第85階層

 なるほど、同じ日本円だと芸がないと思ってか、アメリカ$で来たか。


 そこに現れたのは1ドル紙幣であった。

 そのうち、中国元ダンジョンとか、韓国ウォンダンジョンとか出来やしないだろうな?

 呆れながらもその1ドル紙幣を投入する。


 だが、料金が足りませんと出た。


 ふむ……よく見ると、パネルの右上に1200$とか表示されている。

 金さん、高すぎだろ?

 スライム1200匹とか、ゲームなら余裕な数字だろうが、現実だと無理ゲーですよ?


 クッソ、やっぱダンジョンだな。


 人の足元を見やがって。

 まあしかしだ、ハーキャットさんは人の加工品を好む。

 だとしたら、ここで作った物を献上すれば、お許しも頂けるかも知れない。


 そこでオレは、ファリスさん達にアメリカ$の回収を頼み、女王陛下の細工師にとある品物を作って貰う。


 それを持って、アメリカ$ダンジョンの最深部へ向かう。

 そう、構成自体は簡単な代物だが、素材が無くて作れなかったもの、それは――――自転車だ。

 チェーンレスのシャフトタイプの自転車。


 オフロード様にタイヤは分厚く凸凹があるタイプにしてもらった。


 即席なので強度に不安があるが、とりあえず乗って動く事は出来た。

 それを持ってハーキャットさんの元へ赴く。

 設計図と自転車を見せて、そのままでも役に立ちますよ、と言うのをアピールしてみる。


 ムムムッと考え込むアニメキャラのスタンプを出すハーキャットさん。


 そのうち設計図のとあるページを指さし『3日待つ』と言うアニメキャラのスタンプを表示する。

 えっ、三日でコレ作るの?

 さすがに無理じゃね?


 電気系統とかどうしたら良いの?


 とりあえず、メイクィースさんの元へ相談に向かう。

 メイクィースさんも命が掛かっているのだ、簡単に出来ないとは言えない。

 電気系統の基盤は何とかすると言うので、他の準備を進める。


 しかしコレ、燃料だって必要なんだが、そこんところはどうするの?


 と思っていたら、翌日、ガソリンスタンドが出来ていた。

 ハイオク・レギュラー・軽油はおろか、重油などの工業油も準備されていた。

 隅っこにサラダ油があったのはちょっと笑ったが。


 まあ、旅客機や戦闘機で食用油を再利用した試みはある。


 ただなあ、レギュラー1リットル3ドルは高過ぎね?

 日本円にしたら450円ぐらい?

 さすがアメリカ産、なにもかもたけえや。


 3日後、なんとかかんとか、形だけは完成する。


 そしてハーキャットさんをご招待した。

 例の円盤だが、それを持ってくれば別の場所でも出現出来るそうだ。

 ハーキャットさんの円盤を持って、メイクィースさんのダンジョンへ向かう。


 さて、とりあえず、作るだけは作ってみたのだが、コレ、どうするの?


 なんか転移魔法で運びだしたりするのかな?

 と思っていたら、何やら天井の方で空間が歪んだ様に見え、ダンジョンの中から空が見えだした。

 ふむ……どこかと空間を繋げたか?


 何かが、その空の向こうからこちらに飛び込んできた。

 それは、ドローン戦闘機、アクレイシス女王が毎日遊んでいるおもちゃであった。

 そのドローン戦闘機から声が聞こえる。


「ちょっと、日本円ダンジョンのドーム天井が開いたんだけど、何する気?」


 あれ? この戦闘機、通信機能を持ってたっけ。

 と思ったら、例の遠距離と通話するブローチが取り付けられている。

 考えたな女王様、これなら電話の代わりに使えそうだ。


 ただ単に遊んでいただけじゃなかったんだね。


 しかしコレ、態々、日本円ダンジョンの上空と繋げたのか?

 もしかしたらここから打ち出したら、ハーキャットさんの物にならなかったとか?

 隣で、何やらメイクィースさんが舌打ちしているし。


 そう、作り上げたコレ、何を隠そう――――――人工衛星でござる。


 その人工衛星を乗せたロケット、それがココに置いてある。

 3日で人工衛星とロケットを作れって、無理難題にもほどがある。

 どっかのロケットマンですら、無理だと思うぞ。


 おかげでうちのメンバーは、栄養ドリンクとコーヒーを飲みながらの3徹でござる。


 オレはアクレイシス女王に、これからロケットを打ち上げるからその場所から離れろと通達する。

 ロケットって何? って言ってたが、今は説明している時間が無い。

 日本円ダンジョンの各部屋のモニターに発射状況が中継されるようだからそれを見てと伝える。


 オレ達もダンジョンの最深部から避難する。


 残っているのはハーキャットさんとメイクィースさんのみ。

 遠距離操作は出来ないから、点火は人力でござる。

 そんな危険な事が出来るのはあの二人しか居ない。


 そしていよいよ、カウントダウンが始まる。


 それがゼロになった瞬間、ダンジョンの最深部が煙に包まれる。

 勢いよく飛び出すそのロケット、空の彼方へ向かって飛んで行く。

 が、やはり突貫工事。


 かな~り、傾斜してござい。


 多分あれ、其のうち放物線を描いて落ちてくるな。

 そう思って眺めていたら、メイクィースさんが飛び上がってロケットを追いかける。

 そのうち、我が日本円ダンジョンを襲ったドラゴンの姿へ変身する。


 そしてブレスをロケットに向かって吐き出す。


 至近距離で爆発したブレスのあおりを受けて、ロケットが態勢を変える。

 むっちゃ、力技やねえ。

 あんなんで上手くいくのだろうかね?

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