第17階層 プラント農場
ダンジョンの中は摩訶不思議空間。
地下なのに、まるで太陽が照っているように明るかったり、様々な植物が生えているエリアだってある。
そこで農業を始めました。なんて言う話は聞いた事は無いが、もし、モンスターが現れない安全エリアがあったとしたら。
出来るんじゃないだろうか、ダンジョン内農業。
また、ダンジョンに生えている植物を食用とした。なんて言う話も聞いた事が無いが、食って毒がある訳じゃなければ、食えるんじゃないだろうか?
なんせ、モンスターですら肉にして食ってんだ、植物だっていけるはず。
さらにそれが元々食用として用意されていた物であったとしたら。
この部屋にある米、大きく実った麦。
だけでなく、様々な植物が育っている。
この世界では見つけられなかった物までもがだ。
これはもう、育てるっきゃないでしょ。
プラント農業、良いですよね。
天候にも左右されないし、収穫時期も自由。
当然地下であっても問題なし。
ダンジョンの地面だから土地が痩せる事だって考える必要がない。
しかもだ、全て前世レベルの高品質の収穫物が期待できる。
爺さん婆さん待っててくれ、本物ってやつを食わしてやるゼ! もう薬膳料理などと言わせはしない!!
「放棄されたダンジョンですか?」
「ええ、少し離れていますがファラ家の領地には幾つかあるようですし、交渉役を頼みたいのですが」
オレは早速、王都の自宅に戻って来て、家宰のショルダンにそう伝える。
色々調べたところ、放棄ダンジョン自体は幾つもあるのだが、それが複数ある領地というのは限られる。
その中の一つがファラ家であった。
どうせ一個じゃすまないだろうし、一回の交渉で複数貰えるのならそれが良い。
ファラ家は穀物栽培で手を貸した事もあり、全く知らない間柄でもない。
長女のキャロウェイ嬢は上の兄上に懸想しているとも聞いた。
婚約話でもチラつかせれば話に飛びつく可能性あり。
あとはダンジョンの攻略だが……
「ボルヴェイン兄上は休みが取れないでしょうか?」
ボルヴェインは二番目の兄で脳筋傾向な人物である。
三歳の子供に稽古と称して、マジ殴りして来る様な危険なお方だ。
そんなものに付き合ってられないオレは興味を別にそらせないか頭を悩ませたものだ。
子供の頃から体を動かすのが好きで、大人達に交じって剣術の稽古をしている。
そして自分が出来るもんだから、弟であるオレにも強制してくる。
そこでオレは一計を案じ『他人と競い合って強くなる』のではなく『自己と向き合って強くなる』方向へ誘導してみる事に決めた。
そこで作ったのが、ペッペケペ~、トレーニングマシン~。
そう筋トレをして、自分の筋肉と向き合ってもらおうかと。
いいか皆、筋肉を自慢げに見せつけてくる迷惑な奴はラノベで良く居るが、それはマシな方なんだ。
見せつけて来るだけなら実害が少ない。
下手に腕力自慢で、模擬戦しようなんて言われたら、こっちが被害を受ける。
幸せそうに筋肉と話し合ってくれていれば、それで良いんだ。
後は適当に頷いておけば良い。
特に、前世のトレーニングマシンは進んでおり、一部の筋肉のみを鍛える事も可能であった。
定番のランニングマシン。
雨の日でもウォーキングが可能であり、持久力や心肺機能の強化が可能。
様々な種類があるストレングスマシン。
腹筋・大胸筋・広背筋・上腕三頭筋・三角筋・僧帽筋など、特定場所のみを鍛える事が可能。
バイク型のマシン。
疲れている時でも無理なく運動ができ、長時間の運動が可能。
ダンベルに代表されるプレス型マシン。
一度に多くの筋肉を鍛える事が可能で、効果も非常に高い。
さあ皆さんもスポーツジムに行って、理想の筋肉を身に着けましょう!
とまあ、そうこうして気づいたら無敵の人(物理)が出来上がっていた。
筋肉鍛えたら普通に強くもなる。
実践経験が乏しいとはいえ、この世界の住民、モンスター肉で知能低下している所為か、頭を使う戦法など使いやしねえ。
むしろ、多少なりとも穀物を食っている兄上の方がマシなぐらい。
ガチで組み合ったら、そら筋肉がある方が勝つわ。
今は騎士団に所属して無双を繰り広げているらしい。
ただ騎士団内部に、こいつを表に出しちゃダメだ、みたいな風潮があるらしく、実践経験自体は乏しい。
そんな兄上に実践経験積めるよ? なんて言って誘えば簡単に乗って来ると思える。
あの無敵の人(物理)が居たら、大抵のダンジョンは制覇出来るのではないだろうか?
騎士団で表に出しちゃダメってなっているのには気にかかるが、一人で突っ込ませる分には問題なかろう。
一応、安全をとって回復役と斥候役は入れるが戦闘はお任せで良い。
兄上で無理そうなら、さっさと諦めて帰って来てもらおう。
そんなダンジョンは多分、誰がやっても無理だろうし。
「回復役と斥候役の方は苦労されますでしょうなあ……」
そんなにひどいの今のあのお方?
「そうだ、いっその事、イース様も一緒にダンジョンへ潜られては」
おい家宰よ。
仮にも当主に向かってそんな危険な提案するのはどうなんだ?
大丈夫、オレは兄上を信じている。
……何かあったら騎士団に叩き返そう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます