第31話 少数精鋭部隊

 「急な連絡になり申し訳ごぜ〜ません。ダンテ様」

 「いやいや、良いよ。今日はなんか体が軽くてさぁ今ならどんな事で快く受け入れられる」

 「まさか‥‥‥あのゲテモノ料理の効果でごぜ〜ましょうか?」


 青々と晴れた空の下、すこぶる調子の良い体に感動しながら歩いていく。

 隣で歩くロレンは俺の顔を見上げながら怪訝けげんな顔を浮かべて、「レシピを覚えておけば役には立ちそうでごぜ〜ますが‥‥‥」とブツブツ考え事をしていた。


 ロレンが部屋に訪ねてきたのは、俺が起きて10分も経たないぐらいの頃の事。

 なんでも、ロウヒが俺を呼んでいるので指定の場所まで来てほしいみたいだ。


 「今から行くのはロウヒの家なのか?」

 「いえ。これからダンテ様を含む皆様で活用していただく新設の建物でごぜ〜ます」

 

 それっていわゆる『俺達専用の家』って事で良いのか?

 言い方的に他のメンバーはいるっぽいけど誰なんだろう。

 

 「考えるより、見たほうが早いでごぜ〜ますよ」

 「‥‥‥声に出てたか?」

 「顔を見ただけである程度把握出来るでごぜ〜ますよ」


 ニヤリと笑ったロレンは、左側に見える建物を指さした。

 あそこが目的の場所でごぜ〜ますよと案内しながら、彼女は建物のドアを開ける。


 「いや〜今日は朝から目覚めが最高でね。体もいつもに比べて軽いときた」

 「まさか、本当にあのドラゴンの臓物煮込みなんてゲテモノに効果が合ったでも言うのか」

 「私は信じない‥‥‥トモダチも信じない方がいいって‥‥‥え?!興味出てきちゃったの??」

 「だから言ったでしょ。味は0点、栄養素は1万点ってさ」


 そこで見たのは、見慣れたメンツがワイワイと議論を交わしている姿だった。

 もはや『いつもの』ってツッコミが入ってもおかしくないな、こりゃ。

 全員知ってる人だからありがたいけども。


 「お、ダンテ氏〜」

 「おいおいおい僕様の見間違いか?!ダンテの肌がすごく綺麗になってるじゃないか」

 「本当にあのゲテモノ料理に効果あったの??あんなにグロテスクな見た目だったのに!!」


 部屋に入るなり、ミケラとラファが俺に近づいて頬をペタペタと触っている。


 どんだけドラゴンの臓物煮込みの話気になってんだよ。

 ガタッって音立てて立ち上がる程の話かこれ??


 後ろで手ふってるレオナとロウヒもあっけに取られてるじゃね〜か。


 「ミケラ様、ラファ様。気持ちは分かるでごぜ〜ますが今は抑えてくだせ~ませ。ロウヒ様のお話を聞くのが最優先でごぜ〜ますよ」

 「おっと、そうだな。僕様としたことがこんな物に惑わされてしまうとは」

 「そうだね。今はロウヒちゃんの話を聞かないと」


 うんうんと首を縦に振って二人は元いた席に戻っていく。

 俺は空いていたレオナの隣の席へゆっくりと腰をおろした。

 ちなみにロレンはミケラの隣に小さな椅子を用意して座っている。


 全員が着席したを確認したロウヒは、手をパンと叩いて口を開く。


 「さて、皆にはこれからの【ドールカルト】の話をしようと思う」

 「それは具体的にどういう?」

 「【ドールカルト】には、女神に与えられるスキルを全ての価値基準とする今の世界のあり方に苦しめられた人が集まってる。そして、私は最終的にこの世界そのものを変えようと思ってる」


 ロウヒのその言葉に、皆がうんと首を縦に振った。

 

 『女神の支配から脱却し、真なる人の世を作って見せる』


 あの時村で力強く宣言していたロウヒの言葉が強くリフレインする。

 この世界を変える‥‥‥今まで口にしていた言葉がようやく実感という名の質量を持ち始めている。


 「私はその改革の先駆けとして、傀儡人形を通して相手が望むスキルをこっそりと売ってきた。その結果、この世界に疑問を抱いている人が結構いる事を確認できた。だから、次のステップに向かおうと思う」


 「少数精鋭の舞台を組み、今までひっそりと行っていた活動を活発的に行うのだ。女神を信仰している勢力と戦いながらこの世界の歪さをとき、僕様達を求めている人々へ手を伸ばしに行く!!」


 なんで途中の説明をミケラがかっさらったんだよ。

 まぁ、ロウヒもツッコミを入れてない所を見るに発言内容に間違いは無いっぽいが。


 「ふむ、話を聞いている限り、その少数精鋭の部隊というのは私達と言う事で間違い無いようだね」

 「ここまで来ると、例のドラゴン退治もそのテストだったみたいに思えるな」

 

 レオナと俺の発言をミケラは高笑いで躱す。

 いや、全然ごまかせてないからなそれ。

 ロレンも後ろでフフって笑ってるじゃねぇか。


 「それでロウヒちゃん。私達はとりあえず何すれば良いの?」

 「うん。とある噂の調査をしてほしくてね」

 「噂?」


 頭の上にハテナマークを浮かべて首をかしげるラファに対し、ロウヒはゆっくりとその噂の内容を語る。


 「メルエムの森って所にスキルを売る魔女が出没するって噂だよ。どうも私達の拠点がそこにあるって思われてるみたい」

 「メルエムの森かぁ‥‥‥聞いたことない場所だな」

 「私しってるよ!!悪いことした子供が連れて行かれるの!!そして、怖い化け物に食べられちゃう」

 「なんだよその物騒な逸話」


 私が育った所では有名だったよ、とラファは楽しそうに言った。

 一体どんな所で育てられたんだよ。


 「この噂は事実として間違ってはいるんだけど、真に受けて私に救いを求めてる人がメルエムの森で彷徨ってる可能性がある。だから、皆にはメルエムの森に一ヶ月ぐらい滞在して調査してほしいんだ」

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