第5話 大正時代に来た理由
それから、私達は文芸部の部室を借りて帝都の地図を広げる。この文芸部は天翔虎女子塾の最大組織で校内の情報が入り安いのだ。
地図上に羽根の目撃情報を並べていくと。目白に集中しているのが判る。天使の羽根はその輝きから人々の支えになり、その心に刻まれるので目撃情報として残るのだ。
「休日に目白に行ってみようよ」
私の提案に麻紀さんは頷く。
「この小さな池が怪しい、ここを目的地に設定する」
麻紀さんは帝都の地図に小さく書かれた目白の池にピンを挿す。
でも、何だろう?この気持ちは……。
簡単に言えば胸騒ぎだ。この大正時代の異世界に来てから感じていたモノが強くなっている。イチに出会って、羽根を探す事になり、私の心は強く唸っていた。
それはお姉様である麻紀さんとの別れの予感であった。
その日の夜。
私は眠れぬ夜を過ごしていた。元の時代に居たら、ここで麻紀さんとメッセージ交換をして、心を落ち着かせるはずだ。スマホ無しの生活、少し不便に感じるな。
トントン。
その時である、自室のドアを叩く音が聞こえる。どうやら来客者だ。
「川菜?起きている?」
イチか……私は返事を返してイチを向かい入れる。私はイチを椅子に座らせて話しを聞く事にした。
「川菜、謝る事がある。本当は天使をクビになって地上に落下した」
!?
「私、要らない子、天使の羽根を見つけても浮遊島に帰れるかわからない」
ここは少し答えを考えてから。イチの謝意に返事を返す事にした。
「大丈夫だ、イチはきっと必要とされるはずだ」
その言葉に泣き始めるイチであった。その後、私は部屋まで一緒に行き、イチに静かに休む様に言う。自室に戻るとベッドに横になり。イチの事を考える。
天使をクビにか……。
そして、休日。
三人で目白に向かっていた。結局、イチが天使をクビになった事を麻紀さんに話す事が出来ないでいた。
「どうした、二人とも暗いな」
……。
ここはイチの事を話そう。私が麻紀さんに話そうした瞬間にイチが服のすそを引っ張る。イチは無言で首を横に振っていた。私はイチに向かって頷き何事も無かった事にする。
そんな事をしていると目白に着き。問題の池を探す。住宅地から林を見つけるとその中を進む。
すると、綺麗な池が現れる。
「ここが天使の御加護の多いとされる池か……」
麻紀さんが呟くと池の中心から光が上がる。
それは天使の羽根であった。私はその光を見て鼓動が大きくなる。
「私が見に行く」
そう言うと水面を歩き出す。私の靴底は水面に波紋が広がり歩く事が出来た。
水面を歩くと言う行為は不思議な気分であった。
そして、池の中心にある光の元へとたどり着く。
私は空中に浮かび輝く白い羽根に触れると。光の中に包まれる。気が付くとそこは浮遊島の山の上であった。
うわー。帝都が下に見える。
すると、三人の老人が現れる。
「君は選ばれたのだ。異世界からこの世界に召喚されて、天使として選ばれたのだ。さあ、是非、天使として働いてくれないか?」
むむむむむ、イチをクビにして私が天使!?
「イチをクビにして私に天使になれだと、何故、イチではダメなのだ?」
私は三人の老人に尋ねる。
「彼女は罪人にまで御加護を与えたいと言ったからだ」
くっ、難しい問題だ。罪人も人である事には違いないが……しかし……。
ここは……。
「てへ、私バカだから罪人に御加護とか解らない。でも、イチは天使として立派な存在だと思うの」
「それは、天使になる事を拒否すると言う事か?」
「私には向いてないなてね、イチと言う存在が居るなら、私の出番は無しで」
「そこまで言うならイチを天使に戻そう。ただし、君は元の世界に帰る事になる」
……。
何のとりえも無い、普通の女子高生に戻るのか。お屋敷に住んで麻紀お姉様との生活が消えるのは正直残念だ。
「その顔、迷っているのか。よかろう、三日間、考える時間を与えよう」
―――……。
その三人の老人の言葉と共に再び光に包まれる。
気が付くと麻紀さんの腕の中で目覚めるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます