第83階層
とまあ、ここまでがこのダンジョンを攻略する事になった経緯だが、ここからが問題だ。
ダンジョンの野郎、攻略に当たって餌をぶらさげて来やがった。
ハーキャットさんが、あちこちに現れては『貢献者1位!』と一本指を大きく立てたアニメキャラのスタンプを表示させた後『プレゼント!』とメッセージが入った、例の戦闘機ドローンとコントローラーのアイコンを表示させる。
どうやら今回のダンジョン探索で貢献度が1位になった人には、戦闘機のドローンをプレゼントしてくれるらしい。
皆さん、文字は読めなくとも、イラストで大体の内容は分かる。
まあ、スタンプ自体がそれを目的として開発された物だからね。
しょうがないね。
そうなるとまあ、争奪戦になる訳でありまして。
グランサード帝国はもちろんの事、近隣各国からも精鋭が集まる。
うちもアレがあれば、空飛ぶモンスターに対する対抗手段になる。
燃費の悪さに付いては、戦闘機だと思えば納得もいく。
なので公平を喫して、4時間と言う短い時間に区切って交代しながら攻略している訳でもある。
中には個人で傭兵を雇って参加している富豪も居れば、企業が連合を組んで参加していたりもする。
戦闘機ドローンについては、正直、あれば便利程度だと思ってはいたが、それが他人の手に渡るのは阻止したいところ。
そういう訳なんで、オレはガーネットさんと協力して組織を編成、その指揮官として指揮を執っている訳だ。
銃のおかげで今のところは、貢献度1位を取っているのでないかと思う。
ただ、弾丸が自販機で買えるようになったので、オレ達を真似して来だす人達も増えてきた。
普通の冒険者が少ないオレ達では、今後は苦戦しそうな予感がする。
銃本体もオレ達で独占する訳にもいかず、欲しい人には売っている。
ガーネットさんは不良在庫がさばけてホクホク顔でござる。
「イース君、私は今回の競争、棄権しようと思う」
そんなある日、アクレイシス女王がオレにそう言ってくる。
女王陛下の所は、銃こそ無い物の、ボルヴェイン・クライセスとシオン・クライセスの2大巨頭が存在している。
冒険者も有名な街でトップランカーだった人物もいる。
最終的にはコイツが全部、持って行くのでは、と危惧しているメンバーだ。
そんな女王陛下が今回のドローン戦闘機争奪戦から棄権すると言う。
「良く良く考えたら、別に私がトップを取らなくても良いじゃん」
勝った人から借りれば良いよね。って言う。
コイツ、人の上前を撥ねる手段で来やがったか……
「とはいえ、他国の人物に勝ってもらっては困る」
そういう訳なんで、ファミュ将軍に全部預けて来たと言う。
おいおい、向こうは向こうで精鋭ぞろいだぞ。
騎士団はともかく、ダンジョン探索で仲良くなった冒険者が多数存在している。
そこへアクレイシス女王の配下が加わると、もう勝ち目ないじゃん。
「戦力は分散させるより集中させる方が良い、そうは思わないかね?」
「なるほど……」
じゃあ、オレも棄権しようかな。
ファミュ将軍ならハーキャットさんを与えときゃ、なんとでもなるし。
ドローン戦闘機だって悪用はしないだろう。
そんな事したらハーキャットさんに嫌われるからな。
そういう訳なんでオレもファミュ将軍に全戦力を預ける旨を伝えに行く。
ファミュ将軍は微妙な表情をして、分かった、と短く答える。
しかしその後、
「まだまだイース卿も、アイツの事を理解しきれていないな」
と続ける。
どういう事?
その理由は数日後に分かった。
女王陛下とオレの部隊を取りこんだファミュ将軍。
破竹の勢いでダンジョンを攻略する。
こりゃもう、貢献度1位はファミュ将軍に決定だな。
と思っていたのだが、最下層のボスを倒した後、発表された貢献度1位は……
なんと! アクレイシス女王だったのだ!!
ハーキャットさんがポコポコポコと無数の人のアイコンを表示させる。
そしてアクレイシス女王を真似たアニメキャラがそれらを一つに纏めているスタンプを表示させる。
なるほどな……複数にばらけていた戦力を一つに纏め、そのおかげで圧倒的速度でダンジョン攻略がなされた訳だ。
じゃあ、誰がダンジョン攻略に一番に貢献したか。
戦力を一つに纏めた人物に相違ない。
クッソ、やられた!
本人は狙ってやった訳じゃないよ。
と言っていたが、無意識でそれをする方が怖いわ!
「まあ、こうなる事は予想が付いていたがな」
と、諦め顔で答えるファミュ将軍。
気づいていたなら言ってくれれば良いのに。
「言っても結果はあまりかわらぬさ」
なにやら悟ったような表情でそんな事を仰る。
なんだかんだで女王陛下に一番身近な存在であった訳だ。
よく理解していらっしゃる。
そのうち、コレがオレの未来になるのだろうか?
さて、女王陛下はハーキャットさんと交渉すると言っていたが、それはどこまで進んでいるのか。
最近は、貰ったドローンで遊び惚けている。
交渉をしているような素振りが無い。
忘れているんじゃ?
いやもう忘れといて良いよ。
あと、遊ぶのも魔石が減るから程々にな。
どうしようか悩んだオレは、とりあえず、攻略が済んだダンジョンのダンジョンコアがある場所へ向かう。
その部屋に踏み入れた時だった。
一匹のスライムが目の前に現れる。
慌ててファリスさんがそいつをプチっとする。
すると宝箱が現れた。
それを開いたそこには――――――鈍色に輝く円盤が1枚入っていたのだった。
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