第3話 落下天使を拾う
それは天翔虎女子塾の帰り道の事であった。
♪~♪~♪
聴こえる、ハーモニカの音だ。私は足を止めると。胸がドキドキする。こんな気持ち初めてだ。
「お嬢様!?」
メイドの小恵子の静止を振り切り、私は吸い込まれる様に路地裏に向かう。そこに居たのはハーモニカを吹く、汚い恰好の少女であった。
「君は?」
「私は『落下天使』かつて天使として浮遊島に住んでいた存在……」
「それで、何故、私を選んだ?それから名前を聞いておこう」
異世界から転生した私はこの落下天使に選ばれた気がした。だから、名前を聞くことにした。
落下天使は再びハーモニカを吹き始める。決して私を無視した訳ではない。
これは物事には順序が必要だと、お互いに暗黙の了解を得るのであった。
そして、ハーモニカの演奏が終わると。
「私の名前は『イチ』貴女は私を助けてくれる?」
「あぁ、幸い、お金には困っていない」
「ありがと……」
メイドの小恵子は呆れた様子でこちらを見ている。
「問題ないわね、小恵子?」
「はい、お嬢様」
こうして、落下天使のイチと一緒に暮らす事になった。
***
空を見上げると浮遊島が漂っている。イチはあの浮遊島から落下した天使だと言う。擦り切れた天使の衣装から大正時代の女子の恰好に着替える。天翔虎女子塾に通う事になったのだ。
その後、登校時間に校門で立つ麻紀さんに挨拶をする。
「おはようございます」
「おう、おはよう、その女子は知り合いか?」
「はい……」
どうしよう、落下天使だと信じてくれるだろうか?
そもそも、イチは本当に落下天使なのか?証明するモノは何もない。緑色に輝く瞳が印象的なだけだ。
「イチ、挨拶をしなさい」
「は、はい、イチです、よろしく」
「了解した。よろしくな」
気まずそうなイチを連れて、私達は教室に向かう事にした。この落下天使はコミ障害だ。しかし、私を希望の光だと思っているのは確かだ。
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