第3話 帰還 最終話





 エンマさまがカーテンを開けて地獄と極楽の人達の食事風景を見せてくれた。

 

 ところが不思議なことが起こり始める。いったん地獄へ堕ちた人の中から、あらたに極楽へと生まれる人が現れ始めた。いったい何があったのか?


 極楽へ生まれる人には、ある共通した点があった。 それは、飢えたまま、人々を恨みながら、地獄へと堕ちていった人々が、実は地獄へ堕ちる原因は、他の誰でもない、この自分が作っていたのだということに気がついたという一点。


 こうして自分のすがたを明らかに知った人こそが、新しく極楽に生まれていった。


「な~んか面倒くさいな。極楽に来たら女も男になり、女は天女さんだけで食事も、そんなに気を付けなくてはいけないなんて……」


 そう言ったか言わないか一気に健太は地獄に落ちてしまった。地獄の鬼が丁度落ちて来た人間を沸々と煮えたぎった大きな釜に押し込んでいる。だが、熱いので出てこようとすると、大きな長い金棒で押さえつけ煮えたぎった中に押し込んでいる


「ギャア————————————助けて——————————ッ!」

 その時健太もその煮えたぎった大釜に落ちて行った。


「ギャアアア————————————ッ!熱いタタ助けてくれ——————ッ!」


 どうしてこんな事になってしまったのか?健太と大福は無事に現世に帰れるのか?

     ★☆


「な~んか面倒くさいな。極楽に来たら女も男になり、女は天女さんだけで食事も、そんなに気を付けなくてはいけないなんて……」


 この言葉がお釈迦様の逆鱗に触れたらしい。

「ぬぬぬ!何という邪心の塊。面倒くさい?女も男になり男しかいない?これでは仏に対する冒とく。仏に帰依する我々の邪魔者でしかない。極楽では1日の大半を修行やお経を読んで過ごすと言うのに?面倒くさいとは何事だ!」


 こうして地獄に落とされた健太。


「健太————————————ッ!」

 大福は我を忘れて健太を地獄から救い出そうと懸命になっている。


「エンマさま僕の命はどうなっても構いません。健太を救い出したいのです。僕を地獄に突き落として下さい」


「何というご主人思いの猫なのだ。うむ……うむ……自分があんな恐ろしい地獄に落ちてでも出来の悪い御主人様を助けたいとはのう。うむ……うむ……よくできた猫だ」


 そう言ったが早いか大福は地獄に落ちた。


「バッシャ————————————ン!ザッブ———————————ン!」

 

 大釜に落ちた大福だったが、地獄の鬼たちもこんな巨大でデブな猫が、大釜に落ちてひと苦労。金棒で押さえ込むにも足だけが半分ほど浸かっているだけで、大釜に入りきらない。おまけに図体が大きいので大釜から、いとも容易く出てしまう始末。


 これでは修行にならぬと、鬼総出で今度は針の御山に大福をぐっ刺し転がしたが、 全く危機感を感じている様子も無く、反対に針の御山を笑いながら転げまわっている始末。


「ワッハッハッハ————気持ちいいフッフッフ……」コココこれはどういう事だ?


 どうも……針の刺激で痒かったところが治まったらしく、熊手の役割を果たしているようだ。そして…針の御山の針は全部抜け落ち丸坊主になる有り様。要は体が巨体過ぎて針が全て抜けてしまっていた。これではまた針の御山に針を刺すのも一苦労。


「エンマさま!ここ こんなデブ猫地獄にはいりませぬ!仕事に遅れが出ております」


 巨体猫なので地獄の鬼も仕事が以前に比べて格段に遅れが出てきている。こうして地獄会議の結果、こんな仕事に邪魔になる巨体猫は極楽に帰す事になった。


「僕はこの地獄で健太と一緒に過ごしたいのです。どうか……どうか……地獄に置いて下さい」


「嗚呼……煩わしい。もう健太も極楽に帰すから出て行ってくれ。頼む!」


 地獄で散々邪魔者扱いされた挙句、エンマさまによって極楽に引き戻された2人。


 だが、極楽でも巨体化した猫なので食事量が半端ない。極楽の食費が一気に赤字になり、かつてない最大のピンチに立たされてしまった。一方の健太は到底極楽にあるまじき邪心の塊の出来損ない。

「もうお前達は霊界には要らぬ存在だ。ともかく地獄にも極楽にも必要ない!」


 結局は極楽にも地獄にも、ことごとく毛嫌いされてしまった。こう言われて無理矢理現世に引き戻される事となった。


 だが、人が2人乗れるくらいの小さい宇宙船なので巨大化した大福がどうして乗れようか。

「もう……どうしたら良いんだよ?それから……折角イケメンになれたのに……何だよ。チッ💢もうちょっとイケメンでいたかったのに……フン!血も涙もないとはこの事だ。また皆から偏屈者扱いを受ける毎日か、イヤだな~。またオタク、オタクと蔑まれ女子はおろか犬猫までもが俺を避けて通る毎日なんて……」


 それでも…日に日にお釈迦様とエンマさまの冷たい視線に、とうとう現世に戻る決意をした健太。


「こんな巨大化した大福連れて帰れな~い」

 余りにもお釈迦様とエンマさまの冷たい視線に、健太は居場所を失い焦ってしまい、とんでもない手違いをしてしまった。


「命の泉」と題した生き返る薬を容量の10倍分を飲ませてしまった。

 すると大福がブクブク ブクブクと益々巨大化して、極楽の美しい湖ほど巨大化してしまった。


「大福益々ブス猫になったね。ここ これは酷すぎ!」


「にゃにゃにゃ ギャギャギャ……なんて事言うんですか?薬のせいでむくんだだけなのに……酷すぎです」

 するとその時凄い爆音と共に大福が爆発してしまった。


「ボボボ ボッカンボッカンドドドドドドドドドバッカ————————ン!」


 何という事だ。美しい極楽浄土が汚い猫の肉片で見ていられない汚い状態になった。お釈迦様は益々大権幕。


 イヤ!それより大福の命は大丈夫なのか?これだけ粉々になりどう見ても命が有りそうには見えない。

「ワァワァ~~ン😭ワァ~~ン😭俺の命の大福、死なないでおくれ。ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭」


 するとその時元の姿の大福が、巨大化した大福の内臓からぴょこんと姿を現した。

「ワ———ッ!良かった大福生きていたんだね!」


 お釈迦様も、もうこれ以上居付かれては一大事。そう思い早々に極楽の住人にお触れを出し一斉清掃が行われた。


 こうして…極楽から旅立つ日がやって来た。 



     🌺💎🏵️ 🌺💎🏵️ 🌺💎🏵️ 🌺💎🏵️ 🌺💎🏵️


 極楽浄土はそれはそれは…得も言われぬ美しい世界。

 黄金の大地でできており、木々は四宝が埋め尽くされた柵や網で囲まれて木自体にも無数の宝が装飾されていて、常に輝いている


 極楽世界には、美しい池があって、宝石をちりばめた「八功徳水」という清らかな水が流れ込んで、池の底には金沙が敷き詰められていて四色の蓮華の花が咲き誇っている。

 青い花は青く輝き、黄色の花は黄色く輝き、

 赤い花は赤く輝き、白い花は白く輝き、

 美しく、香り高く咲き誇って神々しい光が放たれている。


 どこからともなく風が吹いて、宝の樹木がそよいで、天からは華の雨が降り、素晴らしい音楽が流れている。



「ワ—————————!改めて見るとメッチャ綺麗な世界だったんだね。大福」


「今更そんな事言ってるのかにゃ~。極楽はビックリするくらいキレイだにゃ~」


 こうして…健太と大福は地獄のエンマさまと極楽のお釈迦様にとことん嫌われて、この世に戻って来たんだとさ。


 こんな迷惑な逆戻り。

「嗚呼……もっともっとイケメンでいたかったのに……😓」

 こういう事もあるのね😢

 健太は不満タラタラ😫


 おわり





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大福戻ってくれたね⁈ tamaちゃん @maymy2622

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