第6話

「どういうことだ小林こばやし? 氷の状態だと沸騰までに余計時間がかかるだろう」


 俺がそう指摘すると、小林はやはり何かに苛立っている様子で頬を膨らませている。


「……嗚呼もう、これから私はコンビニまでカップラーメンを買いに行くのだ。そして私がここに戻るまでに十分程時間がかかる。更にそこから湯を沸かすのに三分、カップラーメンが完成するまでに三分の計六分も待たなくてはならない。そこで私がコンビニから戻ってくる十分の間に湯が沸くよう、。私が戻ったときに丁度湯が沸いていれば、ラーメンを食べられるまでの時間は半分に短縮される」


「…………」


 なるほど、理屈はわかる。電気ケトルの中の水を凍らせておくことで、タイマー代わりにしていたわけだ。


 ――だが、それでも根本的な疑問が残る。


「そこまでして早くラーメンを食べたいなら、ここに来る前に買っておけばいいんじゃないか?」


「私は空腹にならないと何が食べたいのか考えられないのだ」


「だったら前もって幾つか買い置きしておけば、わざわざ腹が減ってからコンビニまで行かなくてもいいだろう」


 我ながら名案だ。

 俺が悦に入っていると、小林は目を三角に吊り上げてこう言った。


「……そうしたら、お前が勝手に食べるからこんな面倒なことをしているんだろうが。私のカップヌードルシーフードを返せ、この唐変木とうへんぼく!!」

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