第41話 ゴーレムモドキ
先行するゴーレムの後に続いて、道なき道を行く。
山岳エリアの急勾配を恨めしく思いながら進んでいると、しばらくして視界にキラキラと光る物が映り込む。
「わっ! 綺麗なところ!」
それはあらゆる鉱石が露出した、宝石箱のような場所。太陽石の光を反射し、幻想的な空間に仕上がっている。
「ゴーレムモドキの住処だ。正確には産まれた場所か」
「ここでゴーレムモドキが?」
「そ。この辺にある鉱石はみんな花みたいな形してるだろ? 蕾状の鉱石が地中から生えて花開くんだ」
「その中にゴーレムモドキがいるんですね! かわいい! お伽噺みたい!」
『なお』
『でも叩き潰すんですよね?』
『まぁ、お伽噺って意外と残酷なのが多いし』
『お伽噺ならハジメちゃんたちは悪役定期』
『ゴーレムちゃんをこき使うしな』
『絶対このあと痛い目みるじゃん』
『ゴーレムちゃんが開放されますように』
「それは絶対にない」
『鬼!』
『悪魔!』
『ハジメ!』
なんてことを言い合いつつ、慎重にゴーレムモドキの住処を行く。まだ蕾の状態で花開いていない鉱石があれば手っ取り早いんだけど。
「――二人ともストップ」
雲雀と伊那に指示を出すと、二人はその場でぴたりと止まる。警戒度が更に上がり、神経が鋭敏に周囲の情報を拾う。
二人がそうすると、感じ取れる物がある。
「揺れてる? でも、どこから?」
「この感じ……伊那! 真下!」
「下ぁ!?」
地面が割れて伸びる岩の手。その指先から間一髪で逃れた俺たちは大きく距離を取る。
不意打ちに失敗したそれは、地中からその身を引き抜いて現れる。
鉱石と岩の混合物で出来た鉱石生命体、ゴーレムモドキ。それが一気に三体も。
「一人一体ってところか。任せていいか?」
「オッケーでーす!」
「倒して見せます」
「よし! 行こう!」
それぞれが担当するゴーレムモドキに向かって駆ける。
振り下ろされた岩の拳を躱して腕に飛び乗り、そのまま肩まで駆け上がってその先へ。
俺の相手は一番奥にいるゴーレムモドキ。
他の二体は二人に任せた。
「さーてと、ちゃっちゃと終わらせますか」
異空間から虎鶫を抜刀し、斬龍の一撃を見舞う。縦に過ぎた一閃がゴーレムモドキを真っ二つに断つ。
『あれ、終わり?』
『はや』
『ザッコ』
『なにこれ?』
「まだ終わってない」
左右に分かたれたゴーレムモドキは、しかし時間が巻き戻ったかのように再生する。
「ゴーレムモドキはコアを潰さないと倒せないんだ」
『強い』
『最強か?』
『誰だよ雑魚とか言ったやつ』
『始めから強いと思ってました』
『コメント欄の熱い手の平返し』
『心より謝罪申し上げます』
『心にもない謝罪とはこのことです』
コアの直径は十センチ程度。個体ごとに位置も違う。初撃で倒すには、あの巨体を一撃で粉々にするしかない。
それは俺には向かない戦法だ。
だから地道に行く。
「なんで俺が再生するってわかってて縦に斬ったかわかる?」
『格好つけたかったから?』
『イキリ』
『厨二病』
「しばくぞ、お前ら」
リスナーに聞いた俺が馬鹿だった。
「再生する時、コアの方に吸い寄せられるんだ。磁石みたいにさ。さっき左側に吸われたからコアがあるのは左半身のほう!」
『なるほど』
『斬れば斬るほど絞れる!』
「その通り!」
振り上げられた岩の拳が地面を叩く前に、肩から先を斬って飛ばす。同時に虎鶫を横長に振るい、上半身と下半身に分かつ。
今度は上半身に吸い付いた。
「どんどん行くぞ!」
同じ方法でゴーレムモドキを斬り刻み、コアの位置を絞り込む。
あっという間に特定は完了。
鶫を袈裟斬りに振るい、コアを断つ。場所はちょうど心臓の位置だった。
こんなにわかりやすいなら、最初から心臓を狙ってればよかった。
『流石ハジメちゃん』
『やっぱ強いわ』
『魔物を倒して株を上げる男』
『ゴーレムちゃんを過労死させて株を落とす男』
「してねーよ、過労死」
さて、俺の受け持ちは倒した。
二人のほうはどうなった?
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