第17話 反逆の国ビレックにて

 「ダンテ氏。あの山の中に無理やり建物を埋め込んだ場所があるだろう?」

 「ん。確かに」

 「あそこが我々の拠点となっている場所だ」

 「マジで?!」


 エルさんとアルさんの家を出発して数時間。

 俺は窓から見える景色に驚愕していた。


 山を見下ろせるほど高い場所を飛ぶ乗り物。

 その高度からようやく全貌が見える一つの町。


 山の一部に穴を掘り、そこに一つの町をずっぽりと収めた様に見える奇妙な場所だ。

 普通に地面を歩いていれば見えない巧妙な作りをしている。


 「ここも拠点として機能させるのに苦労したんだよ~。崩れる土砂の対策とか厳しい気候の対策とか。ま、それぞれの対応するスキルを作って今や快適な場所になったって訳」


 「結構スキルでごり押してんな」


 「私は傀儡人形を通してスキルを作れるんだよ。こんなに便利な力こそ有効活用しないと」


 まぁ、5徹ぐらいしたけどねとロウヒは笑う。


 それ普通に死にかけるレベルじゃねーか。

 そういえば、初めて会った時も夜遅くまで俺と話してたよな。


 薄々感じてはいたが、ロウヒって何かに熱中すると他の全てをおろそかにするタイプだな。

 それでよく800年生きながらえたもんだ。


 「さて、そろそろだ」


 レオナは周囲を確認しながらそう言うと、指先から伸びる糸をゆっくりと操作する。

 乗り物がゆっくりと降下し、開けた地面へピタリと止まった。


 「さぁ、降りて降りて!!目の前の門をくぐれば、私が心血注いで作った拠点だよ」

 

 そこそこテンションが高ぶっているロウヒに押されながら外に出る。


 にしても、そこそこ大きい門だな。

 一体どうやって作ったんだろう。


 「そこの貴様だな。僕様の収める領土へ新しく住まう民は」

 「はい?」


 門のある場所から一人の男がこちらに向かって優雅に歩く。

 もうすっかり見慣れた黒いローブ。

 耳に掛からない程短く纏まった銀色を髪を揺らしながら高笑いを上げている。


 いや、凄いな。

 『フーハハハ!!』なんて本当に言ってる人初めて見たぞ。


 背中の棺桶は小さめの物が二つ連なっている特殊な形をしている。

 スキル二つ持ちのB級傀儡用の棺桶だろうか?


 「僕様は来るものは拒まない主義だ。ゆえに、貴様が新たな民になる事も大いに歓迎しよう」

 「あ、ああ。よろしく、俺はダンテだ」


 俺は半ばそいつに圧倒されながら差しだされた手を握り返す。

 動作の一つ一つがめっちゃ大げさな人だなぁ。


 それに、さっきなら何か視界がチカチカすると思ったら……この人の後に隠れてる小柄な女の人が変な演出追加してる。


 いや、どうやってその光源出したの?

 しかも薄っすら効果音も流れてないか??

 何?

 そう言うスキル??

 

 てか、いつから居たの?

 全然気づかなかったんだが??

 何?

 そう言うスキル??


 「お、演出がバージョンアップしてる~!!」

 「私が【ドールカルト】に来た時の事を思い出すね。いやはや懐かしい」


 後から来たロウヒとレオナに至っては『ああ、いつのもね』ぐらいの反応しかしてないし。

 この状況にビックリしてるの俺だけか?!


 「熱烈な歓迎だな……嬉しいよ」

 「そうだろう!!そうだろう!!この僕様は統治が全く出来ない盟友ロウヒに変わってこの拠点を管理しているのだから、こうして豪華な歓迎をするのは当然のことだ」


 なんかずれてる気がする。

 悪い気はしないけど。


 いや、悪い気がしないならそれで良いのか?


 「ミケラ様、自己紹介がまだでごぜ~ますよ」

 「おっとそうだった。僕様としたことが、メイドの手を煩わしてしまうとは」

 「いつもの事でごぜ~ます。1ミリも気にしちゃごぜ~ません」


 ついにツッコミ入っちゃったよ。

 しかもメイドさんなのかこの人。

 みんな黒いローブ着てるから全然分からなかった。


 「よしダンテ、聞いて驚いて脳みそ爆発させるなよ!!そしてその胸に僕様の名前をしっかり刻んでおけ!!」

 「お、おう」

 「僕様の名は、ミケラ・プロフロードだ」

 「そうか、よろしく……って、は?!」


 こいつ、プロフロードって言ったか?

 それって、俺の記憶違いじゃ無きゃー




 教王様のファミリーネームと一緒じゃないか。




 「教王の血を引く僕様と共に世界をあるべき形に戻せる名誉、強く噛みしめると良い!!」

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