第17回「サグラダファミリア」

A「無駄を省きたい。そんなことを毎日考えている」

B「そんなことを考えている時間がそもそも無駄だ」

A「考えるよりまずは手を動かせと」

B「喋っている暇すら惜しい」

A「何よりもまずは行動だな」

B「動きながら考える」

A「間違っていたらその都度直す」

B「それで、結局何がしたいんだ?無駄を省いたところで時間が余るだけだろう」

A「俺にだってしたいことが山のようにある」

B「例えば?」

A「洗濯物をきれいにたたんだり、水回りの掃除をしたり、備品のストックの買い出しに行ったり、冷蔵庫のストックを片付けてみたり」

B「どれが一番大事なんだ?」

A「全部同じくらい・・・」

B「同じくらい大事か」

A「・・・大事じゃない」

B「・・・じゃあ何が一番大変だ?」

A「どれも大変だけれど、しいて言うなら・・・携帯料金の見直しかな」

B「じゃあまずそれを見直せ。大きい山から片付けていくのがセオリーだ」

A「携帯料金の見直しをはじめると、間違いなく余計なサイトを見ることになる」

B「ネットサーファーがミイラになるってやつか」

A「どちらかと言うと水でふやふやになっちゃうけどな」

B「いずれにしても何かをしようとするとつい脱線して無駄な時間ができてしまうっていうのが今の課題だな」

A「まぁそうだな。洗濯物をたたんでいると今度はアイロンがけもしたくなっちゃって、アイロンがけをする為には一度床掃除をしたくなっちゃって、床掃除を始めると窓拭きからやってみたくなっちゃって、窓拭きをするとなると・・・」

B「本題に辿り着かないんだな」

A「そういうことだ。何をやっても必ず遠回りになる。磁石で言うと同じ極にいるようなものなんだ」

B「じゃあ一番遠いところから始めてみるのもひとつの手なんじゃないか」

A「例えば?」

B「一番簡単で、必要性がなくて、後回しにしても何も困らないようなやつだ」

A「積読本の脇でしっかり棚にしまった一度読んだことのある小説の読み直しとか?」

B「それはちょっと行き過ぎだな。せめて積読の山の一番の上の本をちらっと見てみるくらいのところから始めたらどうだ」

A「少なくとも山が少しは縮むな。やるべきことリストの末端がひとつ削れるよ」

B「早速チャレンジしてみたら良い」

A「でも中途半端に山を崩すと微妙な達成感を覚えてまた同じくらいの山を作りたくなっちゃうんだ」

B「賽の河原にいるみたいな習性だな。磁場の力が強すぎる」

A「そういうわけで、巡り巡って今のままでも良いかなと思えちゃうんだ」

B「そういうことを日がな一日考えているわけか」

A「妄想だけで一日が終わることもある」

B「自信満々で言うな」

A「山登りならぬ、山づくりが趣味なんでね」

B「まるでサグラダファミリアだな。この漫談も一生終わらなそうだ」


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