第3回「運転」

A「車ってどういう時にさぁ乗るぞ!ってなるもんなの」

B「どうした急に。タイミングなんて人それぞれだろ」

A「車が必須な社会だったらなんとなくわかるんだよな」

B「なるべく早い内に免許を取って最初は親の車で慣らしておいて、その内マイカーを親に借金をしながら買うパターンかな」

A「そうなると18歳には初回の運転をすることになる。そこまではわかる。だけど電車やバスで十分移動手段は賄えるっていう層はいつ車に乗るもんなんだろうな」

B「俺は乗らないし、お前も乗らないよな」

A「そうなんだよ。でも身近な奴らでも車がどうとか言ってるだろう?趣味なのかなんなのかわからないけど」

B「ペーパーの俺からしたら度胸あるわとしか思わないな」

A「あまり安全とは言えない乗り物を乗り回すんだからすごいよな」

B「車とは無縁だし、これからも一生無縁なんだと思うわ」

A「そんな俺にも車に乗るチャンスがやってきたんだ」

B「何があった?」

A「当たったんだよ。パジェロが」

B「パジェロ?もうあの番組はやってないだろう?」

A「それがYouTuberのプレゼント企画で当たっちゃったんだよ」

B「それ大丈夫なの?車検を取ってない中古車なんてオチはない?」

A「新車らしいよ。それに人気YouTuberだから安心だ」

B「めちゃくちゃ情弱みたいなこと言い始めてるじゃん。一応聞くけど登録者はどれぐらいいるの?」

A「確かこの前1万人に到達したぐらいかな」

B「1万人しかいないのかよ!」

A「そんで1万人到達記念のプレゼントだったんだ。当選者は3人しかいないんだ」

B「1万人の記念企画でパジェロ?しかも当選者が3人もいるのかよ!」

A「これ以上の上はない特賞だから安心できる」

B「いや、できねぇよ! 怖すぎるだろ」

A「ともかくパジェロが当選したら思い切って運転でもしてみようかと思ってさ」

B「お前、免許はあるんだっけ?」

A「あるよ。AT限定の普通免許だけどな」

B「当然パジェロはAT車なんだろ?」

A「もちろんAT車だ。だから技術さえあればすぐにでも乗れる。国のお墨付きだ」

B「国が認めていても俺は絶対にお前の横にだけは乗りたくないな」

A「大丈夫だ。最初の内は運転ができる友達に一緒に乗ってもらってアドバイスをもらいながら転がすつもりだから」

B「転がすとか、急に粋がるなよ」

A「急発進、急停車は厳禁だから気を付けないとな」

B「急は急だけどその急じゃねぇよ。ところでいつもらえるとか決まってるの?」

A「まだなんだ。個別に連絡が入るとかどうとかでさ」

B「連絡が来るのが楽しみだな」

A「おっ、ちょっと失礼」


携帯を取り出す


A「どうやらパジェロがうちに来たらしい!」

B「どうしてわかるんだ?」

A「宅配の会社から連絡があって、そのYouTuberの所属事務所からのお届けもののようで、品物はミニカーって書いてある」

B「騙されてるじゃねぇか!」


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