第24話 ドラゴン退治 1

 ドラゴン、それは魔族の中でも上位の力を持つもの。

 魔族のカテゴリーに属していながら魔王に従わない特異な存在だ。


 そんな恐ろしい魔族の影を拠点近くで見たという情報が相次いでいるらしい。

 【ドールカルト】の拠点は山の一部をくりぬいて作った場所。

 たまたまドラゴンが近づくなんてトラブルは想定できないことは無い。


 「いつもはロウヒが対処に出るんだが、あいにく今日は用事で居ない。だから僕様たちが変わりにドラゴンを仕留める訳だ」


 拠点から少し離れた山の頂上付近に来た所でミケラがそう説明する。

 ちなみにここまでの移動はレオナがアーミードールで作った専用の乗り物だ。


 「とはいっても、ここからどうやってドラゴン探すんだよ」


 あたり一体は植物や大きな木ばかりで視界も良くない。

 それと単純に捜索範囲が広い。

 

 それに対して、集められたメンバーは俺とレオナとラファとミケラだけ。


 「やっぱりロレンだけでも連れてきた方が良かったんじゃないか?」

 「彼女はあくまで僕様のメイドだ。戦闘は出来ないし、そもそも戦場に連れてくるべきじゃない」

 「でも4人で探すのは無理があるだろ?」

 「心配するな。対策はちゃんと考えてある」


 ミケラはいつもより一段と大きな声でそう言うと、右手の人差し指をビシィ!!とラファの方へ向けた。


 「ラファ、君のトモダチの力を借りたい」

 「王子のお願いならもちろん!!何人ぐらいトモダチ呼んだらいいかな?」

 「出来るだけ多く頼むぞ。この森の中からドラゴンを探すミッションが待っているのだからな!!」

 「おお~!!」


 もしかしなくても……対策ってこれか??

 ラファのトモダチって、あれ明らかに現実には存在しない何かだったろ??


 ミケラのあの感じ、ラファの気合を入れてる表情。

 あぁうん。

 マジでこれがドラゴンを見つける為の対策っぽい。


 「ま、私の君と同じ立場なら不安になるよ」


 そんな心配をする俺にそっと声をかけたのはレオナだった。

 彼女はいつもと変わらぬ表情でラファの事を見つめている。


 「彼女の傀儡人形を見る前と後では、彼女に対する理解が段違いだからね」

 「どういう意味だ?」

 「体験する方が速いよ。しいて言葉にするなら、彼女の傀儡人形は彼女の世界を具現化する力であると言ったところかな?」


 意味深な言葉だけを残して眼鏡をいじるレオナ。

 何が何だかさっぱりとため息をしようとした俺の視界に入ったのは、ラファが背負っていた棺桶を地面に置くその瞬間だった。


 「よ~し、スキル解放!!A級傀儡フレンドール」


 ラファの両手から紫の糸が伸び、棺桶から現れた人形に絡みつく。

 その人形は大事そうに大きな鏡を抱える女性の姿をしていた。


 少し異様だったのは、俺のギガントドールやロウヒのレッカドールと違って微塵も動く気配が感じられない所だった。


 「さぁ皆集まって!!」


 ラファのその声に答える様に、フレンドールの抱える鏡がパァと光る。

 周囲に変化があられたのはその後の事だった。


 「んな?!これは」

 「私も最初に見た時は驚いたよ。これがラファ氏の見ている世界だ」


 辺り一帯に無数の人が立っている。

 それもただの人じゃ無く、全身が黒で塗りつぶされたシルエットの人間だ。


 シルエットの形は千差万別。

 筋肉ムキムキの物から小柄な人間まで。

 男も女も子供も大人も皆揃っている。


 「皆~!!今からドラゴン探しをするよ~!!一番最初にドラゴンを見つけられた人は、私が頭なでなでしてあげる!!」


 ラファのその声にシルエット達は歓喜の声を上げる。

 そして、大きな足音を立てながら探索を開始した。


 「すごいな……ここまで来るともはや軍隊じゃね~か」

 「ダンテ、違う!!軍隊じゃなくてトモダチ」

 「へ?!あ、あぁごめん」


 も~と怒った声を上げながらポコポコとラファに叩かれる俺の姿を見て、ミケラは『ほら、大丈夫だっただろう』といつもの高笑いを添え、自慢げな顔を見せてくるのだった。

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