第21階層 ダンジョンへ続く道

「それで荷物はどこに運び込んだら良いんだ? あのデケェ建物か?」


 ウドゥが食堂兼体育館を指差す。

 まあ、地上にある建物はそんぐらいしかないからな。

 でも違うんですよ。


「ん? なんだこの屋根付きの大穴は?」


 オレはダンジョンへ続くリフトがある場所へウドゥ達を案内する。


「この穴の下にはダンジョンがあります」

「はあ……」

「お店の場所はそこになります」

「は?」


 いや、何言ってんのコイツ。みたいな顔で見られる。


「冗談……だよな? いや、コイツが冗談を言うはずが……」

「もちろん冗談などではありません」

「いやいや、無理だろぉ!? 連れて来た奴らは戦闘員じゃねえんだぞ!!」


「大丈夫です、ダンジョンにはモンスターが出現しない安全なエリアがあるでしょう。そこにショップエリアが作られているのです」


 また、何言ってんのコイツ。みたいな顔で見られる。


「いやまて、安全地帯まで直接穴を掘って上から移動すれば、出来ない事も……ないのか……?」


 そう言って考え込むウドゥ。


「え~と、大丈夫なんスかね? そんな所で商売やって人が来るっスか?」

「そぉねえ……仮にお誘いがあってもその筋の人ばかりというのも……」

「その心配はありませんよ、ほとんどの村人達はこのダンジョンに住んでいますから」


「「「は?」」」


 ウドゥ達の声がハモる。


「えっ、住んでんの、ココに?」

「住んでますねえ……」

「なんで? 態々ダンジョンに?」


 快適だからじゃないですか。

 住めば都とも言いますし。

 少なくとも、ここじゃ地上より安全なんですよ。


 などと言うと呆れたような顔をする。


「さすがはイース・クライセスと言った所か。まともな運営はしてねえとは思ったが、ここまで酷いとはなあ……」


 ただ一人、鳥の籠だった女性のサクラさんだけは、興味津々なのか穴の中を覗き込んでいる。

 なお、他の三人の女性は、もう帰りたさそうな表情だ。

 ま、百聞は一見にしかずとも言うし、降りてみれば考えも変わるだろう。


 オレはリフトを操作して、地下から移動させる。


 サクラさんは速攻乗り込んだのだが、他の四人は乗りたがらない。

 いや、ウドゥ、おめえさんまで尻込みしてどうする。

 最初に来たいと言ったのはそっちなんだぞ。


「こんなんだとは、さすがに思えねえわ」


 ぶつくさ言いながらも他の三人の女性を連れてリフトの上に乗る。


 するとサクラさんがやって来て、ジッとオレの手元を見つめる。

 何? 動かしてみたいの? どうぞ。

 なにやら、リフトの操作をやってみたそうなんで、操作方法を教える。


 籠の鳥だった割には活発なお方だ。

 だから脱走なんてやらかしたのかも知れないな。


 ウドゥはそんなオレ達を見てニヤニヤ笑っている。

 なんでアイツはあんな気持ち悪い顔でこっちを見るんだ?

 別に下心があってやっている訳じゃないぞ。


 リフトが下に到着すると同時『ようこそおいでくださいました』という、巨大なアニメキャラのスタンプでハーキャットさんがお出迎えする。


 なんで居るの君、隠れてろって言ったよね?

 まあ、伝わってなかったんだろうけど。

 見た目はこんなだが、相変わらず意思の疎通は出来ていない。


 最近はバージョンアップでもしたのか、円盤の上以外でも姿を現すようになってきた。


「なにコレ、モンスター?」

「やけに可愛いっスね」

「ちょっ、おい、危険じゃないのか!?」


 サクラさんがさっそく触ろうとして腕が突き抜けている。

 それ立体映像だから触れませんよ?

 しかし、得体のしれないモノなのに良く触れようとするな。


 ある意味、度胸があるのかもしれない。


 初めて外に出たのなら、怖いという感情も薄いのかもしれない。

 見る物、全てが新鮮だろうよ。

 まあ、ここは、誰が来ても新鮮だとは思うけど。


 サクラさんはハーキャットさんを色んな角度から覗き込む。

 ちょっとハーキャットさんが照れたようなモーションアクションを行う。

 ……サクラさんとなら仲良くやっていけそうですねえ。


 そのうち『こちらへどうぞって』アニメキャラのスタンプを出して、皆を誘導するハーキャットさん。

 歩くアクションモーションで移動をしている。

 ただ、あくまでモーションなので歩幅と移動距離があっていないが……まあ、それは仕方ない。


「おおおっ! なんだコレ!?」


 透明な壁の向こうのショップエリアを見てウドゥ達が驚いている。


「とりあえず、ここに立ってみてください」


 オレがそう言うとサッと自動ドアの前に立つサクラさん。

 ほんと好奇心旺盛だ。


「動いた!?」


 自動ドアの前に立つと同時、スライドした扉に驚いて飛び上がる。


「ほほぅ、自動で開くドアか……本店にも欲しいな……あいつらなら、何か考え付きそうだな。帰ったら伝えてみるか」

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