第8話 今日のことを話してみた

「ってなことがあったんだよ」

 その日、食後のお茶を飲みながら俺は昼間の鷹人との会話をつばめに話した。

「………………」

 食事の後片付けをしているから、彼女の背中を見ながら話をしている。

 一向に彼女からの反応がない。

「あれ?聞いてる?」

「聞いてるわよ」

 洗い物が終わったところでつばめは俺の正面に座った。

正面に座った彼女は頬づえをつきながらこちらを見る。

 何か言いたそうだが、彼女の口は動かない。

「………………」

「なんだよ」

「はあ……………」

 そしてため息をつかれた。

「なんでため息をついたんだ?」

「あんたが隠し事へたくそなのは知ってるけど、高校生にもなっても上手に誤魔化すことができないなんて…………はあ」

「一応俺主人なんですけど…………………」

 主人なのにメイドに説教されちゃったよ。

 またため息つかれちゃったし。

「バレてないんでしょうね……?」

「バレてはないと思うぞと」

 変な目で見られるだろ。主に俺が。

「本当に心配でならないわよ」

「だから大丈夫だって」

「それが心配でならないのよ」

「もう少し言動に出さない様にしなさい」

「野球やってるんだから表情には出さないようにはできるぞ」

「それとこれとは違う」

「そんなことないだろ」

「あんた、今日提出の課題はちゃんと出した?」

「きょ、今日の課題?もちろん出したさ。何を当たり前のことをいってるんだよ」

 つばめが俺の顔を指さした。

「な、なんだよ」

「それよそれ」

「それ?」

「今、私の発言にたいしてあんた今よそ見したでしょ。それが答えよ」

「よそ見?してた…………?」

「自分は気が付いていないかもしれないけど、傍から見れば目をそらしているのがまるわかり」

「マジ………?」

「マジよ。マジ」

「じゃあバレてるかも」

「だから心配してるのよ」

「まあ、あなたの友達もそこまで賢そうじゃいから大丈夫だとは思うけど」

 鷹人、お前つばめから賢くないって言われちゃったぞ。

「そもそもおばさんが作った体にするなら褒めない方がよかったんじゃない?思春期の男の子が母親のお弁当を褒めるなんてことしないと思うわよ」

「それを言われればそうなんだけど」

「何よ」

「いや、つばめが作ってくれた弁当を褒められたから思わずそうだと言っちゃってな」

「ふにゅ⁉」

 なんな変な声が出たな。

「ななななななななないきなり何を言い出すのよ!」

「何言いだすって。事実なわけだし」

 自分が美味しいと思っているお弁当を他人が褒めてきて、違うなんてこと言う奴はいない。それに事実として美味しいし、見栄えもいいし。否定をする理由はない。恥ずかしがって否定をするようなこともないし。

「だからってその………」

 なんで動揺しているんだ?俺別に変なこと言ってない。ただつばめのお弁当がおいしいって言っただけなのに。

「もしして…………照れてるのか?」


 ごん‼


 つばめの拳が俺の頭に降り注いだ。

「い、いたい…‥………」

 たった一発だというのに頭に振動が響く。たんこぶできてそうだ。

「次からは気をつけなさい。次は一発じゃすまないから」

「あのだから俺一応主人なんですけど……………」

 というか褒めたのに照れ隠しでげんこつされるって理不尽すぎないか。

「主人であるけど同級生だし、幼馴染よ」

「それはそうですな…………」

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幼馴染がツンデレメイドとして俺の家で働くことになった件 珈琲カップ @kakipi1835

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