第26話 ドラゴン退治 3
「こっちこっち!!」
ラファの体を走って追いかけること数分。
彼女がフレンドールで展開しているトモダチ達の喧騒が聞えてくる様になってきた。
ドラゴンが居る場所が近い証拠だ。
「この先に木がない開けた場所があるんだって。ドラゴンはそこに居るみたい」
「分かった。ラファは疲れただろ、ドラゴンの所に付いたら俺達に任せて休んでくれ」
「うん!ダンテありがとう」
そう話している内に、俺達は目的の場所へ到着した。
パッと視界が広くなり、緑一色だった景色に茶色い地面と赤いドラゴンの姿が入り込む。
俺達は木陰に隠れて静かにドラゴンの様子を伺った。
ドラゴンは低い唸り声を上げながら、集団で立ち向かってくるトモダチ達を薙ぎ払っている。
一方のラファと言えば、少し息を切らしながらも途切れることなくフレンドールの力を行使。
ゆえに、ドラゴンはいくら倒しても減らないシルエットの軍勢に襲われ続けている状態だ。
「やっぱり素早いね。拘束しなければとてもじゃないけど当てられない」
「そうだな。ドラゴンを押えたら合図を送る」
「ああ。その時には、ダンテ氏の見たがっていた銃の威力を披露するとしよう」
「そりゃ楽しみだ」
背負っている棺桶を取り出す。
この態勢なら、すぐにギガントドールを取り出せる。
「棺桶、背負ったままで良いのか?」
「ああ、心配ない。僕様の傀儡人形はむしろこの状態で使う方がベストだ」
隣に立つミケラと顔を合わせてそんな軽口をたたく。
俺とミケラが前線に出た後、ラファはフレンドールを解除して体力の回復に専念。
レオナはドラゴンに気づかれない様にラファと隠れ、例の銃をいつでも展開出来る様に準備する。
大丈夫だ。
作戦はちゃんと俺の脳に刻まれてる。
「では行くぞ!!」
「おうよ!」
ミケラの掛け声と共に、俺は飛び出した。
ドラゴンの瞳が俺達二人を凝視する。
ヘイトが完全にこちらに向いたその瞬間、ドラゴンを取り囲んでいたトモダチ達がサァと消えていく。
よし、この瞬間だ。
手元に持っている棺桶を地面に突き刺して、ギガントドールを展開する!!
「スキル解放!!」
「ショータイムだ。スキル解放」
ミケラは特殊な形の棺桶を背負ったままドラゴンの方へ走り続ける。
スキル解放と言う言葉に合わせて、ミケラの棺桶の内一つの扉が開いた。
走っているミケラの背中から人形がぬるりと現れるその姿は、まるで
「A級傀儡ギガントドール!!」
「B級傀儡クイーンドール!!」
ミケラの背中の上から女王の姿をかたどった人形が現れる。
そして俺の棺桶からも、相棒がいつのも雄叫びを上げて姿を現した。
「GUUULAAAAAAAAA!!」
ギガントドールと繋がる紫の色が指から伸びる。
その瞬間、こいつを貰った日にロウヒがボソっとこぼした言葉が頭をよぎった。
『あ、ダンテ君。せっかく戦える力を手に入れたんだし、技名とか考えてみたら?』
ロウヒ本人はめちゃ軽い感じで言ってたけど、技名を考えるメリットは結構ある。
ギルドの職員やってた時に聞いた話だが、技名と特定の動きをセットにすることでルーティンを作る事で戦闘しやすくなるんだとか。
ギガントドールの場合だと、人形をどれほどの大きさまで巨大化するのかをルーティン化するのが最良だろう。
必要以上に大きくすると俺のスタミナを無駄に消費するし、かといって小さいままだとギガントドール本来の力を発揮できないからな。
「【
ギガントドールの体がグンと巨大化する。
ドラゴンの体躯より少し上ぐらいの大きさか。
巨大化したギガントドールはもちろん足幅もデカい。
ゆえに先導しているミケラよりも早く、ドラゴンが行動を開始するよりも早く、ギガントドールはその距離を詰める事が出来た。
「まずは体制を崩す」
ギガントドールの右拳がドラゴンの顔にクリーンヒットする。
ドラゴンの口から流れる血。
そして、今にもひっくり返りそうな体制。
俺はその隙を逃さず、ギガントドールの左拳を今度はドラゴンの腹にお見舞いした。
衝撃波で空気がゆれ、草木がカサカサと音を立てる。
ドラゴンは苦しそうなうめき声を上げていた。
よし、行ける。
パワーはこっちの方が上だ。
このままギガントドールでドラゴンを押し込めば!!
そう思った次の瞬間の事だった。
「GYAA?!」
「うぉあ?!」
ドラゴンがその倒れそうな体勢のままグルリと体をひねった。
それにより奴の尻尾がしなり、まるでムチの様になってギガントドールの胸元にクリーンヒットした。
くそッ!!
なんて威力だ。
ギガントドールが倒れない様に踏ん張るので精一杯じゃねーか。
俺がグダグダしてる間にドラゴンの体勢が元に戻ってる。
鋭く尖った爪をキラリと光らせ、その腕を振るう。
不味いぞ。
このままだと防御が間に合わない。
「最初のパンチでドラゴンを吐血させるか!!想像以上のパワーだな!!」
そんな状況で俺とドラゴンの間に割って入ったのはミケラだった。
その背中にはクイーンドールと呼ばれた人形が並んでいる。
「言っただろう?僕様がサポートしながら一緒に戦うと」
地面をダンッと蹴ったミケラの体が飛び上がり、攻撃を繰り出しているドラゴンの爪に向かっていく。
「さぁクイーンドールよ。僕様に力を与えろ!!」
ミケラの背中を追っているクイーンドールから青色の光が照射される。
あれは……ミケラの両手が凍っているのか?
いや、それだけじゃない。
あいつ両手に出来た氷が何かを形づくっている。
「ダンテは戦闘経験が少ないんだろう?なら、この戦いが終わった後に僕様が色々と戦い方を教える事にしよう」
ミケラの両手の氷がドラゴンと同じ様な爪の形に変化した。
ミケラはその氷の爪でドラゴンの攻撃を受け止めたのだった。
「そのパワーに僕様と同じ近接戦闘の技量が加われば、ドラゴンだって一人で倒せる様になるだろうさ」
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