君は嘘をついた。

飯塚ヒロアキ

第1話

――――君は僕に嘘をついた。



 君の嘘がどんな意味だったのか、理解した時にはもう遅かった。

 僕と君は毎日のように会っていた。

 あの時、僕たちはお互いに依存していたんだ。

 君がいるからこそ、明日も頑張ろうってなれたんだよ。

 毎日、君にメッセージを送った。

 既読がついた時の嬉しさと、君の返信がとても楽しかった。

 仕事終わり、夜遅くに二人でデートしたりもした。

 それが、楽しくて、楽しくて仕方がない毎日だった。

 でも、ある日を境に、君は忙しいと僕を避けるようになった。

 友達と遊んでいないのに、友達と遊ぶって嘘をつく。

 好きでもないのに『好き』って嘘をつく。

 君の嘘にはもう慣れていたけれど、今日ばかりは許せない。

 だって、今日は君と初めて出会った日。

 公園で君の自転車が壊れて、僕が自分の自転車を貸した大切な日だったんだ。

 あの日からずっと一緒だった。

 二人で帰る道、笑い合いながら語った。

 これからも一緒にいるんだと思っていた。

 でも、違った。

 君とはもう終わりなんだ、と悟った。




 大切な日、公園のベンチで僕は君が来るのを待っていた。

 そんな中、スマホに着信が入る。

 君のお母さんからだった。

 すすり泣く声が聞こえる。

 震える声で、病院に来てほしいと言われた。

 何が何だか訳も分からず、僕はタクシーを使って、病院へと駆け込んだ。

 君がいたのは病院の一室。

 ドアを思いっきり開けるとそこには、医者や看護師さんたちが大勢いた。

 君のお母さんが僕に気が付き僕の腕を掴んで、君の元に連れて行く。


「カナちゃん……リュウジくんに最後に会いたいって……でも、間に合わなかった……」


 僕は理解が出来なかった。

 今、視線の先にいるのが、僕の大好きだったカナちゃんだとは……。

 信じられるはずがなかった。

 何が起きていたのか、後から聞くと君は、大きな病気になっていた。

 薬の副作用で、変わり果てていく自分の姿を見られたくないからと僕に嘘をつき、仕事が忙しいと騙していたんだ。

 あんなに痩せ細って、髪も抜け落ちていたなんて知らなかった。





「……君は嘘をついた。僕に大きな嘘をついたんだ」


 どんな姿になっても、僕は君のことが好きだ。 

 どんなに変わり果てても、僕は君のことが一番好きなんだ。

 君が死んでしまったことが受け入れられなくて、ずっと現実逃避をしていた。 

 だって、信じられないじゃないか。

 電話越しで聞く君の声は元気そうだったんだ。 

 でも、今思えば、あの声は少しおかしかった。苦しかったんだ、辛かったんだな、って。

 僕に心配かけないように嘘をついてくれたんだ。

 君は僕の知らないところで頑張っていたんだ。

 僕は君の分まで頑張って生きる。



 生きてみせる。 

 大丈夫だよ。

 頑張れるよ。


「僕は幸せ者だね。大好きだよ。ずっと。ずっと」


――――完

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君は嘘をついた。 飯塚ヒロアキ @iiduka21

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