第10話 41番セクター
惑星クブアが転移した42
いつかブラック・ローズを含めユニティブを複数搭載した戦艦で艦隊を創設したいという野望のために、毎日のように愛船ロックシェルで採掘をしていましたがこの所は頭打ちです。
赤字にはなりませんが、加工をしない一次産業は相場によって著しく収入が上下します。際限なく掘り尽くせば利益は出ますが、コンテナに収まりきれませんし同業者の恨みに見合った利益は得られないでしょう。
『ピピ』
「私は恥ずかしいので、止めて欲しいです」
『ピピッ!』
船内に流れる「鋼の星」を止めたい私と機体の保護の為にブラック・ローズから降りられず、他に楽しみのないタマ。どちらの要望が叶えられるかは、論議するまでもない。
「ともかく…次の目標は採掘と加工の複合船です」
『ピ?』
「ある物を取ってくる一次産業だけでは、大した利益になりません。ならばソレを加工する二次産業へと進み、より多くの利益を産み出すのです!」
採掘だけ加工だけで事業が成り立つ程に、膨大な生産と消費を繰り返している。
一次産業が未加工の素材を回収する産業で、二次産業は一次産業で生産した素材を様々な製品に加工できる様に精製する産業に当たります。私の仕事で言えば採掘が一次産業で、採掘した岩石を含まれる成分別にインゴットに加工するのが二次産業となります。そしてインゴットを船の装甲に加工するのが三次産業となります。ちなみに四次産業はいわゆるエネルギー産業で、五次産業はAIなどのシステム又はプログラム産業であり、六次産業が分子産業というコスト度外視の分子操作技術で分子を結合させて素材を生み出します。
「船は乗り換えになりますが…いえ、増築も可能ですか?」
考えて見れば、船体の大部分がコンテナを収納する保管庫になっている。100tを超える重量に耐える頑丈な保管庫ならば、内部に加工設備を備えるのは問題なさそうに思える。
「一応、設計を考えてみましょうか。…結果的に安く済みそうですし」
『ピピ!』
「ああ、っと…タマ助かりました。熱源なし…
考え事をしていた事で注意力が散漫になっていて、一抱えのある金属の塊が進行方向に浮かんでいることに気が付かなかった。
タマの呼び掛けで気が付いたから、なんとかシールドの展開が間に合いました。もし間に合わなかったとしたら、木っ端微塵の大爆発です。
船の部品が集まり溶け合い一塊になった金属塊は、その形になってから短くない時間が経過していたようで、船が感知できる程度の熱が残っていませんでした。
「これもインゴットにしたら、良いお金になるんでしょうけど」
宇宙ではこういったデブリに良く遭遇します。ほぼ全ての宙域で宙賊が現れるのも原因の一つではありますが、事故や故障で爆散する船は珍しい話ではないのです。点検を怠って燃料が船内に漏れたり、エンジンが停止して打ち捨てられた船等のデブリ発生原因は増え続ける一方です。
「せめて部品が無事なら売り物に…いえ、人の不幸を望むような言動は控えるべきですね」
『ピピピ』
「はい、行きましょう。目的の一番コロニーまでは後13時間。…ワープドライブが欲しいです」
コロニーの番号は製作された順にナンバリングされます。そのため一番コロニーとはこの宙賊で初めて造られたコロニーであり、そのコロニーを中心に41番セクターは発展しました。つまりは現宙域の中心地だと言えます。
42番セクター8番コロニーも十分に発展した場所でしたが、これから向う41番セクター1番コロニーは造船に力を入れていて、資源が高く売れて船が安く買える私にとって、なんともありがたいコロニーです。
セクター全体が安定すると生産に注力するようになるのですが、1番コロニーは宇宙船の建造を担う事になったのでしょう。
「はぁ、虚空を眺めるのは退屈です。……箱型…長方形ですから両サイドに……」
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