第5階層
そうして集められた幾つかの品。
まずはモンスター、小柄なネズミ型モンスターを捕らえてきて檻に入れている。
なお、この3Dキャラクターにはハーキャットと名前を付けた。
前世でこのキャラにつけていた名前だ。
そのハーキャットさんの目の前に檻に入っているモンスターを置く。
――ブッブー!
という音と共に、×点の仕草をして、頭の上に『ダメ絶対』と言っているアニメキャラのスタンプがでる。
芸が細かいな。
オレは大男のアイサムに目配せをする。
アイサムはプチっと檻の中に入っていたモンスターをナイフで貫く。
ムムッと唸っているアニメキャラのスタンプを出した後、
――ピンポン! ピンポン!
という音と共に、腕で〇を表現する。
どうやら、生きている状態ではダメという訳らしい。
ならばこれはどうだ?
オレはファリスさんに目配せする。
するとファリスさんは地面に箱を置き、蓋を開ける。
そこには、宝石や魔石などが詰まっていた。
ハーキャットは宝石の方へ指をさすモーションを行うと、頭の上に『コレ要らない』と言ったアニメスタンプを表示させる。
次に魔石の方へ指をさし『これいっぱい欲しい』と言ったアニメスタンプを出す。
やはりダンジョンだけあって、魔石には興味を惹くか。
宝石に興味を示さないのは意外……という事も無いか。
錬金術の専門家であるダンジョンなら、石から宝石を作り出すなんて簡単な事。
自分で作れるような物を欲しがる事も無い理由だ。
しかし魔石か……魔石の親玉であるダンジョンコアを与えればどうなるだろうか?
共食いになったりしないだろうか?
その後も様々な品を目の前に置いて反応を見てみる。
生きているモンスターや虫、魚などは軒並みアウト。
新鮮な野菜も駄目な様だ。
要は、生きていると判定される状態では吸収出来ないと言う事だろう。
逆に無機物、モンスターの死体や干し草などの干からびだ植物、鉱石や装飾品、果てはゴミや排泄物まで、全て吸収可能みたいだ。
特に、魔法の品には興味を示した。
魔石は当然として、魔道具にも二重丸のアニメキャラのスタンプが付いた。
武器防具や農具等、人の手が加わった加工品にも興味を示し、果ては絵画などにもグッドサインを出す。宝石も加工品ならオッケーの様だ。
まとめると、生物はアウト、無機物はどれも良し。
特に好物は魔石。
それと、人の手で加工されている物。
その一環で、ただの死体より、調理済みの料理も好んでいるようだ。
「魔石はモンスターを狩ってりゃ勝手に溜まりますが、武器防具などの加工品はどっかで買って来ないといけないですね」
「モンスター狩りなら任しおいてくだせえ、肉だって食いきれなくて処分してるもんもありやすし」
「態々、焼いて調理する必要がありますかね? そのまま持って来ても良い様な気もしますが」
そこは、なるベく人の手を介したモノを与えるのが良いだろう。要は餌付けだな。
猛獣だって子供の頃から餌付けしてりゃ人に懐く。
そんな懐いた動物は人の為に命だって掛ける。
もしかしたら、このダンジョンが人の守護者になって貰える可能性だってある。
「そんなにうまく行きますかねえ」
「何事も経験です。始めない限り、結果は出ません」
「そりゃ、そうっすけどねえ」
まあ、暫くは村で余ったモノをここに持って来るか。
人手も増やしたいが、こんな所へ移住したい奴も居ないからなあ。
せめてもっと女性を増やさないと。
元犯罪者ばかりで圧倒的な男性社会。子供だって当然生まれないし、このままじゃ少子高齢化まっしぐら。
前に傾きかけた娼館をまるごと買い取って移転させた事があるが、同じような状況はなかなか無い。
死ぬよりマシという状況じゃなければ、このような場所に来たがらない。
地下に居住を移した事とにより、モンスター襲撃による犠牲者はほとんど出なくなったが、住環境が良いとはお世辞にも言えない。
オレがそうやって悩んでいると、なにやら上からドサドサと物が落ちて来た。
なにごとぉ?
目の前のハーキャットさんがドヤ顔をして上を指さすモーションアクションをしている。
上を見てみると天井に穴が開いていた。
えっ、なんで?
つかこの落ちて来たブツ、オレの部屋にあった家具じゃねえか!
えっ、もしかしてこの部屋、オレが寝ている真下にあったの?
なんて所に設置してやがるんだよ!
大丈夫かコレ?
なんか吸い取られてやしないだろうな?
せっかく思い出してきた前世の記憶、また無くなってやしないだろうな?
というかおめえさん、なんで天井に穴開けてドヤ顔なんだよ。
するとハーキャットの頭の上に、何かを運んでいるアニメキャラのスタンプが表示される。
なるほど、この穴から餌を落とせって事か?
どうやらオレが運搬方法について悩んでいると勘違いした模様。
とはいえただの穴ではなあ。
リフトでも付ければ良いか?
王都にでも行って、外注して来るか。
どうせならここに移住してくれそうな職人さんでも居てくれりゃあなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます