第6話 Try&Error
焦燥の初陣から経過時間的には、数日。私は地下倉庫全体をセーフハウスに改築していました。壁と天井がパッチワーカー製の合金で覆われ、まだ使える部品を組み合わせて、いくつかの倉庫棚を修理して荷物置き場を確保しました。これで少しは物資の貯蔵が楽になります。
私が最初に目覚めた小部屋は、比較的に状態の良い部品が保管されています。その内エネルギーを生産、確保する設備を配置して運用していく予定です。現在は恒星発電機一台と、地下倉庫で発見した
フィールドワーク社が屋外用品を手掛けていたおかげで、椅子や卓に困ることはなさそうです。折畳式しかないので、家具の背が低さは難点ですね。私の背が低いせいで、高さが極端に合わないまで行かないのがなんともモヤモヤします。
倉庫の収穫と言えば、私の様なガイドノイドどころか、交換部品の様な物は見当たりませんでした。精々が破れた
「…私が目覚めてから経過した時間は、もう少しで百時間に到達します。ですが…なぜ……なぜ恒星が動かないのでしょうか…?」
これまでを振り返り現実逃避をしてはみましたが、残念ながら現実と向き合う時間のようです。敗因は、産まれてからの期間が短すぎて振り返る内容が直ぐに弾切れを起こしたことでしょうか。弾詰まりが起きないのは結構ですが、些か弾倉が軽すぎます。
恒星の光が動かず変化しないと言うことは、
「周辺の機材をお借りしようかと考えていましたが、それだけでは宇宙に出るのも難しそうですし…」
もともと町中の物資や設備だけで、単独で宇宙に到達できる宇宙船を作れるかは微妙なところです。私には宇宙船の設計図が記録されていますが、これは緊急時の修理に使用する手引書ですし、現実には部品の製作から初めなくてはなりません。宇宙に出た後の事も考えますと、いったい何十年の計画になるのか。
「まずは情報を求める…ですね。施設が生きているとは限りませんが、図書館か役場を探しましょう。運良く数日前に
現状を知らず好奇心にかられて、美味しそうなエネルギー源を探していた生後十数分の私。街中に小さなエネルギー反応を感知し拾い上げたのは、ホロスコープという映像を記録するオモチャでした。一度映像を記録してしまうと、上書きもできない使い捨ての記録媒体なのですが。再生される映像が立体映像なうえ、生産に必要なキャッシュが安く、何より安く、とにかく安かったのでそれはそれは大量に作られた。
試しに再生してみると「我ら人類は……」から始まる他星移住計画が流れ始め、歴史を振り返り、現政府を讃える声で映像が消えた。
映し出された映像から、政府が配ったものをゴミとしてその辺りに捨てた物だったのでしょう。安いホロスコープを使う辺り、あまり民衆は大事にされていなかったのかもしれません。
情報を求めて図書館に向かう道中、予想していたよりも多い、正常に行動できていないロボットとの遭遇を慎重に避けて行きます。真横をすれ違ったのが、センサーの付けられていない多脚型で助かりました。あんな物に乗って移動するなんて、人類は変わっています。
図書館に付いて、演算装置から情報を吸い出した私は、あまりの事態に「人類のバカヤロー!」と心のままに叫ぶのでした。
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