時をかける探偵
第17話 問題編
――不運というものは重なるものである。
とあるパーティ会場のホテルで起きた盗難事件に巻き込まれた俺は、どういうわけか容疑者にされてしまい、危うく警察に連行されそうになったところを名探偵・
その日は俺が密かに推しているアイドルグループ『
……そんなことに割いている時間は俺にはないというのに。
しかも、そんな大事な日に限って腕時計をしてこなかった痛恨のミス。スマホは充電切れで、モバイルバッテリーも持参していなかった。これでは時間を確認できない。
「小林、今何時だ?」
「……それは日本時間か? それともイギリス、ロンドンの時間か?」
「日本の時間に決まってるだろ!! 何で俺がロンドンの時間を訊くんだよ!? 今はそんなつまらないボケいらないんだよ!!」
「それなら自分の時計を見ればいいだろう」
「その時計が手元にないからお前に訊いてるんだろうが!!」
「ふん」
小林はそっぽを向きながらも、左手に装着した腕時計の文字盤を俺に見せてくれた。
時刻は午後8時14分。急いでタクシー乗り場へ向かえば、午後9時の放送開始には何とか合うだろう。
「悪い小林、急用ができた。後のことは任せたぞ!!」
俺はそう言ってホテルを抜け出すと、タクシー乗り場へ急いだ。
タクシーに乗り込んで暫くした頃、俺は異変に気付いた。車内で流れているラジオ放送が午後8時の時報を知らせてきたのだ。
――妙だ。
――これは明らかにおかしい。
俺がホテルで小林の時計を見たときには既に時刻は午後8時を過ぎていたのに、どうして今8時の時報が鳴るのだ?
「……運転手さん、つかぬことを伺いますが、今流れているラジオって過去の放送を録音したものってことはないですよね?」
まず最初に考えられるのは、車内で流れているラジオが録音である可能性だ。ならば時報が実際の時間とズレていたとしても不思議はない。
「お客さん、おかしなことを言うねェ。ナイター中継を録音して聴いて何が面白いってんだい?」
「……それじゃあ今の時刻は?」
「さっきの時報の通り、四月十四日、日曜日の午後8時ピッタリだよ」
――馬鹿な。
――ありえない。
残る可能性は小林の腕時計が狂っていたことくらいだが、あの小林がそんなことに気付かないなんてことが果たしてあり得るだろうか?
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