34.ほっとした。

 あのときの先輩も、そう。

「あのチェーン店の女の子にびびっときたんや」

 外勤から事務所に帰ってきた先輩は、なんだか少しだけ違っていた。

「なんかねぇ、お昼に入った店でびびっときた子がいたんやって」とにやにやする職員さんに、「ほう」と私は目を丸くした。

 それからというも先輩は、その子にもう一度会って連絡先を聞くために自分磨きをしだした。どうやら「やっぱり気になる子がいたらぜんぜん違う。食べる量も、今までならもう一杯とかあったんやけど、控えようってなる」ということらしい。

 ご機嫌な先輩が、その後その女の子に会いにいった結果は、言わなくてもわかるかもしれない。


「惨敗。

 ここで再現しようか?」


 非常勤職員さんが、先輩の真似をして女の子に聞き、「『彼氏います』って言われたんやって」とにやにやしていた。


 正直、ほっとした。


 

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