第28階層 アクレイシス・カーラードその2
「これが、イース・クライセスが求めていた味か……」
ある日、イース・クライセスが究極の小麦粉を持って来たと言うので、それを使って王宮の料理人にケーキを作らた。
一口食べてみただけで、その違いがはっきりと分かる。
これに比べれば今まで食べていたものはまるで泥だ。
イース・クライセスが顔を顰めていたのも良く分かる。
「しかし……ダンジョンコアを養分として作り出せるようになった、と言うのが良く分からない」
なぜ穀物の栽培にダンジョンコアが必要なのか。
というかどうやって使うの?
これ食べて大丈夫な奴?
そう聞いた時、ちょっと目を反らしていたのも気になる。
まっ、どんな物でも良いや、美味しいは正義だ!
「イース・クライセスからの要望はどういたしますか?」
「ケーキの作成方法かい? 良いじゃない別に、教えてあげれば?」
「料理人達にもプライドがありますよ」
なら、こういうのはどうだい。
新たな穀物素材及びその調理法と交換だと。
フッフッフ、私は知っているのだよ。
いつまでもバカな王子様じゃない。
なにせキャロウェイのファラ家は、君が勝手に作った私の派閥の一角だよ。
忘れてんの? 忘れていそうだな……
夜会でも散々自慢してたぞ、あのくそアマ。
てっきり今日はそっちを持って来るとばかり思っていたのに。
お米はいつ来るの? 早く持って来てよ!
まあ、これはこれでお米どころじゃないほど良い物だけどさ。
うまうま。
「メイド! お代わりを頼む!」
「申し訳ございません、先ほどので全て使いきってしまいました」
そう言いながら、机の上に重なっているお皿を呆れたような表情で見やる。
「…………ん、まあ、少々食いすぎたか、どうだね君も一切れ」
「皿でも舐めろと?」
うん、もう無かったね。
きれいに食べきってしまった。
「これまでの素材で良ければありますが、お持ちいたしましょうか?」
「なんで作っているの? もう要らないよ」
オノレ、イース・クライセス!
こんな物を食べさせてくれおって!
おかげで、これまでの物が食べられなくなったじゃないか!
「仕方ありません。捨てるのも勿体ありませんので、私共で処分しておきますね」
あっ、コイツ、それ目的で作るように言っていたな。
良いけどさ別に。
ほんと、うちの部下は碌なもんが居ないな!
「主が主ですからねえ」
「ソレどういう意味~」
「ああ、そうそう、穀物の大量摂取は太りやすいそうですので気を付けてくださいと言っておりましたよ」
そう言いながら、私のおなか周りを見やる。
…………まだ大丈夫だ、まだ焦る時期ではない。
「そう言い始めたらヤバいと言われていましたなあ」
「君は人の心が読めるのかね?」
「まあ、王子の考えてる事ですから」
「だから、どういう意味~」
運動しようかな……そういえば、クライセス家にはイース式スパルタ運動具なる物があると聞く。
外に出なくてもランニングが出来る道具や、特定の場所、そうお腹周りだけの筋肉を鍛えるもの。
確か……トレーニングマシンとか彼は言っていたか。
村の体育館とやらにも、それらしいものが大量にあった気がする。
よし、お米とトレーニングマシン!
この二つとケーキレシピを交換だ!
あとはそうだな……ダンジョンコアが欲しいそうだな。
「宝物庫は入室禁止にされましたよね」
「だから心を読まないでくれないかな」
なあに、宝物庫に入れなくとも幾らでも手段はある。
そう、宝物庫に入る前を狙えば良いのだ!
誰かダンジョンコアを納品に来ないかなあ。
そういや、東の方でダンジョンが攻略されたとか言っていたな。
「王子が情勢に興味を持って頂けるのはクライセス伯爵のおかげですな」
このまま良い調子で調教してくれませんかね、などと呟く。
君ぃ、聞こえているよ!
配下に調教される王子って、それもう国、乗っ取られている寸前だから。
「それもまた、有りではありませんかね」
意味深な瞳を私に向けてくる。
「…………無理だよ。彼は知らないから」
知っていたら、彼との関係はどうなったのだろうか。
もしかしたら……いや、身分的にありえないか。
どちらにしろ、今のままでも心地良い。
無理に、この関係を変える必要も無い。はずだ。
「私は王子の判断であれば、どこまでも着いていきまずぞ」
「そう言ってくれるのはありがたい。まあ、そう言ってくれるのも爺ぐらいだけどな」
イース・クライセス、もし彼が私と同じ立場だったら、どう行動しただろうか?
少なくとも、私のように不貞腐れて周りに害を振り撒いたりはしなかっただろう。
きっと突拍子もない事で解決していたかもしれない。
それこそ、ダンジョンコアがあれば何でも解決いたします。なんて言ってさ。
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