第88階層

 アメリカ$ダンジョンの所為で、さらに忙しくなってきた。


 有って良かったコーヒーと栄養ドリンク。

 むっちゃ、ドーピングしまくりですよ?

 あかん、せっかく穀物で寿命を延ばしても、過労で早死にしそうやねん。


 ロケット開発はアクレイシス女王にお任せするとして、他にも様々な設計図がある。


 そして、とりあえず作ってみたベルトコンベア。

 何は無くても、物を運べないと、どうしようもない。

 作ったパーツを転移ポーターまで運び地上で組み立てる。


 最初は趣味程度に細々とやって行けば良いかなと思っていたのだが、そうは問屋が卸さなかった。


 皇帝陛下やお国のお偉いさん達が集まって来て、何作ってんだお前、みたいな事になって。

 ダンジョンさんから設計図を頂いたので、魔道具みたいなのが色々作れるようになったんですよ。

 と答えたら、国を挙げて工場を作ろう等と言い出されて。


 いや、そこまでは良いんだ、やるなら勝手にどうぞ、って感じだ。


 そこへアクレイシス女王がやって来て、そこにある設計図で物を作るのにはある程度の知識が必要だ。

 ロケットや人工衛星の開発だって、高度な知識が必要になる。

 今のまま、希望者のみ学園に来ると言うのは時代に沿っていない。


 なので、全国民に日本円ダンジョンへの留学を義務付ける。


 等と馬鹿な事を言い出した。

 いや、おめえ、そんなの無理に決まっているだろ?

 村から子供が居なくなるんだぞ。


 まるで子供を攫うのと同じ、皆さんが納得しまい。


 と思ったのだが、ヒヤリングしてみると、子供達を養ってくれるならそんなありがたい事は無いと、上々の反応。

 なんでも、この世界の皆さん、基本、狩猟民族なんですわ。

 なので、子供が働ける場所が非常に少ない。


 農耕時代であれば、種まきや草抜き、水を運ぶなど、子供達でも出来る仕事は多い。


 だが、剣や槍をもってモンスター肉の回収に子供達を連れて行くなど、危険すぎてとても出来ない。

 体の成長も前世より遅く、村の役に立つまで時間がかかる。

 その間、預かってくれて、勉強も教えてくれるなら言う事はないと。


 そうは言ってもおめえら、親子の絆って言うのもあるだろうに。


 近場ならまだ、リニアで行き来も出来るだろうが、リニアが通っていない場所だってある。

 数年間も離れ離れというのはどうなんだ?

 なお、リニアモンスターカーなのだが、途中で中継駅を作る事が決まった。


 カーラード王国からグランサード帝国までの間にあったダンジョン。


 そこに中継駅を作ったのを皮切りに、うちもうちもと中継駅の要望が上がって来た。

 そりゃそうだ、始点と終点しかない線路じゃ不便過ぎる。

 ちなみに、線路に障害物があるとリニアモンスターカーさんはその前で停止する。


 人とか落ちていてもきちんと止まってくれるのだ。


 で、その習性を利用して、可動式の土台で通路を塞ぐ、そこで口を開いて貰ってその土台から乗り降りする。

 終わったら、土台を除けばまた走り出す。

 ただし、始点と終点までの往復は変わらないので、中継駅から折り返しは出来ない。


 そう言う訳なんである程度の町ぐらいなら、学割定期券でも発券すりゃ、町や村から通う事も出来ようが、ほとんどの場所には駅が無い。


 後で文句を言われても困るので、とりあえず、一週間ぐらいの合宿でお試してからとしたのだが。

 これがまた、とんでもない事態を招く事になった。

 日本円ダンジョンで快適な暮らしを体験した子供達。


 いざ帰るとなったら、村に戻るなんて絶対いやだと言って泣きながらしがみつく。

 来る時は親から離れたくなくて泣いていた子供が、帰る時は親の元に戻りたくないと泣く。

 まあ子供だしね、しょうがないね。


 泣く泣く帰っていった子供達も、もう一度ここに来たいから必死で親を説得する。


 特に部屋の中のモニターで映し出された、空へ向かうロケット。

 それに感動した子供達は村に帰っても、大袈裟に日本円ダンジョンの事を褒める。

 雨に打たれる事も無く、風にさらされる事も無い。


 熱い夏の日差しも無く、凍える様な冬も訪れない、非常に暮らしは快適。


 さらに、貴族が食べる様な美味しいご飯を食べ放題。

 空の果てに行けるようになるなら、勉強だって苦にならない。

 まさしく天国の様な場所だと言う。


 するとだ、村の大人達も、じゃあ俺もそこに行きたいわ。という話にもなる


 そこで子供達は、女王様が勉学を始めるのに年齢は関係ないと言っていた、と言う。

 そう、この女王様、学業を学ぶのに年齢制限を設けていなかったのだ。

 要は、どんなジジババであろうが、勉学を学ぶ気があるならダンジョンに迎え入れるつもりらしい。


 となるとだ、村ごと引っ越して来たい、という要望も上がって来る。


「カーラード王国のかなりの村が廃村になりそうですよ?」

「今ある村や町は狩猟に適した場所にある、そんな場所は何れ時代に取り残される。ここで学んだ人達で、農耕に適した場所に新たに村や町を作れば良いと思わない?」


 等と、とんでもない事を言い出す女王陛下。


 おいおい、まさか、最初からそのつもりで動いていた訳じゃないだろうな?

 確かにこのまま農耕中心の経済になって行けば、狩猟など下火になって行く。

 肉の回収に付いても、畜産が中心になって行くだろう。


 安全に肉が摂れるなら、そりゃそっちを選ぶ。


 今は畜産を行うだけの餌を用意出来ないが、農耕が広まれば、それも十分に溜まってくる。

 するとまあ、その受けれ入れの準備に、とんでもなく忙しくなるのだが、ここでダメ押しも入った。

 一括千金を狙っていた冒険者連中まで集まり始めたのだ。

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