第23話 美味い昼飯を食べよう
「それでね、ドーンドーンって凄い攻撃だったの」
「なるほど。それは私も見てみたかったものだね」
ロウヒからギガントドールを受け取ったあの日から一日がたった。
俺はラファに誘われ、二人で昼ご飯を食べる事に。
なんでも、この世全ての料理が食べれるとの事だったが……あいにく店は満席。
俺達は店員さんに勧められて相席をすることになった。
「いや、にしても偶然相席になるとは。この店はいつも混雑しているからしょうがないけど」
幸運だったのは、相席の相手がレオナだった事。
そして、レオナとラファが知り合いだった事だ。
「にしても、こんなに色んな店が並んでると本当に一つの国みたいだな」
「ロウヒ氏の最終目標が女神に囚われない人の世界を作る事だからね。この場所は拠点であると共に、その理想を実現する場所でもあるんだそうな」
「確かに、傀儡人形があれば自分のやりたい仕事に合わせたスキルを調達できるもんな」
そんな話をしている間に料理が届く。
レオナの皿にはパンとシチュー。
ラファの皿には動物の油を絡めたスパゲッティ。
そして、俺の皿の上にはー
「これが魔女の伝統食。一番シンプルな魚フライ」
今一番食べたい料理が乗っていた。
今となっては当たり前の様に扱っている油。
発見したのは今から1000年前に生きていた魔女であると昨日ロウヒに教えて貰った。
そして、魔女は皆こぞって一番シンプルな魚フライを食べる風習があるとも。
そんなの聞いたら食べたくなるに決まってる。
「それ、ロウヒちゃんはよく食べてるけど味が薄いよ?お塩とかいる?」
「いや、このままで良い。このままの魚フライを食べてみたい」
魔女が活躍していた時代の料理法は煮るのが主流だったという。
その料理工程の長さに痺れを切らした魔女達が油に魚をぶち込んだらいい感じになった、と言うのが起源らしい。
若干味の薄い魚フライをどうにかこうにか美味しく食べる為に魔女達は数多の調味料を作りだした。
それ以来、味の薄い魚フライは魔女の象徴とまで言われる様になったらしい。
まぁ、女神が現れてからはそんな歴史も風習も闇に葬り去られたみたいだけど。
「この味から新たな調味料を見つける所までつながっていくんだなぁ」
「私、ダンテの言ってることよく分からない」
「ダンテ氏の場合、食事に趣味の要素が入り込んでいるからね。ラファ氏の感じる食事の楽しさとはベクトルが違うのだろう」
そんな会話をしながらご飯を食べていく。
すると、俺達が座っている席のテーブルが謎に大きな事に気が付いた。
10人はこのテーブルを囲って食事出来るぞ。
「なぁ、何でこのテーブルこんなに長いんだ?」
「私知ってる!!元々、団体のお客さん用の席なの。だけど、団体さんが居ないときは相席OKの人用になるんだって」
「へぇ……それじゃ、また誰か来るかも知れないな」
レオナが流石に無いんじゃないかなと苦笑しながらパンをちぎる。
ま、全く知らない人が来たらそれはそれで気まずいしな。
もし来るなら知り合いが良いけど……俺まだここに来て日が浅いし、残りの知り合いって言うとミケラとロレンぐらいだが。
そんな事を考えながら魚のフライをかじったその時だった。
「おやおや!!皆揃ってるじゃないか!!」
「だから言ったでごぜ~ましょ。私の情報網を舐めてもらっては困るでごぜ~ますよ」
やけに聞き覚えのある高笑いが聞えて来たのは。
「ミケラ?!それにロレンも」
「お~ダンテか。さては僕様に会えて嬉しさが有頂天になっているな。いいぞ、存分に見惚れると良い!!」
「レオナ様もラファ様のご一緒でごぜ~ます。都合がいいでごぜ~ますね」
二人はそう言うと、空いていたレオナの隣の席に座る。
ロレンはやって来た店員さんに「二人用のでけ~パフェを」と注文していた。
「パフェ??王子たちはご飯食べないの?」
「僕様たちはもう食べて来たからな。デザートだけ頂くのさ」
「ミケラ様はこの店の料理では無く皆様全員に用事がごぜ~ますので」
「私達に?」
ラファが頭上にクエスチョンマークを大量に浮かべて首をかしげる。
実を言うと、俺もレオナも彼女同様によく状況が分かってない。
俺達に何か共通する事あったか?
全員俺の知り合い……いやでも、それはあくまで俺の視点な訳で。
ミケラが俺達全員を探してた理由にはならないよな。
「ミケラ氏、一体何用で私達を訪ねたんだい?」
「ああ、そうだな。本題に素早く入るというのは大切な事だ」
ミケラはそう言うとわざとらしく咳をして、大きな声でその用事を言い放った。
「僕様たちでドラゴン退治に行かないか?」
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