第43話 インテリア

「二人ともお見事」

「あっ! ハジメさん! そうでしょうそうでしょう、私たち最強ー!」

「また調子に乗って。気持ちはわかるけど」

「自信があるのはいいことだ。あり過ぎるのも困るけど」

「過ぎたるは及ばざるが如し、よ」

「はーい。勝って兜の緒を締めまーす」

『国語の授業か?』


 足元に散らばったゴーレムモドキの破片。これらをこの場で選別するのは落ち着かないので、地面に異空間を開いて纏めて回収する。


「よし、撤収!」

「帰りましょう」

「いっそげー!」


 新たなゴーレムモドキが現れる前に退散して山岳エリアから脱出。樹海エリアの拠点に帰還し、小休止を挟んで鉱石の選別作業へ。

 ミノとトンカチで岩を砕いて埋もれた鉱石を取り出していく。大きいものは思い切ってつるはしで。

 いずれも採掘場から拝借して来たものだ。


「こつーん、こつーん」

「伊那、飽きたの?」

「なんか地味。それに鉱石に紛れて宝石っぽいのも出てくるけど、あんまり綺麗じゃないし」

「原石だからでしょ。磨けば綺麗になるわ」

「私みたいに?」

「伊那は元から綺麗よ」

「やーん! 雲雀ちゃん大好きー!」

『百合百合してきた』

『ここが天国か』

『酒の肴にするわ』

「好きだねぇ、リスナーはこういうの」


 仲良きことは美しきかな、とは言うけども。


「でも、勿体ないなぁ。綺麗に磨いてもダンジョンから出られなきゃ、なんの価値もないなんてー」

「この環境じゃ無用の長物だもの」

「んー、いやそうでもないぞ。貸してみな」

「原石を? はい」


 受け取った原石に魔法を掛けた。


「クラフト」


 削ることなく形を整え、磨くことなく研磨し、ただの石ころを生まれ変わらせる。


「わぁ……綺麗」

「宝石の花……」


 ゴーレムモドキの住処から着想を得た宝石の花だ。青く透明な花弁が幾重にも重なって、我ながら上々の出来だ。


「可愛いインテリアが欲しいって言ってたから。気に入った?」

「とっても! ハジメさんも大好き!」

『百合の間に挟まる男ハジメちゃん』

『許すまじ』

『消滅しろ』

『呪ってやる』

『は?』

『二度とするな』

「挟まった覚えはねーけど!?」


 手の平で咲く宝石の花を見つめて、うっとりとする伊那の隣。雲雀の視線も同じところにあった。

 そっと別の原石を拾い上げて魔法をかける。

 今度は赤色の花が咲いた。


「ほら」

「え、いいんですか?」

「もちろん。俺には必要ないし」

「あ、ありがとうございます!」


 赤い宝石の花を受け取った雲雀の表情に笑みが浮かぶ。


「よかったね、雲雀ちゃん」

「うん」


 喜んでもらえてよかった。


『岩塩は?』

「あ、そうだ忘れてた」

『今回のメイン!』

『でも最悪ない可能性もあるんだよな』

『ゴーレムモドキが岩塩持ってるかは完全に運だし』

『ガバ運だったらもう一回やり直しだな』

『再走しろ』


 もう一度ゴーレムモドキを倒しに行くのは流石に面倒だ。出切れば避けたいと願いつつ、岩を砕く。

 この辺りの岩塩は無色透明で水晶のようでもある。出てくれば直ぐにわかるんだけど。


「あ! 見つけました! 岩塩!」

「私も私も! 岩塩みーっけ!」

「こっちもだ。なんだかんだで結構取れたな」


 心配事は杞憂に終わり、思いの外、大量の岩塩を発掘できた。大きな塊がごろころだ。

 全部を三人で使い終わるのに、いったい何年掛かるんだって感じだ。

 もう絶対に塩には困らないな。


「お塩問題はこれで解決ですね! あとは岩塩プレートですね」

「お肉を焼くなら任せてください」

「お、そうだったな。じゃ、頼んだ」


 岩塩の一つに魔法を掛けてプレートを作成。

 早速、肉を焼こう。

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