第84階層 新たなるダンジョン

 どっかで見たような円盤だなあ……


 とりあえずソレを手に取ってみる。

 やはり、虹色に光り出す、その円盤。

 ソレをそっと地面に置いてみる。


 円盤の上に何かが薄っすらと現れ始める。

 それは人型のようなシルエットを作り出し……


「なるほど、今度はそう来ましたか……」


 オレが前世でやっていたゲームは、当然一つだけではない。


 中にはファンタジー風の世界ではなく、超未来を描いた作品だってある。

 そこではロボ娘と言う、人型のアンドロイドを自作して遊べる物もあった。

 顔は人と良く似ていて、しかして頭は髪の毛を模した硬質なヘルメットだったり、体や四肢は硬質な機械で出来ている。


 アクセサリと呼ばれるパーツを幾つか体に纏い、尖った雰囲気を醸し出している。


 そう、そこに現れたのは、オレが前世でやっていたゲームの一つ。

 超未来を舞台にしたアンドロイドが跋扈する世界。

 そこで作り上げたキャラクター。


 その彼女にはメイクィースと名付けていた。


 ロボットの様な顔も選べるには選べたのだが、顔は普通の人と同じような造形にした。

 ただし皮膚は肌色をしているだけの鉄の様な素材。

 その他の部分も基本、メカニックな鋼材で出来ている。


 背中には羽を模したパーツが浮遊しており、そこからは粒子の様な物が噴出している。


 それほど長く遊んだ訳では無いが、キャラクタークリエイトにかけた時間が一番長かったキャラクターだ。

 何せ無数のパーツがあり、その組み合わせはまるで無限大。

 位置や角度をずらすだけで大きく雰囲気が変わったりもする。


 パーツごとの色の配分まで考えりゃ、そりゃ時間もかかる。


 そんな苦労して作ったメイクィースさんが土下座をして訴えてくる。


『ドウカ……コワサナナイデ……』


 コイツ、喋ったぞ!?


 そりゃ、このダンジョンは千年以上存在している。

 出来たばかりのハーキャットさんとは年季が違う。

 やれる事だって、その分多いはずだ。


 出来たばかりのダンジョンでは、唯の短剣ですらおとすのは稀だ。


 だが、時を経たダンジョンでは、炎を吹き出す魔剣や、前世の機械製品に負けないような魔道具。

 さらには死者すら蘇らすと言うエリクサーという薬まで。

 言葉を喋るアンドロイドが出来たって不思議ではない。


 ただ、喋った言葉は日本語なんだが……


 まるでボーカロイドの様に、たどたどしい機械的な音声ではあるが、確かに日本語だ。

 ブルブルと震えながら地面に蹲っている。

 どうやら、かなり怖かったらしい。


 そりゃ、攻略班にはダンジョンクラッシャー・ボルヴェインが居た訳だ。


 かつてレジャー感覚で幾つものダンジョンをコアごと潰している。

 そりゃ怖かろうて。

 ファミュ将軍からも、お前のアニキ、時々暴走するから嫁さんとセットにしとかな使えんぞアレ、とか言っていたし。


 なお、嫁さんのシオンさんの言う事は聞くそうで、ストッパー役になって貰っていたそうだ。


 もう尻に敷かれているのかね、アニキ。

 まあ、シオンさんは元王族だ、人を引っ張って行く教育も受けているだろう。

 常識が無いのはどっちもどっちだがな。


 しかしなあ……オレに懇願されてもなあ。


 ダンジョンの攻略を要請したのはハーキャットさんだし、その後の事を考えていたのはアクレイシス女王だ。

 その二人と話し合ってもらうしかない。

 通訳はするからさ。


 そう思っていたら、またしてもスライムが現れる。


 ファリスさんが微妙な顔をしながら、それをプチっとする。

 すると宝箱が現れた。

 開くとその中には大量の紙の束が入っていた。


 ふむ…………オレを買収にかかって来たか。


 そこに入っていた物は――――――数々の機械、またそれの作成に必要な道具、それらを作る為の設計図であった。

 食べ物が充実したらのなら、次に必要な物は生活を向上させる便利な品々。

 さらに言えば、娯楽製品だってあればなお良い。


 ただなあ、設計図だけあっても素材がなあ。


 アルミやステンレス、ゴム製品などは今の技術では到底作れない。

 それに大抵の機械には電気が必要だ。

 発電機などの設計図もあるが、電気系統は、なまじっかな知識では事故の元だ。


 と、メイクィースさんが立ち上がるとダンジョンの壁に向かって手を突き出す。

 するとだ、腕の辺りが変形して銃口の様な物が現れる。

 ああ、あったなあ、そんなギミック。


 と思っていたら、そこから光線が幾筋も発射される。


 その攻撃を受けてモウモウと煙が立ち込めるダンジョンの一面。

 その煙が晴れた先、そこにあった物は…………まるで未来な工場の様な機械的な装置がならぶ部屋が出来ていたのだった。

 その部屋に向かって歩いて行くメイクィースさん。


『ココ、モノ、オク』


 とある台座を指さす。


『ソザイ、センタク』


 そしてモニターの様な物を指さす。


『ソザイ、ヘンカ、スル』


 ほほう?


 例えば木の模型でパーツを作成し、ここで設計図の通りの素材に変化させる。

 それに、何も完全機械製品に拘る必要も無い。

 魔法で上下運動なり回転運動が行える様に出来るなら、電気の代わりにもなりうる。


 イースチルドレンの連中なら、何かを思いつくかも知れない。


 試しに、オレは近くに転がっていた石を拾う。

 それを持って台座に近づき、その上に石を置く。

 モニターを見れば、幾つかのメニューがあったので、其のうちの黄金を選択。


 さらに幾つかのメニューが出たので、その中の24金を選択。


 するとだ、料金を投入してくださいと出る。

 …………オレはメイクィースさんを見やる。

 するとだ、またしてもスライムが現れる。


 いい加減、うんざりした表情でそれをプチっとするファリスさん。


 スライムを倒すと一枚の紙切れがおちた。

 その紙切れは、芸術的と言ってもいい絵柄が描かれ、高度な技術を用いた透かしが入っていた。

 一見して美術品に見えるそれは――――――アメリカ$やんけ!!

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