第32話 重大な問題点が一つ

 「ロウヒ様、一ついいでごぜ〜ましょうか?」


 ロウヒが一旦の説明を終えた後、すっと手を上げたのはロレンだった。

 

 「良いよ。どうしたの?」

 「今回の作戦ですが、私も皆様に同行させて頂きたいのでごぜ〜ます」


 ロレンのその言葉に対し、「え?」という声がかえる。

 ミケラなんかはよっぽど予想外の言葉だったのか、音を立てて立ち上がっている。


 「待て待て。ちゃんと話しただろう?前線に出るのは僕様達に任せて、ロレンは拠点での後方支援に務めるって」

 「確かに、私は戦う事はできね〜です。ミケラ様の提案は合理的で正しいものでごぜ〜ますよ」

 「だったら」

 「しかしー」


 ロレンはそう言うと、あたりをジィっと見渡した。

 その視線は特に、レオナとラファに向けられているような気がする。


 「今回の作戦行動期間は一ヶ月でごぜ〜ます。その長い間、メルエムの森と言う見知らぬ場所で生活しなければならね〜です。私は‥‥‥‥この4人で一ヶ月の生活を行えるビジョンが見えね〜のです」


 「な、なに〜?!」


 「ミケラ様とダンテ様は最低自分ひとり分の生活はこなせるでごぜ〜ましょう。しかしー」


 ロレンの指がレオナとラファを順に指す。

 ラファは何がなんだか分からないと言う顔をしているがー


 「レオナ‥‥‥お前冷や汗凄いぞ」

 「いやいやダンテ氏。一体何を言っているのやらだ‥‥‥ハハハ」

 

 すごい勢いで視線そらしやがった。

 絶対何か心当たりあるだろお前。


 「はっきりと言いますが、レオナ様とラファ様の生活力は壊滅的でごぜ〜ます。私抜きの状態で一ヶ月森で生活なんかしたら、食べられないきのこを拝借したり、部屋がゴミだらけになったりしそうで恐ろしいのでごぜ〜ます」


 まぁまぁ深刻な理由だなこりゃ。

 俺は普段の皆の生活がどうかなんて知らないがー


 「ハハハ‥‥‥さすがの私でもこんな事にはならないさ‥‥‥‥」

 

 レオナの顔見る感じ本当のことなんだろうな。

 ラファに関して言えば何となく想像つくしな。


 「でもどうする。ロウヒが言ったように噂が流れてるって事は、その森に女神側の戦力がいてもおかしくないだろ?」


 俺のその発言に、ロレンはうぅんと頭を悩ませた。

 村での事もそうだが、あいつら女神に敵対する人間に対して敏感だからな。

 何処かで戦闘になるのは簡単に想像できる。


 「ん、んん!!それに関しては私に妙案がある」


 皆が頭を悩ませていると、レオナが勢いよく手を上げた。

 こいつ、名誉挽回とばかりに声張り上げてるな。


 「今回の作戦ではロウヒ氏を求めてメルエムの森に訪れた人々を保護し、ここへ連れてくることが一番の目的だ。そうだろう、ロウヒ氏」


 「まぁそうだね」


 「なら、そもそもの非戦闘員を保護しながら移動する方法が必要不可欠な訳だ。それがあれば、ロレン氏を同行させるリスクも0に出来る」


 レオナはそう言うと、どこからか紙を持ち出した。

 よく見れば、それが乗り物の設計図である事が理解できる。


 「レオナ、何の設計図なんだ?」

 「ヴォイニッチが得た異世界の神秘を複数組み合わせる事により、戦闘補助、空中飛行、簡易拠点的役割、地上走行、水中潜水を可能とするスーパーハイテク装置さ」


 前々から構想は練ってたんだ、とレオナは自慢げにそう言った。

 確かに設計図を見ると、何度も書き直された後や少し前の日付と共に書かれたメモなどがあり、随分と長い期間をかけて作られている事が見て取れる。


 にしても、相変わらずぶっ飛んでるな。

 今はただの設計図とはいえ、出来る事が多すぎるだろ。


 「ほほう、確かにこれが実用出来るというのならロレンを連れて行っても問題ないだろう。しかし、本当にこんな物が作れるのか?」


 興味深そうに設計図を見ていたミケラがそんな疑問を口にする。

 すると、レオナは眼鏡をスチャと動かしながらその問いに答えた。


 「3日丸々あれば仕上げられる計算さ。ロウヒ氏、メルエムの森に向かうのはその後でも大丈夫かい?」


 「うん、いいよ~。3日で作戦の成功率が上がるならそれに越したことは無いからね」


 ロウヒは楽しそうにそう言うと、レオナの右手を引きながら立ち上がった。

 

 「私も協力するから二人で頑張ろ~」

 「それはありがたい。徹夜しても疲れないポーションとかあったりすると嬉しいのだけど」

 「魔女は皆持ってるポーションだから大丈夫!!貸してあげるよ」


 二人はそんな会話をしながら意気揚々と外に出てしまった。

 俺はこの場に残ったメンツを見ながら、正直に思った事を口に出す。


 「レオナが例の装置を完成させるまで暇になった訳だけど……どうする?」

 「ふむ……大丈夫だダンテ。今しがたこの僕様が妙案を思いついたぞ」

 「おぉ、何するんだ?」

 「ふふふ、聞いて驚くな」


 ミケラがそう言うと、結構長々としたポーズを取りながら妙案の内容を焦らす。


 いや、長いな!!

 どんだけ溜めて言うつもりだ。


 「それはズバリ、僕様流の地獄のトレーニングを行うという事だ!!」

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