第4話 目標を定めよう
エンジン開発の老舗ヤマシモーターが送り出したハイパワーエンジン「ブルモド参」。通常一般的な小型船に使われるエンジンの出力は
「え…、は、はぁ?」
見事に工具を発掘した後、発電機の配線から解放された私はそれまで手が届かなかった別のゴミ山を発掘していた。やはりろくな成果はなく、鉄屑をパッチワーカーの胃袋に詰め込み。山が平地に均されて、そろそろ床が見える段階に入ったのだが、山の底から周りの床の素材とは明らかに別の物で作られたフロアハッチが姿を表した。
地下倉庫の更に地下。メンテナンスハッチかそれとも違法な品でも隠しているのか。興味の赴くままに梯子を降りてみたら、厳重に梱包が施されているコンテナと船の装甲板らしきものがいくつか。
不審に思いながらもコンテナを開放。そこにはマッチョな小型エンジンが眠っていた訳である。
「厳重な梱包のおかげで、傷一つない完品。モロモロ接続したら普通に動作しそうな面構え……
身体が機械の私も自認上は生物で、老化に当たる劣化も部品交換で克服できてしまう以上は、長い命の旅は確約されたようなものなのです。達成までどれだけの時間が必要となるのか、退屈を感じるのはかなり先になりそうです。
エンジンと一緒に見つかった装甲板は、宇宙船を建造するのには、とてもとっても足りない所ですが、
「そうと決まれば、行動あるのみです!」
私は高らかに宣言するとエンジンを梱包し直し、装甲板を少しづつ運び出した。装甲板にしてはやや薄く、また抱えて持ち上げられる程度の大きさでしたが、必要な形状に切り出して補修する板材の一種なのかもしれません。
「運び出した装甲板を小部屋の内側に貼り付けて、補強していきましょうかね。さっそく拾った工具の出番です」
小部屋の壁と装甲板の位置を合わせてレーザーカッターで小さな穴を開けてゆく。ビス止めの要領でパッチワーカーのアツアツ金属を流し込み、瞬間冷却で固定。四角い部屋の角に合うように切りそろえて、ファイアーテクスチャで溶接する。周囲に酸素があれば、燃料がいらない低燃費なニクイ奴である。
天井を貫く大穴は発電パネルの問題があるので、配置にはかなり気を使った。透明な板材でもあれば楽ができたかもしれないけど、あいにくとそんな便利な素材が転がっているはずも無く、結局は天井の穴は、カットした装甲板を滑らせて開閉する天窓の様な形になった。開け放った時に装甲板が落下しないように、パッチワーカーで作ったごちゃ混ぜ合金を液状から苦心した。パッチワーカーがあれば単純な形状に限り、どんな金属部品も製造できる。
一通りの補強が終わり、小部屋の中を見渡す。
目覚めた当初から部屋の中に散乱していた廃材は綺麗になくなり、四方の壁は鈍色の装甲板が張り付けられている。元々の壁が崩れた場合が不安だったので、パッチワーカー制の梁が支えている。部屋にある設備は、恒星発電機と工具数点という物足りなさを感じさせる。発電に必要な発電パネルの為に作った開閉式の天窓が、不格好ながら手作り感な味わいをそこはかとなく出している。エンジンが置いてある下の隠し部屋は、エンジン等の貴重品をしまう場所として利用する事にする。気分は宝物庫だ。
「エネルギーの補給が終わり次第、探索に出かけましょ。取り急ぎ、お隣の部屋から」
ファイアーテクスチャは火災が怖くて、とても室内での戦闘には使えない。少し遠くまで届くプラズマの刃、レーザーカッターだけが現状の私が頼れる唯一の武器だ。
「偵察機も出さず進むのは無謀ですが、そんな贅沢が許される状況だはありませんものね」
レーザーカッターを子供っぽく拳銃の様に構えると、小部屋のドアを音を立てないように慎重に開いた。
「……」
私は周囲を確認しながら、慎重に進んだ。出口の周辺に捨てた、天井の瓦礫と思われる廃材を尻目に暗い倉庫を歩いた。
一度は外に出るために通った通路だ。あの時は危険がある可能性など考慮すらしなかった。ただ外を見たかった。進もう今日の目標は、倉庫の安全を確認することだから。
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