第10階層

 でっきるかな、でっきるかな~、何ができるっかな~。ってなんだコレ?

 ダンジョンコアって丸いボールみたいのばかりだと思っていたんだけど、もらったのはどっしりとした円柱型。

 しかも中に得体の知れない黒いモノが渦巻いているように見える。


 コレ与えて大丈夫な奴か?

 うちのダンジョンが逆に取り込まれたりしないよな?


「なんか呪われていそうなんですが……」

「おい、倒すなよ? 倒れて壊れたら、中から何かが出てきそうな気がするぜ」

「そうですね、慎重に運ばないと……」


 揺れる馬車、いつもより慎重に運んだ所為で、帰って来るまで随分と日数がかかってしまった。


 村に着くとリフトが完成していて、地上から一気にハーキャットさんの場所まで降りる事が出来るようになっていた。

 良かった、コレもってダンジョン探索とか、やらずにすんだ。

 万が一、途中で壊れて、そこから新たなダンジョンとか出来たら目も当てられない。


 早速、リフトを使って下に降りてみると、ハーキャットさんが何やら拗ねたようなモーションアクションをしている。


「どうしましたか?」


「ひと月以上も放置していたから拗ねているみたいですよ」

「しょっちゅう、遠くを見るような仕草をしたキャラの吹き出しを頭の上に出してやしたぜ」

「最近は、餌持って来てもソッポを向かれるほど、機嫌が悪かったですぜ」


 まあまあ機嫌を直してくださいよ。


 王都からとっておきのお土産を買って来ましたから。

 ほらほら見てくださいよ、この黒光りする円柱。

 とっても禍々しいでしょ? ホントにコレ、大丈夫な代物?


 オレは貰って来たダンジョンコアをハーキャットさんの目の前に置いてみた。


 なんか頭にピコンとハテナマークが出る。

 ん? 別のダンジョンのコアは餌にならないのか?

 もしかしてこのダンジョンコアも『生きている』状態になっているのだろうか。


 暫くジッと見つめていたハーキャットさん、ポンと頭の上にビックリマークが表示される。


 何かを思いついた模様。

 ダンジョンコアの前で大きく足を振り上げるハーキャットさん。

 そのままシュート!


 吹っ飛んでいく円柱状の物体。


 ちょっ、何すんのハーキャットさん!

 ソレ、壊れたらヤバい奴だから!

 それが壁に当たった瞬間、壊れる! と思ったら、壁の中に吸い込まれるようにして消えていく。


 暫く唖然と眺めていると、突如、まるで空間が歪んだかの様にして壁が消えて無くなる。

 そして、その先には、一直線に伸びる通路が出来上がっていた。

 オレは近くに行き、通路の先を覗き込む。


 硬質で平らな地面、まるで地下鉄のようなドーム状の天井。

 さらに、中央には大きな窪みが出来ており、凹型の通路がどこまでも伸びていた。

 この方角……もしかして王都か?


 隣に立っているハーキャットさんを見やる。

 ウンウンと頷くモーションアクションをしたかと思うと、頭の上にポッポーと言う擬音を発して走る機関車のスタンプが表示される。

 なるほど……この真ん中の凹みに線路を引いて列車を通せば良いという訳か。


 王都までは確かに遠い、馬車で片道、一週間はかかる。


 だがそれは、間に険しい山々があるからだ。

 直線距離にすれば…………前世で言えば、東京・大阪間ぐらいの距離だろう。

 それでも歩くとなると一月近くはかかるだろうが、列車を通せば数時間で収まる。


 実は地上でも、トンネルを掘って線路を通せないか色々調査をしていたんだ。


 線路に使う鋼材も少しずつ準備していた。

 それをこっちへ持ってくれば…………

 そうやって考え込みながら通路を調査していると、奥の方にポツンと明かりが灯る。


 なんだろな? と思っていたら、それがどんどん大きくなっていき、何かがこっちへ迫って来てる。


「……!? 皆さん急いで窪地から離れてください!」


 そう言いながらオレも飛び上がって窪地から這い上がる。

 かじろうて全員が這い上がった頃、それはやって来た。

 それは巨大なモンスター、凶悪そうな面にどこか愛嬌があり、胴体は四角い箱が細長く続き、ところどころに透明な窓がある。


 そう、前世のトがつく猫のバス、それの列車版のような存在であった。


 オイオイオイ……ええんか、コレ!?

 と言うか入口がねえぞ?

 胴体に窓はあるものの、出入り口が見当たらない。


 グルリと回って先頭の顔がある場所まで来ると、パカリと大きな口を開く。


 …………まさか、ここからこの中に入れと?

 口の中からは直接、車内が見える。

 コイツに乗り込むには、この口から入るしかない。


「ちょっ、ちょっとイース様!?」

「危ないんじゃないっすか!」

「おい、止めろ!」


 と、護衛の忠告も聞かず、そこへ乗り込む。

 慌てて護衛達もオレに続いて来る。

 全員が乗り込んだ後、口が閉じられてしまう。


 その次の瞬間、フワリと浮き上がるような感触がする。


 オレは慌てて窓口に行き、下の方を見やる。

 まさかコレ……浮いて…………いる!?

 機関車? そんなちゃちなモンじゃねえ、コレはそう、前世でも最新鋭だった機体、リニアモーターカーじゃねえかあ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る