第27話 ドラゴン退治 4
氷の爪とドラゴンの爪が拮抗する。
そして互いに攻撃の威力を打ち消し合っていた。
その衝撃に耐えられなかったのか、ミケラの両手を覆っていた氷がパァンと弾ける。
そして次の瞬間、目を疑う様な光景が映った。
ミケラが体をクルンと動かしてドラゴンの爪の上に足を着けて着陸したんだ。
さっきの衝撃で生まれた勢いを利用したのか?!
いやいやいや、だとしてもこうはならないだろ?!
そしてミケラの動きは止まらない。
ドラゴンの爪を踏み台にしてまた飛び上がった。
その体は一瞬にしてドラゴンの目との間合いを詰める。
ミケラは右腕を後ろに大きく引いて構えた。
クイーンドールのスキルによってその右腕は氷を纏い、氷の槍をそこに顕現させる。
「【
氷の槍が情け容赦なくドラゴンの右目を穿つ。
少量の血が流れ、ドラゴンが痛みに耐えきれずに悲鳴を上げるわずかな隙をミケラは見逃さない。
目に突き刺さっている右腕をブンと振って体を後方へ押し出し、ドラゴンの顔と言う危険地帯から一瞬にして逃げ出したのだ。
挙句の果てには当たり前の様に受け身を取り、シュタッと地面に着地する。
なるほど、レオナがあそこまでいう訳だ。
こいつの近接戦闘能力は化け物じみてる。
「僕様とダンテがあそこまでやっても、ドラゴンの体力はまだまだ余裕の様だ。正攻法で挑んでいたなら何十時間戦わされる事になるだろうな」
「考えたくもねぇ。でも、奴のヘイトをこっちに向かせるのは成功だな」
ドラゴンの殺気だった目が俺達を捉える。
先ほどミケラに刺された目も、血を流してはいるが完全に機能を失っている訳ではなさそうだな。
「次は確実に奴の動きを止め、レオナに繋げるとしよう。僕様について来い」
「おうよ。何とか食らいついてみせる」
ドラゴンの動きも、ミケラの戦闘スタイルもさっきの一瞬で何となく理解した。
次はミケラの作ったドラゴンの隙を見逃さない。
そこで奴を拘束して、レオナの秘密兵器に繋げて見せる。
ゴクリと唾を飲む音が響いた。
その次の瞬間、ドラゴンが背中の羽を大きく動かしながら低空飛行し、突進をかまして来た。
そっちがそう来るならこっちだって迎え撃ってやる。
「ギガントドール、受け止めるぞ!!」
次の瞬間、二つの巨大な存在が衝突する。
元々持ってたパワーはこっちの方が上だが、ドラゴンも足の爪なんかを地面に刺す事で踏ん張っている。
互いに何とか均衡状態を維持している状況だ。
どうする、ギガントドールをもっと大きくしてパワーを上げるか?
いや、下手にサイズを変えた事が災いして姿勢が崩される事があったら一番最悪だ。
この均衡状態から10分拘束に無理やり移行するのも悪手。
この姿勢だとちょっとした要因で拘束を破られる。
ドラゴンの拘束を10分間行うならマウントポジションを取るのが一番良い。
だったら俺が取るべき行動は現状を維持しながらミケラの追撃をサポートする事だな。
「よ~しダンテ。もう少しだけ踏ん張っていろ」
ミケラがギガントドールの体を上る。
頭のてっぺんに立ち、ドラゴンをその視界に見据えながらミケラが飛んだ。
振り上げた右の拳にクイーンドールがオーラを這わせる。
それはやがて拳を覆う大きな氷の塊に変化した。
太陽さえ覆い隠してしまうほどの大きな氷。
ミケラはそれを軽々とドラゴンの頭上に振り落とした。
「【
その攻撃をもろに食らったドラゴンがよろめき、態勢を崩す。
ミケラが纏っていた大きな氷塊は衝撃に耐えきれずパァンと音を鳴らして破裂する。
ミケラの追撃は期待できない。
いや、ここまでしてくれれば十分だ。
この状態からマウントポジションを取りに行ける!!
「GUUULAAAAAAAAA!!」
ギガントドールでふらつくドラゴンの顎に一撃。
ドラゴンはたまらず地面に倒れこんだ。
このチャンスを逃さない。
畳みかける!!
「【
倒れたドラゴンの羽を掴み、その体を地面に押し付ける。
その動作と同時にギガントドールを巨大化させた。
今の俺にとって無茶をしない範囲での最大値だ。
暴れるドラゴンの動きも……この感じなら10分抑えられる。
「レオナ!!」
「ナイスだダンテ君。すまないが10分そいつを抑えてくれたまえよ」
森の茂みから、姿を隠していたレオナが飛び出した。
彼女の隣にはアーミードールが立ち、両手で抱える黒い筒状の武器をドラゴンの頭に向けていた。
「【武装変更】対ドラゴン用改造狩猟銃」
その筒状の武器に大掛かりな機械が装着されていく。
ドラゴン退治終了の鐘を鳴らすその武器の完成まで、残り時間は10分だ。
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