第5回「有名税」

A「有名税、払ってる?」

B「あれって自ら払うもんじゃないし、そもそも俺有名じゃないし」

A「金銭こそ渡さないものの、自ら差し出すもんなんだよ」

B「何を差し出すんだよ」

A「愛想とかサインとか、そういうのを一足先に出すんだよ。後出しではダメだけど早すぎてもダメで、その絶妙なタイミングってもんがあるだろ」

B「・・・わからなくないかもしれない」

A「ファンに気付かれたとして黙ったままだと相手を気まずい思いにさせるし、かと言って俺有名人ですわ!って先にずかずか行くのは絶対に違うしで、有名人として接するのにも絶妙な間合いがいるんだよ」

B「なんだその気の遣い方は」

A「そういう気が回せて初めて一流になれるんだよ。その集大成が有名税に込められている」

B「無駄に絡まれたり、ひどい場合はファンに後を付けられたりとか、そういうことじゃないのか?」

A「絡んでもらえることを無駄にとか言うな!」

B「えぇ・・・」

A「やっぱりお前にはプロ意識がまだまだ足りない。知ってもらえているだけありがたいと思え。有名だからこそスポンサー様が付いてくれたりしてるんだろ」

B「お前、スポンサーなんて付いてたっけ?」

A「サインだってこっちから書きに行くくらいの気持ちがないとダメだからサインペンは常に3本携帯してる。だけど色紙だけは絶対に持ち合わせない。それがプロにとってのバランス感覚なんだ」

B「サングラスを持っておくとかそういうこと?」

A「人だかりが出来て迷惑になることだってあるから、明らかに目立っちゃいけない時用にサングラスは肌身離さず持ってる」

B「完全にプロ仕様の生き方をしてるな」

A「ペットボトルの飲み物を飲む時は必ずラベルをはがすし、着る服だってノーブランドのものを着ることにしてる」

B「飲料メーカーもファッションブランドもお前のことを支援してないだろ」

A「風邪薬だって絶対にメーカーを間違えられない」

B「薬までスポンサーが付いてるのかよ」

A「そういうのも全部ひっくるめて有名税が構成されているんだ。だからこそ気軽に構えるんじゃなくて、こっちからあれこれと対策をしておかないと有名税の滞納でえらいめにあう」

B「例えばどんな風に?」

A「徳井なんかが良い例だ」

B「あれは普通に税金を払ってなかっただけだろ。確かにえらいことにはなっていたけど」

A「だからこそ俺は有名人になる為に、先行投資として有名税を払ってる」

B「無駄払いかよ」


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