堂に入った。
すぐに、シエロが出迎えに現れる。
「表の工事か。あれは、例の葡萄の木材を使って何かできないか、相談したら芸術家の職人どもが正門を改造したいと言い出してな」
挨拶代わりに正門の工事について聞くと、そのような返事がかえってきた。
「なるほど……」
確かに、立派な葡萄の木なので、木材として活用したいと考えるのは自然だ。
ネーヴェが納得していると、シエロに付き従う聖堂付司祭のトマスが護衛の近衛騎士団長パウロに話しかけた。
「パウロ様、向こうで茶でもいかがですかな? 聖下は陛下と積もる話があるようでして」
「ああ……そうですね。気がきかず申し訳ありません」
大聖堂の敷地内なら、二人きりにしても問題ないだろうと考えたらしい。パウロは、トマスの誘いを受けて、別の場所へ去っていっく。
ネーヴェは、聖堂裏手にあるシエロの屋敷に招待された。
以前に来た時に、徹底的に掃除したからか、シエロの屋敷は清潔な状態を保っている。
しかし、居間の机の上に、ポンと置かれている物を見て、ネーヴェは眉をしかめた。
「シエロ様、あの剣は」
「元フェラーラ侯の倉庫から出てきたものだ。俺が預かることになって、どうしたものか悩んでいる。またフェラーラ侯に渡すのも、今さらだしな……」
鞘に入った長剣が、文机の上に無造作に置いてあった。
そういえば、シエロは剣が使えるらしい。
ネーヴェはシエロが戦っているところを見たことがない。魔物の虫の群れを雷で一瞬で焼き尽くす場面は見たことがあるが。
「使わないんですの?」
「使うシーンが無いだろう」
もったいない。だが、天使様の言う通り、平和が一番だ。
ネーヴェは置物と化した剣を哀れに思ったが、自分が使う訳でもないので、さっさと視線を外し、シエロと一緒に外に出た。
「新しく植えた葡萄の木だが」
シエロが案内しかけたところで、空からキラリと光るものが見えた。
「え?」
何気なく見上げたネーヴェの目に、真っ白な翼を広げた女性の天使の姿が映る。
「勝負だ、フォレスタの天使!!」
その天使は、抜き身の剣を手に、空からシエロに切りかかった。
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