第16回「需給」
A「駆け込み需要ってあるだろう?」
B「これがラストです!この機会を逃したらもう買えません!ってやつか」
A「そうそれ。選択肢が限定されるとその選択肢がどれだけ価値のないものだとしても途端に価値を持ち始めるあれだ」
B「俺にも経験があるな。最近なんかだとコンビニでお菓子のチェルシーが二袋残ってたから買い占めちゃったよ」
A「人は数が少ないという事実に価値を感じるものなんだ」
B「わかる。もう買えないと思うからこそ手が伸びちゃうんだよな」
A「その逆を利用して、駆け込まない供給っていうのもあると思うんだよな」
B「なんだよ、その駆け込まない供給って言うのは」
A「世の中の経済は需要と供給で成り立っている。需要は欲しいと思う気持ちで、供給は売りたいという気持ちだ。このちょうどバランスの良いところで世の中の商品の数や価格が決まって来る」
B「つまり出し渋れば自然と価値が上がるってこと?」
A「そういうことだ。たくさん売るからこそみんな買いたがらないんだ。だったら最初からたくさん売らなければ良い」
B「デパ地下のお菓子でもそういうのあるよな。午前だけで売り切れちゃいましたってやつな。きっと裏では在庫が山のようにあるんだ。店員さんが店頭で必死にタブレットを叩いているけどあんなのはパフォーマンスみたいなもので、多少高くても希少価値があるっていうだけで買わせようとしているだけなんだ」
A「無理にたくさん作らなくても、金額を釣り上げてだって買ってくれるお客さんを確保できるんなら希少価値を売りにした方が楽だな」
B「俺も供給を滞らせて楽して稼ぎたい」
A「良い方法があるぞ」
B「なんだ?」
A「お前の漫才のギャラ、バランスを変えてちょっと俺に多めに来るように持って来れば俺たちコンビのギャラの内、お前に入る量が減る。そうすれば自然とお前のギャラに対する希少価値が上がって無駄遣いをしなくなる」
B「なるほどな。俺にとって貨幣が貴重なものになれば無駄な供給を止めるようになるってわけか」
A「コンビとしても随分エコ体質になっていく。一石二鳥だ」
B「じゃあ俺の台詞の数も減らさないとな。希少価値が出るかもしれない」
A「そこは大丈夫だ。コンビとして平等に舞台に立つからこそ成立するものがある。第一、仕事量と金銭の供給を同じにしたら希少性が薄れるだろう。出番は変えてはいけないよ。なんせお前は俺にとっての最大のパートナーなんだからな」
B「これからもよろしくな!」
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