第61話 引っ越し完了
『お、来たな』
『いつものゲリラ配信』
『まだ生きてる?』
『あれ? 場所違うくない?』
『どこだ、ここ』
『でも小屋あるぞ』
『移動した? 引っ越し?』
「その通り」
旧拠点を誰もが使える休憩所として残し、仮だった拠点への引っ越しは無事に完了した。
本当なら大変な荷物を抱えながら何往復もしなければならないけど、異空間の魔法があればそれも一回で済む。出し入れに労力もいらないし、運送業泣かせの魔法だ。
「ここは群島エリア。空に浮かぶ島の上だ」
『空に浮かぶ!?』
「ほら、見てみな」
撮影ドローンを島の端まで誘導する。
『うお、すげー、まじで空の上じゃん』
『空に浮かぶ島とかロマンあるな』
『高所恐怖症には地獄のエリア』
『おっこちたらどうすんだ』
「そのための柵がそこにあるじゃろ。苦労したんだぞ、これ設置するの」
『そんな苦労してまでなんで群島エリアに……』
「色々と利点があるんだよ。色んな島があるんだよ、森だったり、海だったり、湖だったり」
「あ、ハジメさんハジメさん。水着、忘れないでくださいねー」
『水着!?』
『その話詳しく!』
『ハジメちゃん、俺たちに隠れてそんなことを』
『一人で楽しむつもりだったのか!』
『ハジメちゃん、見損なったぞ』
「伊那。それを言うとお披露目しなくちゃならくなるぞ」
「えー? 私は別に構いませんけど。スタイルには自信があるので!」
『おお!』
「私は絶対に嫌」
『おおう……』
「てなわけで、水着のお披露目はなしだ」
しかし、水着か。サイズ問題はおいて置くとして、問題は色だ。
現状、水着に使えそうなのはバロメッツから取れた金色の糸だけ。
金色の水着って言うのも、なんというか悪趣味って感じがする。
別に誰に見せるでもないにしろ。まぁ、追々なにか方法を考えればいいか。
「さぁ、島を巡ろう。橋を架けたんだ、俺の努力の結晶を見ろ」
『楽しみ』
『さぞ立派な橋だろうな』
『水着ワンチャンない?』
「ありません」
撮影ドローンを引き連れて、群島エリアの紹介に移る。
今行ける範囲で探索済みの島のみを回り、群島エリアの利点を説明していく。
実際、落下対策をきちんとしていればここは便利なエリアだ。
行動範囲に温厚な魔物しかいないし、食糧にも困らない。落下の危険に目を瞑れば。
『でも憧れるよな、空の島。住みたくはないけど』
『わかる。一回くらい行ってみてもいい。住みたくはないけど』
『空が飛べたらなぁ。住みたくはないけど』
「お前らなぁ」
まぁ、いいや。いつものことだし。
「それで、だ。今回の配信は群島エリアのお披露目だけじゃないぞ」
これは今朝、二人と話し合って決めたことだ。
「俺たちはこれからペガサスを倒しにいく」
『ペガサスか』
『天馬』
『ケルピーに続いて馬系二体目』
『なんでペガサス?』
『翼が欲しいとか? ここ落ちたら一溜まりもないし』
『それならグリフォンで事足りるんじゃね?』
「みんな気になるだろうけど、そいつはペガサスを倒してからだ。二人とも準備は?」
「オッケー!」
「大丈夫です。問題ありません」
「よし、じゃあ行こう」
本拠点を離れてペガサスの住処へと向かう。
『あれ、出口そっちじゃなくない?』
『さっきの案内と違う?』
『群島エリアの外だろ? 向かうの』
『これどこに向かってるんだ?』
「あぁ、言い忘れてたけど」
遠くに見える小さな島を指差す。
「ペガサスがいるのはあの島だよ。つまりこのエリアにいる」
また橋を繋げないと。
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