第41話 後悔

 交流を深めるためのバーベキューは、白峰と気まずくなった関係だけを残して終わってしまった。


 そんなことを数日経った今、俺はコンシェルジュの店内でひしひしと痛感しているところだ。


「そろそろ話しかけないとまずいよなぁ……」


 レジカウンターに立ちながら思わずそんな独り言が漏れてしまう。

 眉間に皺を寄せら自分の視線の先に映るのは、先ほどから無言で店内の掃除をしている白峰の姿だ。


 バーベキューの日に白峰を怒らせてしまってから、彼女とはまだまともに話しができていない。


 お店では業務的な話しはするものの、それ意外の会話はマジで皆無。勇気を振り絞って学校で声をかけてみたらみたで、ものすごい形相で睨まれてしまったので俺は恐怖のあまりその場からすぐに撤退してしまったという始末だ。


 これは一体どうしたらいいものかと頭を悩ませていたら、誰かが階段を降りてくる足音が聞こえてきた。


「翔太、今日のお客さんの入りはどんな感じだ?」


 そんな言葉と共に現れたのは、いつもと変わらぬニコニコとした笑顔を浮かべている親父だった。


「まあ、ぼちぼちな感じだな」


「ぼちぼちか。そりゃあ穏やかだな」


 そう言って呑気に笑う親父のことを見て、俺は呆れてため息を吐く。

 どれだけお店が穏やかであろうと、白峰との問題が解決しない限り俺の心が落ち着くことはない。

 黙ったままそんなことを考えていると、親父が再び口を開いた。


「それで、白峰ちゃんとは最近どうなんだ?」


「……」


 急に痛いところを突かれてしまい、俺は返す言葉を喉の奥に詰まらせる。

 どうなんだと聞いてくる時点で、おそらく親父は俺と白峰の仲が微妙になっていることに気付いているのだろう。

 まあさすがの茜からも、「やっとケンカして離れる気になったん?」と意味不明なことを言われたぐらいだからな。


 ってか離れる気って何だよ、と頭の中で幼なじみの発言にツッコミを返していた俺だったが、今は親父の言葉に返事をすることに専念する。


「どうって言われても……いつも通りだよ」


 あえて平然とした口調で俺はそんな言葉を言った。

 白峰との関係の悪化がバレていると気づかれていても、親父相手に素直にそれを認めてしまうのはなんだか癪だったからだ。


 するとそんな俺の考えもお見通しなのか、親父がやれやれといった具合に呆れた笑みを浮かべる。そして、どこか諭すような口調で今度は言う。


「明日、父さんと一緒にお客さんの家に行ってみるか」

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