第91階層 クレスフィズ・グランサードその4
元国王陛下がアクレイシス女王は生まれた時から女性であった等とオカシ気な事を仰る。
どういう事だ?
本人からも、元は男で、薬を使って女になったと聞いたのだが?
まさか父親すら欺いていたとか?
それとも、何か特別な理由があってそう言ったのか?
オレとねんごろになるなんて絶対イヤだ、とかそう言う感じ?
もしかしてオレが子供を作ろうとしないから、元国王陛下から担がれているのか?
一体何が本当なんだ?
そう言った悶々とした感情を持ちながら日本円ダンジョンへ戻る。
いきなり始まった、女王陛下は元から女性疑惑。
だったらなんでTS薬――――性転換薬を飲んだ等と言ったんだ?
元から女性でTS薬を飲んだら男になるだろうに。
詳しい話を聞こうと女王陛下の寝室に向かったのだが。
そこには先客が居た。
アクレイシス女王のベッドでスヤスヤと眠るクレスフィス皇子。
えっ、なんでお前、そこで寝ているの?
まだ正式に夫婦になった訳じゃないだろうに。
ああ、前王陛下。
心配しなくても近々お子様は出来そうですよ。
オレの子じゃないけど。
「あっ、そのなんだ、人工衛星の打ち上げの件で、随分と話し込んでしまってね」
オレの視線に気づいたアクレイシス女王が慌ててそう言ってくる。
だからと言って、異性を自分のベッドに寝させるのは話が違うと思うんだが。
クレスフィズ皇子もまるで自分のベッドに寝ているかのように、ぐっすりと熟睡されている。
もしかして常日頃から?
「ああ、それで話とはなんだね?」
「いえ……もう、解決しましたから」
もう、話す気力も無くなったオレは、そそくさと女王陛下の寝室を後にする。
もしかしてこれがNTRと言う奴なのだろうか?
まさか異世界でネトラレを体験する羽目になるとは……
なにやら心にぽっかりと穴が開いたかの様だ。
とはいえ、一度クレスフィズ皇子とはサシで話をしておいたほうが良いな。
本当にヤっているかどうかも確認したい。
DNA鑑定も出来ないこの世界じゃ、誰の子供かというのは、かなり重要だ。
これが男女の役割が逆ならはっきりするのだが、現状だと、そうはいくまい。
これまで皇子とはほとんど話をした事が無い、ちょうど良い機会だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
なにやらイースさんから二人っきりで話がしたいと持ち掛けられた。
いつもは部屋の中で待機しているファリスさんまで、今は扉の外に出ている。
一体、なんだろう?
よくよく考えたら、こうやって二人っきりで話をするどころか、対面してお話しする事自体が初めてな気がするよ。
なんて言うかさ~、話しかけづらいんだよね、この人。
なにせ人を石ころを見る様な目でみているんだもん。
誰にでも分け隔てなく接していると言うけど、それは逆に、人に興味が無いから、人によって態度を変える必要が無いんじゃな~い?
石ころが落ちていて、それが丸いか四角いかなんて誰も気にしないのと同じ様に。
アクレイシス女王も、どうしてこんな人が好きなんだろ?
私なら真っ平ごめんだよ~。
でもさあ……皇帝陛下がさ~、何やらおかしな事を言うんだよね~。
最近、夕食は皇帝陛下と一緒に食べているのだけど、その席でさ、
「アクレイシス女王と婚姻を結んだ後は、女王とお前でイース卿を共有する事になる」
我が皇家の血を絶やす訳にもいかぬ。
貰えるのならイース卿の子を授かる事は出来ぬか。
等と。
え~、イヤだよ~。
せめてお兄さん達――――イケメンのバーセルクさんや、ムキムキのボルヴェインさんならまだしも、この人、良い所、一つも無いじゃん。
なんだか知識だけは豊富なんだけど、それだって出し惜しみしてるし。
今やっている人工衛星の打ち上げだって、私達が四苦八苦しているのを見て、黙って見ているだけ。
きっと良い知恵を持っているはずなのに、アドバイスの一つも無い。
まるで、もっと苦労すれば良いと思っているかの様だ。
「――――クレスフィス皇子、皇子、聞いていますか?」
あっ、ヤベッ、全然、話を聞いていなかった。
仕方ないので曖昧な笑顔で誤魔化す。
返事をしないという事はやはり、と小声でつぶやいている。
返事をしないのは話を聞いていなかっただけです。とも言えないので、笑顔をキープ。
とりあえず話を逸らそうと別の話題を振ってみる。
「それよりもイースさん、あの空の向こうはどうなっていると思いますか!」
「…………そんなあからさまに話を逸らさなくても、まあ、良いです、大体は分かりました」
おっ、話を聞いていなかったのを分かってくれましたか。
イースさんは、ため息を一つ吐くと、
「空の向こうには何もありませんよ」
等と答える。
え……知って、いるの?
断言するって事は、想像でも無いって事だよね?
今一番疑問に思っている事をふと口に出しただけなのに、思っても無い回答が帰って来る。
この話題は女王陛下とも盛り上がったので、イース卿ともどうかなと思って振ったんだけど……
まるで、空の向こうに行った事があるかの様な反応。
この人、一体何者なの?
もしかして、空の向こうにある宇宙とやら、そう宇宙から来た、宇宙人!?
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