第10話 誰がために書く
2024年の現在、放映中の大河ドラマ『光る君へ』(三十二回)のエピソードタイトルです。
放映があったのは8月末頃……それを今更になって撮り溜めていた録画を視聴して、はたと思いました。
私は、誰のために小説を書いているのだろう、と。
数年前までは、自分の頭に浮かんだ世界や物語を綴って形に残したい、という自己満足的なものでした。誰のためか、と聞かれれば、自分のため、と答えたかもしれません。
今年の夏に書きあげた『ソーヤの大冒険』は、角川つばさ文庫小説賞へ応募するためとは言え、息子たちに読み聞かせながら書いていたため、息子たちのため、と答えられるかもしれません。
先月書き上げたばかりの『鬼姫は月夜に恋ふ』は、完全にコンテストのために書いたものではあるものの、強く生きる女性を書きたいというテーマも含んでおり、世の女性たちへ向けて、とも言えるかもしれません。
この『誰がために書く』という問いは、常に念頭におきながら執筆にあたると良いな、と思わせてくれたのが、先に述べた『光る君へ』のエピソードです。
紫式部が源氏物語を書いたのは、亡き中宮を忘れられず政を疎かにしていた一条天皇様を慰め、再び政へ目を向けてもらうためであった……というのが、このドラマでの解釈になっています。
だからこそ、源氏物語の主人公は、叶わぬ恋を想いながら様々な女性と恋に落ちるのか……と私は腑に落ちました。
あの物語は、帝の心に寄り添い、その心を闇の淵から光のある方へと引き上げようとするものだったのだ、と。
故に、「誰がために書く」という言葉が強く私の心に刺さりました。
源氏物語が何故、今になっても多くの人に読まれ、愛されているのか……それは、源氏物語が誰かのために書かれた物語であるからではないでしょうか。
それはつまり、長く読み継がれる小説とは、決して独りよがりであってはならない、ということと同義でもあると思うのです。
誰かのために書かれた作品だからこそ、誰かの心に響くのです。
私が最初に書き上げた短編は、『黒猫の魔法』です。
中学生の時に書いたものです。
初心に返ってみれば、その後にしたためた『天使の羽根』(短編)と共に、どちらもテーマは「救済」。
おそらく私は、誰かの心を救えるような、そんな物語を書きたかったのでしょう。
更に言えば、源氏物語にはそれまでにない、人の心にある闇と光の両方を描いており、生きている人の様をまざまざと、ありのままを描くことで、人の心に強く残るのではないかとも思ったのです。
私も、そんな誰かの心に刺さるような……人の闇と光の両方を描いた小説を書きたい、と強く感じました。
どちらかと言えば、私がこれまで書いてきた小説は、綺麗すぎた、といいますか……人の光る部分のみに焦点を当てて書いてきたように思えます。
私、綺麗な物語が好きなんですよね(;^ω^)
『天使の羽根』が最たるもの💦
だから、切なさとか妖艶さとか……そういうものに惹かれるのだと思います。
でも、光を書くには、闇がなければ輝きません。
薄っぺらい、うわべだけの作品になる気がします。
闇が深くなればなるほど、光が輝きを増す……たぶん今の私に足りていないのは闇を描くことかなと思いました。
今年のカクコンでは、闇にもチャレンジしてみようと考えています。
また、『光る君へ』のエピソードの中で、私の心に一番強く残った台詞が、ヒロインまひろの「物語は生きている」という言葉です。
帝へ献上した物語を、家で手直しするまひろの姿を見て、父である藤原為時が「献上したのに何故まだ手直しをするのか」と問い、彼女が答えた言葉でした。
私は、この言葉を聞いた時、とても感動して涙が出てきました。
紫式部の言葉でもあるのでしょうが、この脚本、原作を手掛けた作者の心の声のようにも感じたのです。
そう、「物語は生きている」のです。
敢えて、わざわざこの言葉を解釈して説明するような無粋なことは致しません。
おそらく、小説を書かれている皆さまの心にも、きっと響く言葉じゃないかなと思いましたので、ここに取り上げさせて頂きました。
何かの参考、インスピレーションにでもなれば幸いです(*ᴗˬᴗ)
さて、最後に問います。
あなたは、誰のために小説を書いていますか?
▼本文中に引用した作品です。
📖『【短編】黒猫の魔法』
⇒https://kakuyomu.jp/works/16817330652422350675
📖『【短編】天使の羽根』
⇒https://kakuyomu.jp/works/16818093088184682107
📖『ソーヤの大冒険~宝の地図を見つけたので、スローライフのため宝探しに出かけます!~』
⇒https://kakuyomu.jp/works/16818093076472798891
📖『鬼姫は月夜に恋ふ~闇にゆらめく紫焔の光~』
⇒https://kakuyomu.jp/works/16818093084547729539
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます