第28話 ドラゴン退治 5

 ドラゴンの怒号とギガントドールの雄叫びが響く。

 

 鼓膜が破れそうな程うるさい音。

 ギガントドールの力を全力で使っているが故の疲労。


 そんなものが俺の体に重くのしかかってくる。

 

 「くっそ。暴れんな!!」


 初めてギガントドールを使ったあの時とは違う長期戦。

 思った以上に負担がデカい。


 息は切れるわ、ギガントドールを通して衝撃が伝わって来るわでこっちの体力と集中力がガンガン削られていく。


 ドラゴンも命を危機を感じてなりふり構わず暴れはじめる始末だ。


 一瞬も気を抜けない。

 レオナの準備が整うまで、俺がこの場を繋いで見せる。


 「ハァ……ハァ……ギガントドール!!そいつの手足を確実に抑えてろ」

 「GUUULAAAAAAAAA!!」


 この最、尻尾や背中で繰り出される攻撃は無視だ。

 耐えてこらえてでも手足を縛って逃がさない。


 とはいえ……キツイ。

 元々スキルを長時間使う事なんて無かった人生だったからな。

 スキルを無茶して使うとこんなにキツイなんて知りもしなかった。


 あと何分だ?

 もうそろそろギガントドールと繋がっている手がしびれてー


 「スキル解放!!A級傀儡フレンドール」


 そんな弱音を心の中で吐こうとしたその時、ラファが傀儡人形を展開しながら前線に走り出た。


 「皆!!ダンテを手伝って!!」


 ラファのトモダチが影の実態を持って現れる。

 影の軍勢は歓喜の声を上げながら行進し、ドラゴンの体に張り付き始めた。


 「ラファ。お前、疲れてるんじゃないのかよ」

 「ちょっと疲れてるけど大丈夫!!だって私はダンテより年上のお姉さんだから」

 「どういう理屈だよ」


 お姉さんみがあるのは体だけじゃねーかと心の中でツッコミを入れながら俺は苦笑した。

 すこし、気持ちが楽になった様な気がする。


 「ラファが尻尾を抑えてくれたおかげで、狙いが定めやすくなったな」

 「ミケラ?」

 「ダンテは今の姿勢を維持だ。あの厄介な尻尾はこの僕様が抑えておこう」


 空中で受け身を取り、スタッと着地を決めたミケラが俺の背中を軽く叩く。

 ミケラは右腕を氷の槍に変換しながら飛び出し、暴れ回るドラゴンの尻尾を地面に突き刺した。


 ドラゴンの怒号が大きくなる。

 今まさに自分の命が終わろうとしている事を予感し、それに抗う為に全力を尽くしているのだ。


 「大丈夫、私達なら勝てる!!多分、きっと!!トモダチもそう言ってるよ」

 「時間ももう少しだろう。最後まで気を抜くなよダンテ」


 そんなドラゴンの声にかき消されない様、仲間たちが俺に声をかけてくれる。

 

 そう言えば、村では俺と対等に接してくれる仲間なんて居なかったんだっけ。

 不思議なもんだな。

 仲間がいて、声をかけてくれるってだけで、こんなに心が熱くなるものなのか。


 「おうよ。ここまで来たんだ!!俺は俺の役割を全力で遂行する」

 「GUUULAAAAAAAAA!!」


 ギガントドールの叫び声が過去一の大きさで響き渡る。

 騒音とも呼べるそれが発せられたその瞬間、俺達が待ち望んでいた物が完成した。


 「皆、待たせたね」


 レオナの声がした方向に振り向く。

 そこにあったのは、大量の機械が管を介して一本の筒と繋がっている謎の武器。

 

 機械からは煙が漏れ、筒の先端は赤く熱されている。


 「3人とも立ち位置はそのままで大丈夫。巻き込んでしまう危険性はゼロだ」


 アーミードールが筒の先端をドラゴンの額へ向ける。

 アーミードールの指先が、筒の下方へ取り付けられたトリガーにかかった。


 「ファイア!!」

 

 レオナのその掛け声を皮切りに、アーミードールがトリガーを引いた。

 次の瞬間、この世の全てを包むような爆音と熱が発生する。


 その音を俺が音と認識するその前に、その熱を俺が熱いと認識するその前に、目の前で悲鳴を上げていたドラゴンの頭部が爆ぜていた。


 「すごいだろうダンテ氏。だいぶ大味が改造こそ施されているけれど、これが君の知りたがっていた異界の神秘、銃の威力だよ」


 音さえ置き去りにする、認識不可能の瞬息の一撃。

 それを繰り出した『銃』と言う武器の性能に、俺は少しばかり心を奪われていた。

 

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